★阿修羅♪ > 国家破産58 > 210.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
諦観主義と取られかねない経済産業省の新経済成長戦略(KlugView)
2008/09/10 (水) 08:50
二階俊博経済産業相は、経済産業省が2006年6月にまとめた「新経済成長戦略」の改定版を発表しました。新経済成長戦略では、目標として、国内総生産(GDP)に交易利得などを加えた「国民総所得」(GNI)の実質成長率を、2015年度までに年平均2.4%の伸びとすることが示されています。
GNIとは、海外から流入する利子・配当所得と、輸出入価格の変化に伴う所得の変化(交易利得)をGDPに足し合わせたものです。GDPは国内の企業などが産み出した付加価値の合計であるのに対し、GNIは国全体が受け取る所得を示したものといえます。
しかし、日本は、資源が少なく、原材料の大半を輸入に頼っています。このため最近では、原油高を背景に巨額の資金が海外に流出しています。昨年(2007年)度の所得流出額は約21兆円と過去最高を記録しています。このままでは、新経済成長戦略で示された実質GNIの伸びを年平均2.4%にするという目標が達成できなくなる可能性が高まります。
そこで、今回の改定版では、GNIが伸びるよう、海外への所得流出を食い止めたり、諸外国への輸出を拡大させる方策が示されています。たとえば、改訂版では、資源高の対応策として、省エネと生産力向上を両立させるための集中投資や、家庭での太陽光発電の設置支援などが盛り込まれています。また、資源国との投資協定の加速やアジアとの連携強化、新興国からの資金を呼び込むための税制整備なども記載されています。
新経済成長戦略は、GNIという基準を設定し、2015年度までと時限を区切って、年平均2.4%の伸びという具体的な目標を設定している点を考慮すると(公的機関が策定したにしては)それなりによくできた内容のように思えます。ただ、GNIの伸びを高めるためとして、政府が策定する戦略において、海外との間の所得のやり取りに重点を置くのは、日本政府としてやや消極的な考え方のように思えます。
先にご紹介したようにGNIは、GDPに海外との間の所得のやり取り(利子・配当所得や交易利得の合計)を足し合わせたものです。つまり、GNIを伸ばしたいのであれば、海外との所得のやり取りだけでなく、GDPを伸ばすことも選択肢としてありえます。
おそらく、政府(経済産業省)は、2015年度という中期的な視点でみると、日本のGDPが大きく拡大していることを期待していないのでしょう。人口が減少するという構造問題を考えれば、このような考え方はある程度自然なものといえるのかもしれません。
ただ、こうした考え方は、ある種の諦観主義(あまりがんばらずに、諦めながら自然体で物事に対処する考え方)のようにも思え、日本経済を活性化させようとの思いを弱めてしまう気もしています。現実との整合性を重んじることを否定するつもりはありませんが、新経済成長戦略には、現実を打開するための「積極的な」方策を記しても良かったように思えます。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
GNIって何?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
海外から流入する利子・配当所得と、
輸出入価格の変化に伴う所得の変化(交易利得)を
GDPに足し合わせたもの。
GDPは国内の企業などが産み出した付加価値の合計
であるのに対し、
GNIは国全体が受け取る所得を示したものといえる。
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/09/10/003599.php