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9月1日(ブルームバーグ):早稲田大学インド経済研究所所長で元財務官の榊原英資氏は1日、都内で講演し、「極端な円高に振れるのを円安に持っていく」日本の為替政策は「そろそろ転換する時期に来ている」と語った。
新興国の経済成長を背景とした資源高が長期的に続くと予想。資源確保とインフレ回避に有効な「強い円」を志向し、為替市場での円買い介入も考えるべきだと述べた。
榊原氏は、世界経済には「ある種のパラダイム・シフトが起きている。おそらく500年か600年に一度の転換点を迎えている」と話した。中国やインド、ロシア、ブラジルに代表される新興国の経済発展が物価抑制をもたらした「グローバリゼーションの第1幕」から、新興国の中産階級人口が増え、エネルギーや食料などの資源に対する需要が増大する「第2幕」に入っていると指摘した。
この結果、資源高が長期的に続く半面、技術・知識集約的な工業製品は競争激化で価格下落圧力に見舞われる「ある種の価格革命」が進んでいると分析。輸入した原材料価格の高騰を販売価格に十分転嫁できない企業は利益を圧迫され、労働者の賃金は上がらない「悪循環」が起きているため、原材料を輸入して工業製品を輸出する「日本にとって非常に厳しい状況だ」と話した。
榊原氏は、資源確保に危機感が薄かった時代は「円安の方が良かった」が、今や資源を「ある程度、継続的かつ大量に調達できなくては、製造業は成り立たない。日本にはその仕組みがない」と指摘。政府と商社、企業の連携や政府開発援助(ODA)の戦略的活用によって、資源確保や関連分野への投資を進める必要があると語った。
円買い介入も
為替政策について、榊原氏は「為替は強い方がいい」と言明した。1990年代後半以降の超低金利と2004年3月までに政府・日銀が実施した巨額の円売り介入を背景とする「極端な円安の是正を考えなくてはならない」と強調。円買い介入に踏み切り、円高を志向するという日本政府の意思を国内外の投資家に示すべきだとの認識を示した。
米国はサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題で「戦後最悪の経済状況」にあり、米通貨当局はドル相場の安定に「相当の危機感」を持っているとも指摘。対ドルでの円買い介入は政治的な困難を伴う恐れもあるが、8年間で半分強の水準に下落した対ユーロ相場で円買い介入すれば「相当効く」と述べ、介入実施も検討すべきだと語った。
円の総合的な実力を映す実効為替レート(日銀算出)は、05年1月から07 年7月までに約25%下落。日米欧の通貨当局が85年9月にドル高是正を取り決めた「プラザ合意」以来の水準に落ち込んだ。直近の7月も、同程度の円安圏に低迷している。
榊原氏は、資源高を背景にインフレ圧力は収まらず、消費者物価指数(CPI)の上昇率は「4−5%はあり得る」と予想。購買頻度が高く、消費者の実感に強く影響する日用品に限れば「7−8%になる可能性もある」と話した。景気減速とインフレが同時に起きやすく、「従来の金融政策ではなかなか対応できない」とも述べ、日本銀行は「利上げすべきだが、できないだろう」と語った。
日本は政権交代へ
為替相場の水準に関しては、日本経済が一段と悪化する中で、短期的には「円安が逆転するトリガーは余りない」と、榊原氏は予想。対ドルでは「当面、1ドル=105−110円程度のレンジではないか」と述べ、米金融危機が深刻化しない限り、3月のように100円を突破する円高には「しばらくは、ならない」と話した。
政府が先週末まとめた総合経済対策については、景気には「余り影響しない」と分析。経済が立ち直る兆しは見えず、福田康夫内閣への「失望感」が高まるため、次の総選挙で「民主党が勝つ可能性は6−7割ある」と述べた。
民主党が政権の座に就いた場合、直ちに取り組むべき政策として、揮発油(ガソリン)税の暫定税率の廃止と、農業振興策を挙げた。長期的に価格上昇が予想される第1次産業の振興を国の中心的な課題に据えるという「発想の転換が必要だ」と強調した。
榊原氏は東京大学を卒業後、65年に大蔵省入省。69年にはミシガン大学で経済学博士号を取得した。国際通貨基金(IMF)勤務や同省の銀行局、理財局を経た後、93年に国際金融局次長。円の対ドル相場が1ドル=79円75銭と戦後最高値を記録した95年に国際金融局長、アジア経済危機が発生した97年に財務官。「ミスター円」の異名をとった。99年に退官。慶応大教授を経て現職。