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変動利付債 返済額、過去最大の60兆円 金融不安の新たな火種
FujiSankei Business i. 2008/9/1
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200809010011a.nwc
■日本勢は影響軽微
世界の金融機関が発行した市場金利連動型の債券が今月から大量償還期を迎え、来年8月末までの1年間に返済額が過去最大級の5500億ドル(約60兆円)規模に達することが31日、わかった。米住宅バブルの下で2年前に大量発行された債券の償還が今月から本格化するためで、大手金融機関が返済の資金繰りに行き詰まる可能性も浮上してきた。米銀の不良債権が急増している問題と並び、世界の金融市場を脅かす新たな火種になりそうだ。
英調査会社ディールロジックの集計によると、世界の金融機関が発行した変動利付債(FRN)のうち、5536億ドルが9月からの1年間に償還期限を迎える。条件が有利だった06年に発行された1840億ドルの2年物FRN償還が今月から本格化し、06年以降、年間3000億ドル台で推移していた償還額を大幅に押し上げるためだ。同社は「1年間にこれだけの規模の償還が集中するのは正確な統計データを整備した2000年以降で初めて」としている。
1年以内に償還期限を迎えるFRNの発行残高上位20社は300億ドル規模の米銀大手バンク・オブ・アメリカやシティグループなど欧米の大手金融機関が占め、20社の合計額は3048億ドルと全体の過半数に達した。これに対し日本勢は最大の野村ホールディングスが13億ドルにとどまるなどわずかだった。
欧米金融機関が発行するFRNはこれまで機関投資家のほか欧米大手金融機関の実質的な子会社としてサブプライム(高金利型)住宅ローン関連証券に投資してきた「投資ビークル(SIV)」が主要な買い手となってきた。しかし、サブプライム問題を機にSIVは整理されたため、SIV保有分について新たな投資家探しを迫られる。
とくに米国の大手銀や証券会社はサブプライム関連の追加損失が続いていることに加え「オークションレート証券(ARS)」と呼ばれる金融商品の販売手法に問題があったとして数十億ドル規模の買い戻しを余儀なくされており、FRNの大量償還は大きな負担になる。
すでに大手金融機関の債券は相次いで格下げされている。FRNの償還資金を借り換えるコストは大幅に跳ね上がり、業績を圧迫。大規模な資産売却を迫られる金融機関も出るとみられている。
米国では今春、大手証券ベアー・スターンズが資金繰りに行き詰まり、連鎖倒産を恐れた財務省主導で大手銀行JPモルガン・チェースによる救済合併が決まった。これを機に連邦準備制度理事会(FRB)による低利融資制度も整備されたが、資金繰りが不安視される大手金融機関もあり、FRNの大量償還問題が金融不安を一段と増幅させるのは避けられない情勢だ。
三菱UFJ証券の西田明弘シニア債券ストラテジストは「経営破綻(はたん)の可能性がささやかれる大手金融機関もあるが、FRBによる低利融資もあり、ただちにベアー・スターンズのような“突然死”が起きる可能性は小さいのではないか。ただ、FRNの借り換えで資金調達コストが上昇し金融機関経営は一段と苦しくなろう」と話している。
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【用語解説】変動利付債(Floating Rate Note)
表面利率を固定せず、償還まで一定期間ごとに見直す債券。表面利率は主にLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)に一定幅を上乗せして決まる。2006年は低利で発行できたため、欧米金融機関は米住宅バブルの中で住宅関連融資や関連証券などによる運用を膨らませる目的で大量発行した。