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08年8月11日 VOICE
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世界はあまりにドル漬けになってしまった
丹羽 なぜここまでの価格高騰が進んだのかといえば、1つはBRICsなど新興国の生活水準が先進国を追っかけており、またインフラ整備のために鉄やセメントなどの資源が必要になった。要するに資源の「爆食」が起きたということです。 それからもう1つは、投機資金が商品市場を蹂躙していることです。
まず1つ目のBRICsの成長ですが、なぜここまで急激に伸びることになったのかといえば、それこそまさにグローバリゼーションです。「小さな政府」「規制緩和」「市場原理」「民営化」を世界中に押し広げていこうという米国流の新古典派対外経済戦略である「ワシントン・コンセンサス」に基づいて大幅な規制緩和が行なわれ、すべてがオープン化されていきました。 それにより人と金と技術が国境を越えて自由に動き回るようになり、そこで生まれた余剰資金がどんどん発展途上国にも投下された。そうすると、当然、途上国の経済成長が始まるわけです。10年のあいだにこれだけ大成長するというのは、人類史上かつてないことでしょう。
時価総額が上がって、それをレバレッジにして資金を借り入れる。その資金で企業買収を行なえば、さらに時価総額が上がる。その後押しをしたのが、格付け会社です。企業の時価総額はどんどん上がり、まるで幽霊のようにドルが世界中を徘徊しはじめた。いまの世界経済は石油漬け、ドル漬けなんです。
ここ10年間で世界全体の実質GDPは、約30兆ドルから約50兆ドルに成長している。ところが、株式の時価総額と債券の発行残高とM2(現金通貨、預金通貨、準通貨)といわれる現預金、これら金融資産は約60兆ドルから約180兆ドルにまで膨らんでいるのです。そこまで実物経済と貨幣経済の乖離が大きくなった。実物経済に比べ、貨幣経済は3.6倍の規模に膨らんでいるわけです。それぐらい貨幣経済が広がって、マネーが世界中に溢れかえって、その挙げ句にサブプライムローンの問題が起きたのです。
中川 私の理解では、アメリカはフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)にしても、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)にしても、ジニーメイ(連邦政府抵当金庫)にしても、資産価値は上がるものだという前提のシステムをつくり、ドル中心の世界経済システムをつくっていきました。
丹羽 中川先生のおっしゃるとおりで、結局なぜこうなってしまったのかというと、サブプライムローンは担保なき債権だったわけです。現にアメリカでも訴訟が起きていますが、担保がないものに対して弁償の責任はないということになったのです。
中川 これはある意味「金融の毒ギョーザ」だと、私は思います。つまり「毒ギョーザ証券」を世界中にばらまいて、挙げ句にドルの信頼性まで失った
丹羽 これは1929年の世界恐慌以来の危機的状況だと思います。1つ舵取りを間違えると大変なことになる。それがいまの資源高騰と世界経済の現状なんです。非常に難しいところに来ています。
それにしても、60兆ドルの金融資産が180兆ドルになったときに、誰かが確実に120兆ドル儲けたわけです。主には欧米勢力でしょう。いま彼らが吐き出さないかぎり、この「妖怪」は消え去らないわけです。彼らがある程度損するのはやむをえないでしょう。
丹羽 サブプライム問題を発火点としてドルが暴落し信用を失ったために、金融資産の行き場がなくなって担保のある商品相場に流れたと考えています。そのため商品市場が何倍にも上昇した。もちろん資源価格の高騰は、実物経済の影響も受けています。投機筋というのは株式市場規模の、ほんの1%から5%くらいの資金です。しかし、商品市場では、それだけの資金が動けば大暴騰します。それほど底が浅い商品相場に、世界中で余っているドルが一気に流入したら、とんでもないことが起きる。これがいま、現実に起きているということです。
かつて1971年にドルと金の交換が停止されました。もともとは輸出入のバランスで強くなったり弱くなったりし、実体経済と為替は関連していたわけです。ところが、金との交換をなくしてから、貿易の取引と懸け離れて、投資される金額だけが「紙切れ」だけの世界でどんどん増えていったわけです。
中川 丹羽さんのお仕事は、実物経済取引と金融と両方をやっていらっしゃるから両方ともわかっていらっしゃると思うのですが、つまり、時価会計の仕組みと、ドル交換停止とによって、架空のお金がたくさんできてしまったということですね。そこに危機があったはずなのに、グリーンスパンもバーナンキもそれを否定しましたね。
丹羽 グリーンスパンはこの熱狂と長期低金利をして謎(コナンドラム)だといった。過去の経済システムではありえない話だといった。しかし、その答えは「謎」ではなかった。答えは「グローバリゼーション」だったわけです。先進国でワーキングプアの問題が出てきた理由も、まさにここにあった。先進国に安い商品が流入したので、それを迎え撃つ国内の中小企業は賃金を上げられなかった。そのしわ寄せが新たな問題を生んでいるのです。
これだけ大きく膨らみすぎた貨幣経済と実体経済の乖離をいかにマネージするかという理論など存在しません。しかし、少なくともアメリカ自身がドル帝国を建設して、そこで大きな恩恵に浴したわけですから、このツケは自分で払わなければなりません。しかし、払おうと思ったら、グローバリゼーションで己だけでは済まなくなっていた。そこが最大の問題です。
中川 私はあえてここでいいたい。サブプライムの負債は日本円で約100兆円、1兆ドル近くあります。日本の住専の不良債権も100兆円規模でした。あのときも散々バッシングを受けたけれど、結局政策的にはうまく処理を進められたと思います。1つアメリカにいいたいのは、日本は自力で解決したけれど、アメリカは世界中に迷惑をまき散らしているではないかということです。ヨーロッパも困るだろう、日本も困るだろう、ロシアも中国も困るだろう。おまえたちだって資金を出さないと困るだろう。「さぁ、何とかしてよ」と、尻ぬぐいまで世界中にさせている。
日本は住専処理を自ら解決したんです。バーナンキにしてもポールソンにしても、何も学んでいない。日本はアドバイスしたらいいのではないですか。むしろ、そうでなければ日本に奉加帳だけ回ってくるようなことにもなりかねない。
丹羽 いえいえ、彼らにとってみれば、日本の経験は結局他人事なんです。誰でも自分で実際に経験しないとわからないのではないでしょうか。
しかし、世界がドル帝国になって、その恩恵を日本はまったく受けていないかというと、そうでもありません。日本の輸出先のじつに4分の1がアメリカでした。ほかのアジア諸国も同様です。日本がアメリカに輸出して稼いだ金を元に、さらにアジアに輸出して稼いだ。日本の一部上場企業の売り上げの6割は輸出関連です。やはりドル帝国の恩恵という面もあります。そう考えると、多少の負担はしなければならない。今後の損失について、日本もある程度は負う必要があるでしょうが、しかし、われわれが主役になって負う必要はありません。
中川 主役どころかその程度のペインすら負う必要はないと私は思います。
丹羽 いや、日本もドルをたくさん保有していますから、そういうわけにもいきません。
中川 そうなのですが、やはり恩は売らなければダメですよ(笑)。
丹羽 恩は売りましょう(笑)。しかし恩を売っても、実際として多少の損失はしかたがないということになるでしょうね。
中川 ではこのような状況を考えて、日本はどうしたらよいのか、ということです。
丹羽 そういうことです。ただ、中小企業を活性化するために、官が一律にお金をばらまくというのは最悪です。
中川 しかし、20年間耐えてきたんですよ、日本は。20年間「耐えろ耐えろ」で、耐えるばかりでは、共産主義時代のソ連みたいな話になってしまいます(笑)。これまで世界経済は成長を遂げましたが、日本は横ばいの状態で、輸出頼みの日本経済もうまくいかなくなっている。ですから私は財政出動も含めて緊急対策を考えなければならないときだと思います。ただ、日本には省エネ技術もあり、メタンハイドレートなどの資源もあるので、それらを有効活用することを考えながら、緊急かつ長期的に思い切った対策をするべきだというのが、私の基本的な考え方です。
丹羽 私は資源自立国家というのはありえないと思います。資源自立国家ではなくて、「省資源自立国家」をめざすべきでしょう。そのために基幹となるのが「人と技術」であり、ここに思い切った投資をする必要があるのです。
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