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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu173.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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エネルギーコストの高騰により、米国はスプロール開発からようやく
脱却し、自動車に依存しない“コンパクトシティ”へと移行し始めた。
2008年8月4日 月曜日
◆原油は安い方が本当に望ましいのか? 8月4日 BusinessWeek
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080801/166937/?P=1&ST=bw
現在、原油高の打撃が大きく感じられるのは、過去20年にわたって原油安が続いていたからだと多くのエコノミストは指摘する。これほど長期にわたって安値が続いた一因として、環境汚染などの“外部不経済”のコストが原油価格に十分反映されていなかったことが挙げられる。つまり、エネルギーの効率的利用を促す市場原理が働いていなかったのである。
仮にそうした外部不経済のコストを含んだうえでの価格設定がなされていれば、米国はもっとうまく今日の原油価格高騰に対処できただろうし、将来的な世界の原油生産量の減少にも備えることができただろう。
そうした背景もあり、左派・右派の政治思想に関係なく、税金を使って原油価格を下支えする施策への関心が高まっている。一定の価格水準、仮にそれを90ドルとして、その価格を上回っていれば税金はかからないが、世界的な市場価格が90ドルを下回ると税金が価格に上乗せされ、エネルギーの利用者が差額を負担する仕組みだ。
高いエネルギーコストは強力な薬だ。服用時は苦くてつらいが、長期的に見れば、体内の様々な病気を治していく。エネルギーコストが高ければ、企業も消費者も自動車の利用を減らさざるを得ないし、SUV(多目的スポーツ車)も手放さなければならない。もっと省エネ効果の高い暖房装置に交換しようという意識も働く。米メーン州バンゴアにある東メーン医療センターはまさにそうした省エネの取り組みを行った実例だ。同医療センターは2年前、設備を一新して年間100万ドルの経費節減を実現した。
エネルギーコストの高騰により、米国はスプロール開発で交通渋滞が郊外に広がるという悪しき伝統からようやく脱却し、自動車に依存しない“コンパクトシティ”へと移行し始めた。例えばユタ州では、州政府主導の自転車通勤促進プログラムを実施している。
「全米で最も保守思想の強いユタ州の共和党州知事が、自転車通勤を好ましい交通手段として奨励しているのだから、市民がいかに価格シグナルに敏感になっているかが分かる」と、米ユタ大学のキース・バーソロミュー教授(都市計画論)は指摘する。
富が産油国に流出せず、国内にとどまるというメリット
そして石油消費の削減によるメリットは大きい。大気汚染は軽減されるし、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量も削減できる。世界の原油流通を確保するため軍事力に頼る必要性も減少する。また、中東やロシア、ベネズエラといった原油産出国へのドル流出を抑えることができる。必ずしも米国に友好的とは言えない原油供給国に大量のドルを流出させず、国内にドルをとどめておくことができるのだ。
その効果は、原油価格を下支えする税制措置を講じることで一層高まり、原油需要を抑制する。世界の市場価格と下限価格との差額は税収として米国内にとどまり、国内投資の拡大に用いることができる。
「ベネズエラのチャベス大統領やロシアのプーチン首相、サウジアラビアに何十億ドルものカネが流れるのを阻止し、米国から海外に輸出できる製品やサービスの開発に結びつくならば、その方が我々にとって好ましい。この点に異論を挟む人はいないだろう」と、米ミシガン大学のアンドリュー・J・ホフマン教授(持続可能企業論)は語る。
かつても米国はこうした局面を経験している。米国はエネルギーコストにあきれるほど無頓着だったが、1970年代の石油ショックで大きく変わった。「何もかもが安価なエネルギー資源に依存していた事実に、国民は全く気づいていなかった」と、コロンビア大学の教授で『Crabgrass Frontier: The Suburbanization of the United States(クラブグラス・フロンティア:アメリカの郊外化)』の著者でもあるケネス・T・ジャクソン氏は語る。
“エネルギー資源は無限”という神話は、原油価格の高騰で崩壊した。1980年に原油価格は1バレル=103ドル(現在のドルの価値で換算)に跳ね上がったが、この価格高騰で米国は変わった。小型車を購入し、一段と厳しい燃費基準を受け入れ、産業界はエネルギー効率化を推し進め、油田の探鉱・開発に次々と乗り出すなどの対策を講じた。米国民は、国内総生産(GDP)1ドル当たりのエネルギー消費量を石油危機以前の半分に抑える術を学び、大きな恩恵を得ることができた。
「1980年代にエネルギー依存低下に向けて実施した様々な取り組みによって、今日のエネルギー危機に耐えるための力は強まった」と、タフツ大学の経済学者、ギルバート・E・メトカーフ氏は語る。(中略)
もちろん、事はそれほど単純ではない。エネルギー価格を上昇させる政策によって損害を受ける業界もある。航空会社、運送会社、製造業者、公益事業など、エネルギー消費を簡単に減らせない業種すべてだ。また、化石燃料のうち石油だけに課税されることになれば、天然ガスや石炭の需要が増える歪んだ状態になる可能性もある。
そのため、新たな課税はもっと広範なエネルギー政策の枠組みの中で検討すべきだとするエコノミストもいる。地球温暖化への懸念が広がっていることを考えれば、二酸化炭素の排出に対して課税するのが最も合理的だ。
米政府が新たな税収を浪費してしまう危険もある。エコノミストの間でも、石油の代替エネルギーに投資すべきという意見もあれば、所得税の減税などの形で国民に還元すべきという意見もある。消費を抑制したいもの(石油)には税金をかけて価格をつり上げ、拡大したいもの(成長や生産性)には資金助成してコストを下げるためにその税収を使う。この考え方は経済学の基本だ。議論になるのは、このような税金を転嫁する政策のプラス効果が、政府の介入によって技術革新が阻害されるマイナス効果よりも大きいかどうかだ。多くのエコノミストは、悪影響は比較的少ないだろうと考えている。
「全く悪影響を伴わないわけではない。だが、それに見合う価値があるのは明らかだ」と、米スタンフォード大学の経済学者ローレンス・H・グルダー氏は言う。
自動車の交通量が減り、電車通勤をする人が増える
カナダのブリティッシュコロンビア州は、課税策が政治的に実現可能だということも示している。同州では7月1日、二酸化炭素排出のコストとして、ガソリンに対して少額の税金を加算した。この税収は、所得税や法人税の減税という形で還元される。導入時の打撃を和らげるため、州政府は6月末に100ドルの小切手を全住民に送った。エネルギー価格の高騰に苦しむ低所得者層を支援するためだ。
エネルギーに課税して、歳入増加分を別の形で市民に還元するというのは「まさに経済学者の夢だ」と、米シンクタンク、未来資源研究所(RFF、ワシントン)のイアン・パリー上級研究員は話す。(中略)
「車の利用に主眼を置いた郊外の都市計画を進める時代ではなくなったのではないか」
変化はすぐに起こるわけではない。米ノースカロライナ大学グリーンズボロ校のチャールズ・J・コートマンシュ教授(経済学)は、ガソリン代が高くなったからといって、すぐに町の中心部や電車の駅の近くに引っ越す人などほとんどいないと言う。
だが、ほかの理由で引っ越すことになった時に、転居先の選び方が変わってくる。コートマンシュ教授自身がそうだった。教授は5月に、職場まで車で30分かかるミズーリ州セントルイスの郊外から、自転車で10分で通勤できるグリーンズボロの中心部に引っ越した。
メリーランド州のモンゴメリー郡都市計画委員会のロイス・ハンソン委員長は、「車の利用に主眼を置いた郊外の都市計画を進める時代ではなくなったのではないか」と言う。
エネルギー高が痛みを伴うものであることは誰もがよく分かっている。だが、価格の高騰は利益ももたらし得るのだ。米ニューヨーク・タイムズ紙によれば、10代の若者が車を乗り回す行為は全国的に減っている。米家電大手ワールプール(WHR)は、水とエネルギーの両方を節約できる資源利用効率の高い洗濯機の売り上げが伸びていると言う。
米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)では、再び藻類を使ったバイオ燃料の研究が始まった。今回は米政府ではなく、米シェブロン(CVX)と米コノコフィリップス(COP)が研究資金を提供している。両社ともバイオ燃料を精製所で利用できる。ワシントンでは、“廃車促進”税額控除でSUVを減らし、その鉄廃材を燃費の良い車に作り替えるなどの賢明な政策案も出始めている。
米メーン州エネルギー安全保障対策局のジョン・ケリー局長は、同州で「エネルギー効率の向上や代替エネルギーに投資する人が急に増え始めた」と言う。「エネルギーの価格は、経済を動かすエンジンになると考えている」。
(私のコメント)
日本では道路特定財源が問題になりましたが、さらに59兆円もかけて道路を作り続ける必要があるのだろうか? 福田内閣では一般財源化が可決しましたが、道路族はまだ道路を作り続けるつもりのようだ。しかし時代の流れは車と道路の町づくりからコンパクトシティーへと変わりつつある。
日本の地方は街づくりという概念が無く、学校も病院も役所も公民館も点々バラバラに無計画に作られて、車でなければ行けない様な町づくりをしてる。パチンコなども駅前商店街から郊外の国道沿いに引っ越して車で行くようになった。レストランも駅前商店街から国道沿いのファミリーレストラン客を奪われてきた。
このように商業施設も主要街道沿いの畑を転用して作られるようになり、アメリカの郊外的なライフスタイルが定着した。このような現象は全世界的なものであり、中国人もインド人も車を使いだしたから石油価格が高騰をし始めた。今や北京の空は車の排気ガスで太陽を見ることは希だ。
BusinessWeekの記事にもあるように、オイルショックの後は20年にわたって石油の安値が続いたのは、石油がもたらす公害や環境汚染の被害はコストに反映されずに安く売られたためだ。さらにはレーガン戦略でサウジアラビアに石油を大増産させて石油価格を暴落させてソ連の経済を疲弊させて崩壊に導いたことも関連している。
しかしソ連の崩壊で冷戦が終わって、東ヨーロッパや中国が市場経済に参入してきた事と石油の安値が続いたことで、自動車が生活の中心になったライフスタイルが進んで、大手のスーパーには中国で生産された日用品が並ぶようになり、まさにグローバル経済化は永久に続くのかと思えるほどになった。
同じような状況が10年から20年も続くと、それは永久に続くような事を言う人がいますが必ず揺り戻しが来る。石油が安くて航空機も省エネが進んで航空運賃が異常に安くなり国内旅行より海外旅行のほうが安くなった。だから国内の旅館やホテルの倒産が相次いで地方の観光業がピンチになった。
ドルがますます安くなり円が高くなる事で石油は相対的にますます安くなり地方のモータリゼーションがますます進み道路の整備が進んだ。高速道路の整備と共に巨大ショッピングセンターが作られて日本全国一律の消費生活が出来るようになり、地方の都市は寂れて行った。地方には長期的な都市計画というものがなくまさに痴呆都市なのだ。
BusinessWeekの記事によればアメリカでもスプロール開発で果てしなく広がった町づくりが反省されて、自転車で通勤が出来る町づくりが進んでいるようだ。自動車で1時間以上もかかるような住宅ではガソリン代が大変だからだ。サブプライム問題となった低所得者向け住宅も通勤に向かない住宅として価値が暴落したのだろう。
EU諸国ではガソリンに対して環境税のようなものがかけられて1リットル200円以上もしていた。日本では円高などの影響で1リットル100円前後の時が続きましたが、最近では8月から190円台のガソリン代になっている。だから車で二度の外出も一度に減らすからロードサイドビジネスは転機を迎えている。
航空運賃も海上輸送コストも倍以上に値上がりすればグローバル経済化も見直しが進むだろう。いずれ石油の枯渇問題が値上がりを招いて来る事は70年代の石油ショックの頃から何度も言われてきたことですが、10年20年と石油が安い時代が続くとエネルギー問題は忘れられてしまった。
去年から今年にかけての第三次オイルショックは一次二次とは違って将来の石油需給逼迫を先取りしたものだ。13億人の中国人と11億人のインド人が車を乗るようになればどうなるか子供でも分かる。90年代から最近にかけての新興諸国の経済発展は石油の安さと先進国からのグローバル企業の進出によるものだ。
しかし石油の高騰がそれらを逆流させて行く現象をもたらすだろう。エネルギー効率から見れば日本と中国のエネルギー効率は10倍の違いがある。これでは人件費がいくら安くても中国で生産してはコストが割に合わない。限られた資源でどれだけのエネルギーを生み出すかは技術力が必要なのであり、日本やEUは一歩進んでいる。
アメリカは中国と同じでエネルギー効率が悪く日本の倍以上も悪い。アメリカは資源大国であり石油や石炭は豊富にあった。だからエネルギー効率の改善は進まず馬鹿でかいアメリカ車はリッター5キロも走らない。ところが日本のトヨタやホンダの車はリッター14キロ走る。だからGMやフォードの車は売れなくなり日本車がバカ売れだ。
しかし根本的には脱車社会で歩いて生活が出来るコンパクトシティー作りはアメリカでも日本でも同じだ。コンパクトシティーについては「株式日記」で何度も書いて来ましたが、国会ではいまだに道路特定財源で道路を作れと運動している。いずれ近い将来リッター300円とか500円になれば100円玉をばら撒きながら走っているような事になり都市づくりから考えていかないと生活が成り立たなくなるだろう。
先日も漁業労働者が燃料値上げで全国ストを行なっていましたが、狩猟漁業から養殖漁業に転換していかないと燃料代でパンクするのは分かりきっている。農業も耕作機械を効率的に使っていかないとコストは上昇する一方だ。住宅なども点在していたのではインフラ整備に金がかかって出来なくなり市町村は予算がパンクする。このような改革は痛みが伴わないとなかなか進まず、ようやく見直しが始まっている。
日本のエネルギー効率が世界一なのは鉄道網の発達が進んでいるからであり、中国やアメリカが悪いのは車中心の世界だからだ。しかし日本でも地方ではローカル鉄道が次々と廃線になっていますが、車中心の生活は見直すべきだろう。
日本はエネルギー効率では世界一の先進国である
中国やインドの経済成長は石油の高騰で挫折するだろう