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07年11月02日
私の古くからの友人である米国人エコノミスト、マイケル・ハドソン氏が、米民主党から大統領選挙に立候補しているデニス・クシニッチ候補のチーフ・エコノミックアドバイザーに就任した。
クシニッチ氏はオハイオ州選出の民主党下院議員である。2004年に次いで今回も大統領選挙に立候補しているが、メディアからはほとんど無視されている泡沫候補だ。
日本が真似る金権主義米国では、大統領選の勝敗を分けるのはなんといっても資金力である。富裕層向け献金パーティを開き、富裕層から巨額の献金を集めているヒラリー・クリントン候補をはじめとする大部分の候補者と違い、クシニッチは企業献金は受け取らない。選挙運動もボランティアに支えられ、マイケル・ハドソンももちろん無償で経済政策面での助言をしている。
もはや米国籍ではない私だが、クシニッチ氏は米国大統領になって欲しいと願う人物である。日本も米国も、二世、三世議員が多い中で労働者階級から苦学の末に下院議員になったクシニッチが民主党候補としてメディアで話題にならないのは、その理念と政策のためである。
クシニッチの提案する政策の一つは、NAFTAとWTOからの脱退である。巨大な多国籍企業が米国から低賃金国へ職を移転し、そして第三世界では、劣悪な労働環境のなかで働かされている人々の人権をワシントンは見ないふりをしている。それは政治家がそれらの企業から政治献金を得ているからである。またクシニッチが掲げる原子力発電の撤廃と自然エネルギーの推進では、米国のエネルギー業界がそれを認めるはずはないことも明らかである。それだけではない。彼は平和省の創設を提唱し、当初からイラク戦争に一貫して反対してきたし、世界から核兵器を廃絶することを目指している。
そんなクシニッチ候補に、経済政策面でマイケル・ハドソンが行っている助言の一つは税制改革だ。基本的にそれは所得税を最初に導入された時のように戻すことだ。所得税が米国で導入されたのは第一次世界大戦の頃で、当初は人口の1%に満たない、年収50万ドルを超す金持ち層だけが対象だった。その後も戦争や大恐慌などで税制改革が行われたが、基本的に所得税の対象は富裕層で、累進率もきわめて高く第二次大戦の頃には最高税率が94%であった。これを大きく変えたのがレーガン政権の税制改革だった。14%〜70%だった所得税率は減税措置後には10%〜50%になった。これが中高所得者優遇の始まりであったといえる。
また米国の税制にたくさんある抜け穴を閉じることもハドソンは助言している。抜け穴のために、今米国では年収何億ドルも得ているファンドマネジャーが実際に払う税金は、最低賃金で働く人々より安い金額しか払わずにすむ状況をつくりだしている。
もともとの所得税がそうであったように、一番良いのは大部分の人が所得税を払わないで済むことだ。ハドソンは年収6万ドル以上を所得税の対象とし、累進率も昔のように戻すことを提案している。
これはまさに私の主張と同じである。公平な社会の実現は、所得税の累進性なしには不可能だ。なぜなら低所得者は所得のほとんどを消費に充てるが、金持ちであればあるほど消費の割合は累進的に少なくなり、逆に預金が増える。その預金は不労所得を狙って投資に回るからである。
レーガン政権の税制改革は経済の活況を目的としたが、低所得層の所得に占める消費割合に比べて、消費割合の少ない富裕層を減税しても長期的にみた経済への影響は少なく、経済は再建されなかった。富裕層から累進税で徴収し、社会消費に充てたほうが、国家全体、そして多くの個人にとって好影響がもたらされるのだ。
私が一番言いたいのは、米国の政治家やエコノミストでも、国民のことを考えている人がいるということだ。クシニッチの最大の問題は資金不足で、それゆえにどんなに良い政策を訴えても泡沫候補とされ、メディアも取り上げない。その結果、どんな良い政策を提言していても、多くの米国人に無視され続ける。それでも、クシニッチ議員を支える多くのボランティアがいるということは、米国にも良心がある証拠なのだ。そこに希望を持ちたいと思う。
関連
72年に出版禁止となったマイケル・ハドソンの著書について、ビル・トッテン氏の指摘「むしられ続ける日本」 01/1/14
http://www.asyura2.com/08/hasan57/msg/499.html
フランスの財政赤字、その7つの疑問 ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版
http://www.asyura2.com/08/hasan57/msg/619.html
コメント
まさに、全てが繋がります。何故、元々なかった消費税が導入され、累進課税も今のようになってきたか。社会保障が削減されていったか。
全てのキーは「財政難」です。それによっていかに、富を持つ者による支配が拡大して行ったかを、ビルトッテン氏は日本語で警告し続けてくれました。
マイケル・ハドソン氏の「Super Imperialism:Economic Strategy of American Empire」の日本語訳はその後、出版されたようですが今では中古が一部しかないようです。見たい方は安く手に入るのでお勧め。