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結果的にドイツのバランスシート不況は、スペインやフランスの住宅バブルで乗り越えようとした形になってしまったのである。
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投稿者 TORA 日時 2008 年 7 月 24 日 13:53:18: CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu172.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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結果的にドイツのバランスシート不況は、スペインやフランスの
住宅バブルで乗り越えようとした形になってしまったのである。

2008年7月24日 木曜日

◆『日本経済を襲う二つの波』  リチャード・クー:著
http://www.bk1.jp/product/03009710

◆グリーンスパンの失政

では、サブプライム問題とは、結局は誰の責任だったのだろうか。先述したように、グリーンスパンFRB議長のマスタープランの前半部分(ITバブルの崩壊を住宅バブルで乗り切り、GDPを落とすことなく好況を維持して、バランスシートの修復を終えた企業部門にバトンタッチするというシナリオ)は非常にうまく機能した。

しかしグリーンスパンは、バランスシートが傷ついた企業が資金を借りなくなるということを想定できなかった。この事態を想定できなかったのは、もちろんグリーンスパン一人ではないが、彼の問題は自分の想定が狂っていると気づいた時点でも何の行動も採らなかったことである。

実際にグリーンスパンは、二〇〇四年時点で議会証言において何回も「このような景気局面なのになぜ企業はお金を借りにこないのか」と自問自答しているが、その時点で彼の当初の計画はすでに狂っていたのだから、グリーンスパンはこの時はっきりと「これは危険なバブルになりかねない」と警戒するべきだったのである。

もしグリーンスパンが、「これはバブルだから注意しなければいけない」と強く主張していれば、当時は"マェストロ〃と言われて神さま扱いだったのだから、みんなが心して事態に対処したはずである。そうすれば、おそらく今の傷は半分程度で済んでいたかもしれない。

しかし彼は、任期の最後の日まで「バブル」とは言わなかったし、何ら警告を発することもしなかった。それどころか、いろいろな人から「これはバブルではないのか」と聞かれていたにもかかわらず、彼は「局地的にはそういう部分があるかもしれないが、その程度の問題だ」と一言ってずっと否定し続けたのである。

これは中央銀行マンとしては失格である。グリーンスパンは当初のシナリオが狂ったとわかった時点でスタンスを変えるべきであった。それを今ごろになって、グリーンスパンは「これはバブルだ」とさかんに発言しているが、何をかいわんや、である。しかも、「住宅価格はマーケットの想定よりもさらに下がる」などと、数年前に彼が言っていたこととはまったく逆の発言をしているのである。

ワシントンではグリーンスパンの評価は地に堕ちたと言われている。中央銀行マンとしてバブルが実際に発生している最中、それに徹底的に警告を発することを怠ったグリーンスパンの責任は極めて大きいと言わねばならない。

◆世界中が住宅バブルになったと言い逃れするグリーンスパン

ところで、グリーンスパンは、自伝や最近の講演で、住宅バブルは自分のせいではないと盛んに主張し、その証拠として住宅バブルは世界的に発生しており、米国だけの現象ではなかったことを挙げている。実際、同時期にアイルランド、フランス、スペインなどのユー口圏でも住宅価格が急騰し、イギリスでも住宅バブルが発生した。また一部の国の価格上昇率は米国のそれを上回るほど高かった。

これらの欧州における住宅バブルをグリーンスバンのせいにするわけにはいかないが、欧州で住宅バブルが発生したからと一言って、米国の住宅バブルはグリーンスパンと関係がなかったとは言えない。

なぜなら、欧州の住宅バブルは米国と同様で、欧州中銀(ECB)の低金利政策がその背景にあり、そのECBも、実はFRBと同じように、域内のバランスシート不況に対応して金利を下げていたからである。

つまり欧州でも、一九九〇年後半のITバブルは猛威を振るい、EU最大の経済であるドイツは完全にバブルになってしまった。そのバブルが二〇〇〇年に崩壊すると、ドイツのナスダックと言われるノイマルクトはピークから九六%も下がるという大変な事態に陥った。

そこから、ITバブルに乗っていたドイツの企業も家計も、一斉にバランスシート修復モードに入り、二〇〇〇年に名目GDP比で六・九%の資金調達をしていたドイツの企業部門は、二〇〇五年には同一・八%の借金返済に回っていた。

つまりこの間に、ドイツの企業部門だけで名目GDP比八・七%分(=六・九%+一・八%)の需要が失われたことになるのである。しかもドイツではこの間、家計部門も大幅に貯蓄額を引き上げた。その結果、ITバブル期の二〇〇〇年にはGDP比で三・七%だったドイツの家計貯蓄は、二〇〇五年には六・三%にまで二・六%ポイントも拡大したのである。

その結果、企業と家計部門を合わせるとITバブルのピーク時に比べGDP比で一一・三%(=八・七%+二・六%)の民間需要が失われることになり、ドイツは戦後最悪と言われた長期不況に突入した。

これはまさにバランスシート不況であり、ドイツ国内における資金需要は激減した。このことは図11にあるように、ドイツ国内におけるマネー・サプライの伸びが、同じ金融政策下にあった他のユー口圏諸国に比べ顕著に低迷したことに表れている。マネー・サプライが伸びるには銀行の与信が伸びる必要があるが、他のEU諸国に比べてドイツの資金需要が激減したため、ドイツのマネー・サプライだけは伸びなかったのである。

◆ドイツの不況に対応した利下げが欧州に住宅バブルをもたらした

このドイツの不況は他のヨーロッパ諸国にも当然悪影響を与え、慌てたECBは短期金利を二%にまで下げた。この金利は戦後のドイツ・ブンデスバンクが到達した最も低い金利を下回っていた。

その当時ECBのトリシェ総裁は、フランス人が総裁を務めているECBが、ドイツ人がやっていたブンデスバンクよりもインフレ率と金利を下げることに成功したことを喜んだが、それは単にドイツが深刻なバランスシート不況に陥ったことが原因だった。

結局ECBは、ドイツのバランスシート不況に対応して金利を下げたことになるが、そのことはスペインやフランスで住宅バブルに火を付けた。またこれらの国々は、ユー口導入前はドイツに比べずっと金利が高かった。それが、ユー口を導入したことで以前のドイツ並みの低金利ということになり、そのことが、人々が借りられる住宅ローンの元本額を引き上げ、これらの国々の住宅バブルを加速させた部分もあったと思われる。

つまりECBは、結果的にドイツのバランスシート不況をスペインやフランスの住宅バブルで乗り越えようとした形になってしまったのである。

一方、ドイツの不動産価格は、一九九〇年代に統一フィーバーなどで先んじてバブルが発生したこともあって、二〇〇〇年以降のECBの低金利政策にはまったく反応せず、九〇年代の日本や昨今の米国と同様にその価格は直近まで下がり続けた。

また、スペインやフランスの経済が住宅バブルに支えられている間、ドイツは企業側が不況を理由にリストラを進め、賃金カットを進めることで域内での輸出競争力を強化した。

その結果、ドイツは域内の輸出を大幅に伸ばし、二〇〇一年には日本を抜いてなんと世界最大の貿易黒字国になってしまったのである。二〇〇六年頃にはドイツ企業のバランスシートも修復され、そこから同国の回復が始まった。またそれに合わせてECBも利上げに動き出したのである。

つまり欧州には、欧州の「ITバブル崩壊との戦い」があったわけで、バブル崩壊自体は、かなりドイツに限定されていたものの、そこから来る不況への対策として低金利政策が導入され、その低金利政策がドイツ以外の国々で住宅バブルを引き起こしたと言えるのである。

その意味では、グリーンスパン前FRB議長だけでなく、ドイセンベルク前ECB総裁やトリシェ現総裁も住宅バブルをつくったという点では同罪であるということであり、欧州でも住宅バブルが発生したから、グリーンスパンには住宅バブルの責任がないことにはならないのである。

◆ECBが低金利政策に走つた元凶はマーストリヒト条約

ECBは、ドイツを中心に広まった不況を、結果的にはスペインやフランスの住宅バブルで克服しようとしたわけだが、ある意味でこれは、必然的な部分があった。

つまり、ドイツのバランスシート不況というユー口圏全体で見れば局地的な問題は、本来ドイツ独自の景気対策で対応すべきであった。ところが、マーストリヒト条約はドイツの財政赤字がGDP比で三%を超えることを禁止した。

その結果、ドイツは自己の問題解決能力を失い、結局、その尻拭いを同じマーストリヒト条約の産物であるECBが金融緩和でやるしかなかったと言えるのである。

しかし、ECBの金融政策はユー口圏全体に効くことになり、そのことがフランスやスペインで大きな住宅バブルを引き起こしてしまった。しかも、すでにバランスシート不況に陥っていたドイツでは資金需要はなく、ECBの低金利政策は前述のマネー・サプライの伸びを見ても、直接的にドイツ経済にほとんどプラスにはならなかった。

それでは、何が「正しい」対応だったかと言うと、それは(金融政策が効かない)バランスシート不況に陥ったドイツに対して、ECBは財政出動を要請(または強制)し、ドイツの問題がECBの欧州全体に対する金融政策を狂わせてしまうことを避けるべきだったということである。そうすれば、スペインやフランスが住宅バブルやその崩壊に直面するのを防げただろう。

トリシェ総裁の○八年六月五日の発言は、依然としてユー口参加国がマーストリヒト条約の財政規律を守ることが重要だと言っているが、皮肉にもバランスシート不況に陥ったドイツにマーストリヒト条約を守らせようとしたことが、結果的にECBの金融政策を狂わせてしまったのである。

そしてこれらの問題の根底には、マーストリヒト条約がバランスシート不況をまったく想定していなかった欠陥条約であるという事実があり、ここが是正されるまでは、今後ともこのような形でECBが金融政策を誤ることはあり得ると言えよう。
(P145〜P153)


(私のコメント)
2000年のITバブルの崩壊は世界的な規模でしたが、アメリカではグリーンスパンが住宅バブルで切り抜けた。ドイツにおいてはフランスやスペインの住宅バブルで輸出景気で切り抜けた形になった。しかしアメリカやEUの住宅バブル崩壊は金融機関に大きな損失をもたらす事になるのだろう。

90年代の日本のバブル崩壊は100兆円にも及ぶ公共投資などでGDPなどの落ち込みはなんとか防ぐ事ができたものの、橋本内閣のビックバンや小泉内閣の財政再建路線が金融や景気の足を引っ張るような悪影響をもたらしてしまった。

本来ならば企業などの倒産も、アメリカが現在しているように、時価会計など無視して簿価会計で評価していれば、日本の金融も大混乱は避けられたはずだ。ところが竹中流の金融庁の厳格査定が企業を余計に借金返済に走らせてバランスシート不況を長引かせた。

ドイツなどもITバブルの崩壊の影響で企業はバランスシート不況に陥って超低金利政策で切り抜けようとしましたが、それがフランスやスペインの住宅バブルを生んでしまった。日本やドイツのような経済力の強いところは超低金利政策でバランスシートをきれいにできる能力がありますが、アメリカは超低金利政策が出来るだろうか?

アメリカのドルは円やユーロとは違って弱い通貨だから超低金利だとドルが暴落する恐れがある。石油や穀物の高騰はその先駆けでもあるのですが、ドルが持ち直すかにかかっている。そうしなければ中国やサウジアラビアがドルにリンクするには止めてドルから離脱して米国債などを売り払うかもしれない。

だからアメリカはファンドの石油投機にブレーキを掛けていますが上手く行くだろうか? 金融立国のアメリカはITバブルから住宅バブルから石油バブルとつないで商売してきましたが、自転車操業であり新たなるバブルを作り出していかないと世界から資金を集める事ができずに資金が逃げ出してしまう。

アメリカから資金が逃げ出すようになるとFRBは金利を上げざるを得なくなるだろう。しかしアメリカも住宅バブル崩壊で超低金利でないと住宅ローンが破綻してしまう。FRBはドルを守るか住宅ローンを守るのかと言う二者択一を迫られる状況になり、ヘリコプターベンはドルをばら撒けなくなっている。ドルをばら撒けばまた石油が高騰する。

アメリカでおきている一番の問題は信用不安であり、ファンドもレバレッジを下げざるを得ないから、中国やインドなどへの投資を引き揚げている。だからドル高にもなりうるのであり、金利も下げられるが、中国が溜め込んだドルや米国債や政府機関債を売ればドルは暴落する。

日本やドイツは低金利で資金が供給されて世界的なバブル景気になりましたが、ドイツの資金はフランスやスペインのバブルを生み、日本に資金はアメリカや中国のバブルを生んだ。さらには石油バブルは中東にもバブルを生んでドバイはバブルに沸いている。しかし石油のバブルも弾けつつあるようだ。


◆NY原油は大幅続落、1か月半ぶり安値の124ドル台 7月24日 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080724-00000018-yom-bus_all

【ニューヨーク=山本正実】23日のニューヨーク商業取引所の原油先物相場は、米ガソリン需要の低迷を背景に大幅続落した。

 この日から取引の中心となったテキサス産軽質油(WTI)の9月渡し価格は、通常取引後の時間外取引で123・89ドルと約1か月半ぶりの安値水準まで下落した。通常取引の終値は前日比3・98ドル安のバレル=124・44ドルだった。

 原油価格は、7月11日の取引途中の最高値147・27ドルから、8営業日の間に23ドル以上も下落した。

 米エネルギー情報局(EIA)がこの日発表した週間統計で、ガソリン在庫が前週より284万バレル増えたため、需給逼迫(ひっぱく)感が後退した。


(私のコメント)
このようにIT株式から住宅から石油へとバブルによる急騰急落を繰り返しているのはアメリカのヘッジファンドが仕掛けているからですが、次は何を仕掛けるのだろうか? なければ資金の回転は止まり信用不安が噴出してくる。

7月15日に書いたようにアメリカのGDPは1300兆円ですが、金融資産総額は1京3000兆円にも膨らんでしまっている。それだけファンドが膨らませたともいえるのですが、資金の回転が止まれば金利の支払いなどは出来るはずもない。ファンドの運用資産が膨らんでいる間は利払いも可能だが、信用不安でファンドから金が逃げ始めてファンドのパンクが問題になるだろう。

日本やドイツはバブルが崩壊すればバランスシートをきれいにするだけの経済的体力がありますが、アメリカにそれだけの経済的体力があるのだろうか? 博打で大穴をあけた博打打が真面目に働いて借金を返せるのかと言う事ですが、博打の借金は博打で稼いで返すしか方法は無い。

リチャード・クー氏が言うように日本やドイツはバランスシート不況で借金返済にまわり国内需要が落ち込んでしまった。それに対してGDPを維持し続けるには国が借金をして需要を作るしかないのですが、小泉内閣から政府も借金返済に回ってしまったからGDPが停滞してしまった。

日本の公共投資は有効な投資先が見つからないせいもあったのですが、ドイツなどはエコロジー投資で風車発電設所や太陽電池発電設備などが盛んに行なっているが、日本ではエコロジー投資がほとんど行われていない。道路や橋ばかり作って維持費のかかるものでは地方財政が持たない。

石油バブルの次はエコロジーバブルになって風車や太陽電池発電や原子力発電が投資ファンドの対象になるのかもしれない。リチャード・クー氏が公共投資の必要性を訴えたのは正しい政策ですが、何に投資すればいいかを提案できなかった。いずれ石油が高騰するのは時代の必然なのだからエコロジー関係に投資することを提案していれば、公共投資も継続出来たかもしれない。

「株式日記」でも公共投資は橋や道路よりも宇宙開発のようなハイテク部門に投資すべきだと提案してきた。エコロジー投資もハイテク投資なのだから正しい政策提言をしてきたことになる。しかし国会では道路特定財源ですったもんだしていますが、適切な政策提言できるシンクタンクが無いことが日本の停滞に繋がっている。

ドイツでは90年代からエコロジー投資が盛んだが
日本では道路や橋ばかり作ってエコロジー投資が
行なわれなかったのはなぜなのか?

ドイツ東部クレトビッツに立つ巨大な発電風車

 

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