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貿易赤字の縮小に役立たないベトナム政府の輸入関税引き上げ策(KlugView)
2008/07/07 (月) 16:59
7月7日付の日本経済新聞は、ベトナム政府が輸入抑制策を本格化させていると報じています。具体的には、ベトナム政府は、輸入関税を引き上げることで輸入を抑制させようとしているようです。報道によると、ベトナムの財務省は、4月に乗用車の輸入関税を70%から83%に引き上げ、6月には化粧品、香水の輸入関税を30%から36%に引き上げています。
ベトナム政府が輸入抑制策を進めているのは、輸出と輸入の差額である貿易赤字が大きく拡大しているためです。ベトナムの1−6月期の貿易赤字は150億ドル(約1兆6千億円)弱と、ベトナムのGDPの5割以上の規模となり、昨年1年間の赤字額をすでに上回っています。ベトナム政府は、今年の貿易赤字額を200億ドル以下に留めることを示していますが、仮に実現したとしても貿易赤字額は過去12年間で最大となるのが確実です。
一般に、貿易赤字が大きく拡大すると、赤字額を埋め合わせる(ファイナンスする)ための資金を他国から調達する必要があります。ベトナムのような新興国の場合、他国から資金を調達するのが、先進国に比べ難しいと考えられますので、ベトナム政府としては、資金調達が難しくなる前に、貿易赤字を縮小させたいと考えるのが自然といえます。
ただ、だからといって、貿易赤字を縮小させるために、輸入関税を引き上げて輸入を抑制させるのは、あまり得策ではない気がします。輸入関税を引き上げてしまうと、(当然ですが)輸入価格が上昇し、国内のインフレ圧力が高まるからです。ベトナムの消費者物価は、前年比プラス25%と、インフレがかなり進んでいる状況ですので、輸入関税の引き上げでインフレ期待がさらに高まり、インフレが進む可能性もあります。
そもそも輸入関税を引き上げたとしても、それによって貿易赤字が縮小するとは思えません。ベトナムの輸入が拡大し、結果として貿易赤字も拡大したのは、経済発展に伴いベトナム国内の消費財需要が高まったためで、多少関税を引き上げたくらいでは需要は抑制されません。仮に関税引き上げで需要を抑制したいのであれば、税率を現状の倍以上にするなどの極端な政策を実施する必要があると思われますが、これは現実的なものとはいえません。
貿易赤字の縮小のためにベトナム政府に必要なことは、輸入関税を引き上げることではなく、ベトナム国内の消費財需要を抑制し、輸出拡大のために輸出産業の生産性を引き上げることでしょう。そのための政策は、さらなる利上げ、輸出産業を中心とした設備投資優遇策や外資系企業の誘致策のように思えます。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
ベトナムの今年1−6月期の貿易赤字はどれくらい?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
150億ドル(約1兆6千億円)
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/07/07/003211.php