★阿修羅♪ > 国家破産57 > 158.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
戻し減税という特殊要因で押し上げられた米小売売上高(KlugView)
2008/06/13 (金) 15:42
6月12日に発表された5月の米小売売上高は、前月から1.0%の増加となり、市場予想(0.5%増)を大きく上回りました。また4月の小売売上高が0.4%増に上方修正されたことから、米国の小売売上高は3ヵ月連続のプラスとなっています。
米国の小売売上高が予想以上に好調だったことから、米国株式は急反発しました。ダウ工業株30種平均は、一時、前日に比べ180ドルを超える上げ幅を示しています。またドル円レートは、約3ヵ月半ぶりの108円台に上昇しています。
小売売上高は個人消費を示すバロメータといえることから、個人消費がGDPの7割を占める米国にとって、小売売上高の増加は、米国景気全体の拡大を意味します。米国の株価が上昇し、ドル円レートが上昇した(ドル高となった)のは、市場が米国景気の回復をイメージしたためと解釈できます。
ただ、米小売売上高が3ヵ月連続で上昇したからといって、米国景気が回復軌道に乗ったと判断するのは、やや早計な気がします。米国では4月末より景気刺激策として所得税の戻し減税が実施されています。戻し減税とは、一度納めた税金が戻ってくる措置のことです。
今回、還付の対象となるのは、年間所得が7.5万ドル(約800万円)未満の単身者か、年間所得が15万ドル(約1600万円)未満の夫婦世帯です。単身世帯では最大600ドル(約6万4千円)、夫婦世帯で1200ドル(約12万8千円)、17歳未満の子供がいる世帯には子供一人あたり300ドル(約3万2千円)が還付されます。これにより還付総額は1520億ドル(約16兆4200億円)に達する見込みです。
これだけ多額の税金が家計に戻されれば、個人消費が拡大するのは自然のことといえます。仮に今回の戻し減税による限界消費性向(減税分のうち消費に使われる割合)が30%程度だったとしても、米国全体で456億ドル(約4兆9200億円)が消費に回ることになります。言い換えれば、5月の米小売売上高が1%程度の増加になっても、さほど驚くべきことでもなく、今後も戻し減税の影響で少なくとも数ヶ月は小売売上高が増加傾向になっても不思議ではありません。
しかし、米国の景気動向と密接に連動する雇用者数は、依然として減少傾向を続けています。6月6日に発表された5月の非農業部門雇用者数(NFP)は4.9万人の減少となり、4月の減少幅(2.8万人減)を上回っています。戻し減税で政府から家計にマネーが流入しても、働く人の数が減ってしまえば、家計が受け取る給与が減ってしまい、結果として個人消費の拡大も期待できません。
雇用者数の減少が続いている以上、小売売上高の増加は、あくまで戻し減税という特殊要因によるものであり、米国景気が回復してきた、と解釈するのは無理がある気がします。むしろ、小売売上高の増加によって株高・ドル高が進んだのであれば、戻し減税という特殊要因が剥落する頃に、逆の動き(株安・ドル安)が出てくることに注意を払う必要があるのかもしれません。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
4月末に開始された所得税の戻し減税の
還付総額はどれくらい?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
1520億ドル(約16兆4200億円)
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/06/13/003037.php