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失業率の減少に対する懸念、素直に喜べるのだろうか。
日本のデフレもいよいよ佳境にはいって来たようだ。失業者が減って逆に労働人口が増え始める兆候がみられるからである。総労働人口の増加といった方がよいかもしれない。
今回4月30日に総務省から発表された統計によると、平成19年度の完全失業率は3、8%に改善され、就業者数は5年連続の伸びとなり、雇用者数は5523万人の過去最高に到達したそうだ。
これは素直に喜んでいいのだろうか。
正常な経済で商品の需要と供給で労働量が決まる経済では、失業率の低下は望ましいことであろう。
しかし生産量に比べて大幅に資金が減っているデフレにおいて、失業率が低下することは一概によいとは言えない。
デフレ状況で、民間の負担が増えるにつれ、市場に出回る資金が減少すると、一人当たりの賃金が減少することになる。それが余計に生活を支えるため働く人を増やすという循環を生む。この労働力の増加も生産コストであるため実質GDPの成長要因となる。
そして彼らの賃金から税金や年金保険料が徴収されるため、所得が減り、それが名目GDPの減少要因となる。デフレの場合実質GDPの動向だけに目を奪われてはならない。
家庭の切り詰めも限界を越えると、一人では家族全員を養えなくなり、共働きが当たり前になり、子供がアルバイトしたり、おじいさんやおばあさんも働かなければならなくなっていくのである。それがまた雇用者の増加になり、それがまた賃金が下がっていく原因になる。ワーキングシェアと言えば格好がいいが、一人一人がプアになるワーキングプアの拡大である。
デフレ経済では賃金が下がるほど労働人口が増えていくのである。
生産曲線が右下がりで表さなければならない理由である。これは他の企業も賃金が下がっているため移動しても同じかそれ以下の賃金になることが分かっているため、賃金を減らされても労働者は辞めないからである。それが全体で(マクロ的に見て)右下がりの生産曲線をもたらす。
しかし今までの経済学、ケインズの経済学にしろ、また特に古典派の静的な経済理論でも、生産曲線は右上がりで表現されている。
これは経済学の草創期がイギリスなどの比較的豊かなところで生まれたため、その経験法則から生産曲線が右上がりに表現されているのである。
これは賃金が下がると労働者が減少し、他のより良い会社に移動し、賃金が上がると雇用が増える。労働者の需要と供給が一致した時点で賃金が決まり均衡するという物である。
しかしこのような現象が見られる前提には、資金が生産量に対して1対1の割合であることが、与件として与えられているのである。資金が生産量に比べ大幅に多かったり、少ない場合を想定していないのである。
それ故この静的な古典派の右上がりの生産曲線を日本のデフレに適用することは無理がある。バブル崩壊後民間所得は連続して下げ続けているからである。
このような資金の生産量に対する過剰、過少をハートランド理論では、45度の所得線で表し、縦に資金量横に生産量を取り、45度以下の角度で貯蓄がない所得線が支配する経済をデフレ、45度以上の角度の線をインフレとして表している。
所得線が45度以下で貯蓄がない場合、生産量が伸びても、消費額が伸びないため、生産物1単位当たりの利鞘が少なくなる。言い換えると、労働量を増やしても、売上が変わらず、総労働賃金が変わらないため、労働1単位当たりの賃金が減少することになる。あるいは労働1単位に対して所得の伸びが1単位以下に抑えられるほどの負担が大きい経済ともいえよう。借金や税金負担が大きすぎるのである。
デフレにおいて生産曲線が右下がりなのは、生産量あるいは労働量を増やすほど、一人頭の利鞘や賃金が減少するからである。
このような所得線の角度が45度より下がったデフレにおいてさらに資金が市場から流出する事態が起こると、
例えば、原油価格の上昇による物価の高騰により、あるいは消費税の増税により、市場から資金が流出すると、
所得線の角度が下がることになる。これは消費額がさらに下がることを意味する。資金の流出は原油の場合は産油国へ流れ、消費税の増額の場合は政府の借金返済に資金が流れる。
その結果民間市場では再び販売競争が激しくなり価格が下がって行く。各企業は製品に利鞘を十分載せることができず、生産量を増やして利益を上げようとする。その結果が賃金の低下を招き、労働時間が増えたり、労働人口が増えていくのである。
今、日本は統計的にもこの傾向がうかがわれ始めたと言えるだろう。一人辺りの賃金が下がり、誰もが生活を維持するため働かなければならない発展途上国並の時代の先触れがやって来たのである。
普通、完全雇用に達すると労働人口の逼迫から賃金が上昇するものである。しかしデフレにおいてはさらに市場から資金が減少するにつれ、完全雇用の労働量が増えて行く。所得線の角度が低下するに連れて完全雇用の労働量が増えていく。永遠に完全雇用に到達しないのである。
理論的には、このような資金の減少が続き、そして日本の全人口が、働くことになってもなおかつ完全雇用の労働量に到達することができない状態がやって来るのである。それが江戸時代の日本の状況と言えばお分かりいただけよう。
日本の多くのメディヤや新聞で少子高齢化のため、消費が減退しているというようなことがまことしやかに説明されている。
しかしまだ1億2千人を割ってはいない。さらに労働人口が増えている。
普通の経済状態で少子化が顕著になり、高齢社会が出現すれば、労働人口が減少し、一人辺りの賃金が上昇するはずである。しかしこのようなことは、現日本経済においてなんら起こっていない。逆に働かねばならない人が増えている。
少子化の影響で消費が不足するのであれば、労働人口も減少するはずである。そのような気配は感じられない。
日本は少子化以上の消費減退を招いていることは明らかであろう、それを消費減退の要因に使うことは許されない。
まともな経済学者や政策担当者が口にすべきものではないであろう。
日本の現状は、失業率が減少しても、就業全労働人口が増えており、なおかつ賃金が減少しているので、国民の誰もがはたらかなければならい発展途上国並に落ちぶれて行く前段階に入って来たと言えよう。
消費税の増税や年金の消費税化により、これからさらに民間の負担率を増やせば、さらに消費が減少し、粘り強い日本国民は、外の国では破綻の道に進むものが、低賃金過剰労働に耐え、それを永遠に続け、江戸時代の人口3千万程度まで没落していくだろう。
これからの労働統計は、失業率の増減だけでなく、総労動人口の増減も勘案しなければ、日本全体の景気の実情がが分からないであろう。
一言主 http::/blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
デフレ下の完全雇用、または、日本のウイニングショットも合わせて参考にしていただければ幸いです。