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交易条件から考える企業と家計の関係(KlugView)
2008/05/19 (月) 12:57
5月19日付の日本経済新聞は、消費財関連企業が、原材料価格の上昇を販売価格に転嫁できない状況を一面で紹介しています。記事では、このままでは、価格転嫁が遅れることで企業収益が悪化する一方で、仮に企業が価格転嫁を進めたら、今度は個人消費が低迷する懸念があるとも指摘しています。
ただ、日本は原材料の多くを輸入に頼っているため、世界的に原材料価格が上昇すれば、価格上昇の悪影響は、日本のどこかで受け止めなくてはなりません。言い換えれば、今の日本では、「原材料価格の上昇」というババを、企業と家計が押し付けあっている(ババ抜きしている)ことになります。消費財関連企業が原材料価格の上昇を販売価格に転嫁できないということは、現時点では企業がババを引いてしまっていることになります。
新聞記事では、ババを引いている業種を交易条件指数という経済指標を使って説明しています。交易条件指数とは、製造業の投入物価(原材料価格)に対する産出物価(販売価格)の比率のことで、交易条件指数が上昇する、つまり販売価格が原材料価格よりも相対的に上昇すれば、製造業の収益性は高まると考え、一方、交易条件指数が低下する、つまり原材料価格が販売価格よりも相対的に上昇すると、製造業の収益性は低くなると考えます。この交易条件指数を業種別にみると、食料品と電気機械の指数が大きく低下しており、2つの業種の収益性が悪化していることがうかがわれます。
食料品業界については、最近、乳製品や小麦を使った製品の値上げが話題になっていますが、それでも交易条件は低下している、つまり販売価格の引き上げは原材料価格の上昇分に見合っていない、ことになります。つまり今後は、食料品価格が値上げされるか、もしくは食料品業界の収益性がさらに悪化するか、のどちらかといえます。同じことは電気機械業界にもいえ、値下がりが続く家電製品も価格が下げ止まるか、電気機械業界の収益性が悪化することになるのでしょう。
価格転嫁が進む、つまり製品価格が上昇すると、家計の負担が大きくなり個人消費が落ち込む、と心配する声もよく聞かれます。ただ、先にご紹介したように原材料を輸入に頼る日本の場合、原材料価格が上昇すれば、誰かがその負担を受け止めなくてはいけません。仮に、企業が負担を受け止めたとしても、いつまでも負担を受け止め続けることはできず、いずれ収益確保を目的に人件費を抑制することになります。つまり、製品価格が上昇しない代わりに、得られる賃金も上昇しなくなることになります。どちらにせよ個人消費が落ち込む可能性はあるわけで、価格転嫁の進み具合が個人消費の動向を左右するという考え方は、中長期的にはあまり成り立たない気がします。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
交易条件指数が大きく悪化している2つの業種って何?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
食料品業界と電気機械業界
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/05/19/002806.php