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[東京 11日 ロイター] 来週の東京株式市場は材料が目白押しで神経質な展開が続くとみられている。投資家の一部はイベントを前に見切り発車的に買いを入れたが、相場上昇に確信を抱くまでには至らないぜい弱な自信であるため退却の足も速そうだという。
ただ強気派は徐々に増えているため、よほどのネガティブ・インパクトがない限り下値は限定的になりそうだと予想されている。
来週の日経平均株価の予想レンジは、1万3000円─1万3600円。
<市場の強気ムードは強まる>
米大手投資銀行ゴールドマン・サックス・グループ(GS.N: 株価, 企業情報, レポート)のブランクファイン最高経営責任者(CEO)は10日、2007年夏に始まった世界的なクレジット市場の混乱はおそらく後半戦に入ったとの見方を示した。サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題による市場の混乱を巧みに乗り切り巨額な利益をあげたことで知られる同社トップの発言だけに、強気派には大いなる福音となった。
日経平均株価は11日のオプションSQ(特別清算指数)算出に絡んだ売買が一巡した後も買いの手は弱まらずほぼ高値引け。ベアー・スターンズ(BSC.N: 株価, 企業情報, レポート)の救済策などでクレジット問題への不安がいったん後退しており、市場では「問題の実態がわからず不安が強い時が株の底値。問題が企業の損失など実際に数字に表れるときはすでに底を打った後だ」(国内証券ディーラー)と強気の声が増えている。
だがある欧州系証券の情報担当者は海外勢を含めて100%の自信があるわけではないと話す。「本当に株価が上昇トレンドに入ったのか数カ月先になってみないと誰もわからない。だが運用担当者はそこまで待つわけにはいかず、ひとつかふたつの好材料をもとに見切り発車的に買いを入れた」という。このためあくまで「ぜい弱な自信」にしかすぎず、イベントの結果次第で簡単に弱気に傾くとみていると述べる。
<米重要経済指標が目白押し>
最初の関門はマクロ経済指標だ。国内の重要経済指標発表は特にないが、米国では14日に3月米小売売上高、15日に4月NY州製造業業況指数、3月米卸売物価指数、16日に3月米住宅着工件数、3月米消費者物価指数、3月米鉱工業生産と重要指標が目白押しとなっている。
「懸念は企業業績だ。足元の業績は悪いのがわかっているが、先行き、その悪さがどのくらい続くのか、どの程度の深さなのかがわからない。金融市場の動向などさまざまな要素が絡むためだが、サブプライム問題は過去に例のない事象であり、不確実性が高いことが予測を難しくさせている」(ユナイテッド投信投資顧問・シニアファンドマネージャーの高塚孝一氏)。今後は実体経済のマクロ指標に、より注目が集まってくる展開が予想されるという。
債券ファンド最大手の米パシフィック・インベストメント・マネジメント(ピムコ)のモハメド・エルエリアン共同最高経営責任者(CEO)は10日、CNBCテレビに対し低迷している国内の住宅市場と株式市場について、底入れを宣言するのは時期尚早との認識を示した。両市場とも安定化の兆候が出ているものの、特に労働市場などが悪化の初期段階にあり、両市場の圧迫要因になっていると述べている。
<米金融機関、いずれ公的資金注入は避けられずとの見方が大勢>
来週のもうひとつの注目イベントは米大手金融機関の決算発表だ。17日にはメリルリンチ(MER.N: 株価, 企業情報, レポート)、18日にはシティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)が1─3月期決算を発表する。
米シティグループの第1・四半期決算は、昨年第4・四半期に続き大幅な赤字になると見られており、ロイター・エスティメーツがまとめたアナリスト予想は、1株あたり0.95ドルの赤字。昨年第4・四半期は98億3000万ドル、1株あたり1.99ドルの赤字だった。
またCNBCテレビが9日、消息筋の話として報じたところによると、米証券大手メリルリンチ(MER.N: 株価, 企業情報, レポート)の幹部は第1・四半期の評価損が60億─65億ドルに達し、赤字決算となる公算が大きいと予想している。
「米金融機関の足元の決算が悪いのはみんなわかっている。特にネガティブ・サプライズがなければ大きく動かないのではないか。むしろ買い戻しに動く向きもありそうだ」(別の国内証券ディーラー)との声もあるが、経営建て直しは依然として課題のまま残っている。
国際通貨基金(IMF)は8日、クレジット市場の混乱が一段と拡大し、金融機関の損失は1兆ドルに迫る可能性があると示した。
「1兆ドルとは世界の大手金融機関の自己資本がすべて吹き飛ぶ額だ」(外資系投信)とされ、公的資金による資本注入は避けられないとの見方が市場では大勢だが、ポールソン米財務長官は10日、市場混乱で打撃を受けた米金融機関は早急に資本増強に動くべきで、政府の支援を待っていてはならないと、これまでの主張を繰り返している。
ユナイテッド投信の高塚氏は「もはやクレジット問題自体は株価下落のドライバーとはならないが、企業業績は金融問題の長引き方などによって大きく影響される」と述べている。
(ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者)