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バフェットやビル・ゲイツなど大富豪がドルへ決別宣言
浜田 和幸 2008年04月03日 10:11
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タグ: 億万長者 バフェット ヘッジファンド ジョージ・ソロス 米国
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今、ウォーレン・バフェット氏、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長、ジョージ・ソロス氏らは相次いで、ドルへの決別を宣言し、ユーロとコモディティへの方向転換を図っているという。
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前FRB議長のグリーンスパン氏 「この状態は戦後最悪の事態」
アメリカでは、大統領選挙の予備選が過熱する一方である。民主党、共和党を問わず、候補者にとっては、アメリカ経済の立て直しに関する具体策が大きなテーマとなってきた。サブプライムローン危機に端を発したアメリカ金融界の大混乱は、一向に収まる兆しが見えない。そのため大統領の座を狙う三人の候補者達は、いずれもヘッジファンドを悪役に仕立てようとする動きを見せている。
曰く、「 不動産バブルを煽り、サブプライムローン危機をもたらした元凶はマネーゲームを追及し続けたヘッジファンド業界にある」 といった類の批判である。
中でも、民主党のヒラリー・クリントン候補とバラク・オバマ候補はアメリカの金融システムを再生し、資金手当ての必要な中小企業や真面目に働く個人向けに融資が実行できるようにするためには、マネーゲームからの脱却が必要だと主張し、ヘッジファンド業界に対する規制強化を打ち出している。
マネーゲームの行き過ぎは確かに問題だが、さりとてすべての責任をヘッジファンドに擦り付けるような議論も極端に過ぎるだろう。
確かに、アメリカの景気の先行きは極めて厳しい。相次ぐ金融機関の破綻に際し、アメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度(FRB)では非常事態宣言を出し、大恐慌以来の大規模な資金注入に踏み切った。
これはある意味では、ルビコン川を渡ったに等しい状況といえるかも知れない。前FRB議長のアラン・グリーンスパンも危機的状況が続くアメリカ経済について 「この状態は戦後最悪の事態だと後の歴史家たちは分析するに違いない 」と危機感を露にしているほどである。
その象徴的な出来事が、ウォールストリートで85年の歴史を誇る大手投資銀行ベアー・スターンズの経営破綻である。この異常事態に対し、連鎖反応を防ぐためFRBでは300億ドルという巨額の資金を融通することになった。しかし、ベアー・スターンズがこのような苦境に陥った背景は、同社が13兆4000億ドルもの巨額な投資ポジションを維持していたからなのである。この金額はアメリカの国家収入を上回り、全世界のGDPのほぼ4分の1にもあたる凄い金額だ。
ベアー・スターンズの危機的状況は氷山の一角
ユダヤ商法の権化ともいえるが、このような巨額なマネーゲームの渦中に一金融機関がどっぷりと漬かっていたのは、やり過ぎだった。実は、ベアー・スターンズに限らず、カーライル・キャピタルなど、破綻状態に陥ったマネーゲームのプレーヤー達はスワップ、スワプション、キャップス、カラーズなどのさまざまの金融テクニックを駆使し、デリバティブ運用を拡大してきた。
もっとも、手元の自己資金が800億ドルに過ぎない金融機関がこれほど大規模なマネーゲームに参戦できたのは、大手銀行やヘッジファンド、個人投資家などが、こぞって蜜に群がる蟻のごとく資金提供を続けてきたからである。
もし、20年前であればFRBがウォールストリートの金融機関を救済するために公的資金を注入することなどありえなかっただろう。しかし、2008年の現在、ベアー・スターンズを見殺しにすることはできなくなっている。なぜなら、同社の商品を扱っている金融機関は世界中に広がっているからだ。
リーマン・ブラザーズやシティー・グループ、UBSなどを筆頭に世界各国の金融機関や投資ファンドがベアー・スターンズと共に「マネーゲーム号」の乗組員として、運命を共にしているのである。
言い換えれば、ベアー・スターンズが破綻すれば、アメリカのみならず世界全体が金融大恐慌に陥ることになりかねない。
それほど、今や、世界の金融機関が根っこの部分で繋がるようになった。
限られた手元資金を基に梃子の原理で投資金額を何倍にも膨らます手法を「デリバティブ」と呼ぶ。これまで、数多くのヘッジファンドがこの手法で大きな利益を確保してきた。
しかし、516兆ドルまで拡大したデリバティブが「金融界のチェルノブイリ」にも例えられるほど、想定外の大きな被害をもたらす可能性は高い。
そして実際のところ、このベアー・スターンズの危機的状況は氷山の一角に過ぎないのだ。というのは、このところアメリカではほぼ、毎日一行の割合で投資銀行やファンドが破綻しているというのが現実だからである。
アメリカの金融機関は本来はたすべき役割を放棄
アメリカでは、一般国民の懐具合も厳しい状態が続く。2007年、12月末の段階で、可処分所得の36%が食糧、エネルギー、医療関連に使われるようになっており、いわゆるエンゲル係数の大きさで見れば、1960年以降、最悪の状況になっている。2008年の全米レストラン協会の調査でも、対前年同月比で、レストランの売上が54%も下がったことがわかる。要は、外食を控え、自宅で食事をする人々がかつてないほど増えているわけだ。
また、すでに300万件を超える住宅ローンの破綻が大きな社会問題化している。これまでは、差し押さえが発生すれば、家具や家電製品などが競売にかけられることは当たり前であったが、差し押さえの時点で一切金目のものが残されていないケースが急増しているという。現在の予測では、住宅ローンの支払いが継続できそうにない家庭は約900万件も存在するといわれる。
とにかくアメリカの金融機関はすでに本来はたすべき役割を放棄していると言えよう。100年前であれば、アメリカで金融危機が発生した場合、それは単にアメリカ一国の問題であった。しかし、現在ではアメリカで発生した金融危機が世界経済全体を奈落の底に突き落としかねない。そこまで経済や金融のグローバル化が進んできているのである。
「2009年までは景気の回復は期待できない」
アメリカの通貨ドルも国内の経済不安や信用低下の結果、価値が急降下を続けている。2001年にピークを記録した後、ドルは下落の一途をたどり、昨年だけで14%を超える目減りとなっている。
70年代にもアメリカは景気後退局面に陥ったことがあるが、当時はベビーブーマーと呼ばれる世代が購買力を発揮し、不況からの脱出の牽引力となった。しかし今日では彼らが第一線を退き、老後の経済的安定を確保するために財布の紐を締めている。そのために株式市場に流れる資金も先細り、消費全体が落ち込む結果となっている。
デューク大学と「CFOマガジン」が共同で行った経営者に対する意識調査によれば、国際的な企業の約90%の経営者たちが「2009年までは景気の回復は期待できない」と悲観的な見通しを明らかにしている。このような厳しい経済の先行きに対して、悪役として名指しを受けたヘッジファンド業界ではあるが、それらの批判も何のそのと、新たなビジネスチャンスを追及し始めている点は頼もしいと評価できる。
当然、破綻するヘッジファンドもあるのだが、本来リスクをヘッジすることを最大の売りとしているのがこの業界である。ファンドマネジャー達はさっさとアメリカのドルや赤字国債に見切りをつけ、またサブプライムローン危機で価値の下落した不動産をいちはやく売り払い、新たな投資ポートフォリオを組んでいる。
彼らが今一番注目しているのは、ユーロとユーロ圏の影響力の強い旧東欧やアフリカ地域のインフラ整備や資源開発プロジェクト。ユーロ圏の経済規模は、拡大基調を維持しており、2007年末の段階で、加盟15カ国のGDPはアメリカを追い抜くまでになった。ということは、ドル安ユーロ高の流れの中でEU経済がマーケットとして大きな力を行使できるようになったということである。
今や、FRBは世界最大の不動産オーナー
各国の金融機関や個人投資家もこのところ相次いでドル離れやアメリカの国債売却に走っている。FRBが国内景気を浮揚させようと、昨年の9月以降たびたび金利の引き下げを行っているにもかかわらず、その結果として、ますますドル売りに拍車がかかった。問題のベアー・スターンズに関してもFRBの介入と資金援助の見通しが付いた時点で、JPモルガン・チェースが救済のための買収に乗り出すことになった。
しかし、住宅ローン破綻の大津波は益々大きなうねりとなってアメリカ国内の不動産を飲み込み続けている。今や、FRBは世界最大の不動産オーナーになったといっても過言ではない。なぜなら、破綻した不動産を融資した銀行やローン会社からほぼ無制限に担保物件として押さえているからである。
そのあおりでアメリカの不動産価格は下落する一方だ。そこでFRBとすれば、不動産の資産価値を維持するために、ドル紙幣の増刷に頼らざるを得なくなっている。しかしこの政策はさらなるドル安を生むことになり、海外の投資家は一層ドルや価値の目減りが続く国債を見限り、原油や天然ガスあるいは、金やプラチナそして穀物などのコモディティの先物市場に余剰資金を投入するようになった。
先見性のある多くのヘッジファンドはこの大きな流れを読み、不動産やドル市場から原油先物市場への転換をはかっている。すでに800社を超えるヘッジファンドやエコファンドなどが原油先物市場に大挙して押し寄せ、中には、一夜にして1000億ドルを超える利益を上げるファンドマネジャーも出始めた。
その影響もあって、アメリカ国債に対する信用は失墜せざるを得ない状況になっている。中国や日本がアメリカの赤字国債を買い支えてはいるものの、海外からの入札比率は低下を続け、直近の国債入札では全体の6%しか海外からの応札はなかった。つまるところアメリカは実質的に国家破綻といってもいい。2008年の財政赤字は4100億ドルに達するとの見通しが公表されているからだ。
ブッシュ大統領は任期最後の経済演説の中で、今年度のGDP成長率を2.7%と設定したが、アメリカを覆う景気後退の暗雲の下では、すべて絵に描いたもちで終わりかねないのである。
大富豪たちのドルへの決別宣言
財政・貿易の双子の赤字に加え、国民の貯蓄率ゼロというアメリカの家計の赤字を考えれば、現状の好転の兆しはまったく見られない。確実視されているのはインフレと財政破綻、そして金融システムの崩壊への道筋であろう。
からくも国家破綻を免れているのは、日本と中国がまったく別の思惑からではあるがアメリカの赤字国債を大量に買い支えているためである。これはとりもなおさず、アメリカという国家が日本と中国のお慈悲に頼らなければ生きていけないという現実を浮き彫りにしている。
実は2007年11月アメリカの会計検査院はアメリカ政府の財政破綻宣言を行った。その内容は衝撃的なもので、「累積赤字が53兆ドルを突破しており、救済の可能性はゼロに等しい」というもの。正にアメリカという国家に対する死亡宣告にも等しいものになっている。アメリカの国債や国際基軸通貨としてのドルが“紙くず”になる日が近いというわけだ。ところが、残念ながらブッシュ政権によって、この報告は見事なまでに無視されてしまっている。
そのような重大な告発に対し、今やアメリカ最大の富豪となったウォーレン・バフェット氏、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長、「ヘッジファンドの帝王」と異名をとったジョージ・ソロス氏らは相次いで、ドルへの決別を宣言し、ユーロとコモディティへの方向転換を図っているのである。
「その流れに乗り遅れてはならじ」とばかり、多くのヘッジファンドもユーロ市場と原油先物市場へと雪崩を打って突入したわけである。そして今や、史上空前のドル安ユーロ高と原油高が世界を覆っている。日本の投資家もこの流れの先を読まねば、生き残ることはできないだろう。
バフェットやビル・ゲイツなど大富豪がドルへ決別宣言 :投資&お金活用実践Webマガジン MONEYzine(マネージン)
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