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「ニクソン・ショック」から37年、再び「金本位制」復帰を狙うアメリカの「ドル再興戦略」
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投稿者 Key_b 日時 2008 年 4 月 02 日 17:17:46: aVTqP1otWh/fQ
 

[金相場]ドル安、金高騰の裏でアメリカは何を画策しているのか
「ニクソン・ショック」から37年、再び「金本位制」復帰を狙うアメリカの「ドル再興戦略」
SAPIO 4/9
http://www.s-book.com/plsql/com2_magcode?sha=1&sho=2300204108&keitai=0
上武大学教授 高橋靖夫
「PROFILE」1943年生まれ。慶應大学法学部卒業。1974年「国際投資経済研究所」を設立、
「石油・金・ドル」の相関関係の分析を始める。「金、復活!」(廣済堂出版)、
「新世界秩序」(総合法令出版)など著書多数。

 ドル安と金高騰が同時進行している。多くの専門家は「サブプライムで米国は失墜。ドル離れマネーが金に動いた」と解説するが、本当か。まったく逆の見方をするのは、高橋靖夫・上武大学教授だ。金高騰の次に来るのは「米国・金本位制復活」という驚愕のシナリオだという。

やはり「米国失墜」いわれた「ニクソン・ショック」

 金の高騰が続いている。ブッシュ政権成立後の01年4月から始まった金相場の上昇は昨年秋から一段と加速し、ついに史上初めて、1オンス1000ドルを突破した。エコノミストたちはサブプライム問題により、世界の過剰流動性マネーが株から金に流れ込んだこと、中国やインドなど実需の増加などを理由にあげる。もっともらしい話だが、本当にそうなのだろうか?
 私はこの金相場の高騰は、周到に準備された米国の長期戦略によるものだと見ている。今、1兆ドルに迫る経済赤字とサブプライム問題からくる景気後退と「ドル安」などの理由で、「米国の失墜」が当たり前のように言われているが、これは戦略上の”負けたふり”にすぎない。長期戦略とは、「逆ニクソン・ショック」である。ドルと金の交換を再開する金本位制への移行であり、狙いはズバリ、「米国の独り勝ち経済を永続化させること」にある。
 現在、世界各国の通貨はすべて金と兌換できない不換紙幣、つまり紙とインクだけでできている。ほとんどの人はそれが当たり前だと思っているが、金本位制が停止されたのは、わずか37年前にすぎない。実行したのは米国だ。
 1971年8月15日、ニクソン大統領は突然、金とドルの交換を停止した。世界を仰天させたこの「ニクソン・ショック」によって、金は「通貨としての役割」を否定され、たんなる「商品としての地位」に追いやられた。
 当時の通説は、「モノづくり」で競争力を失った米国が、ドルを守り切れなくなったために「ブレストンウッズ体制」(1944年に連合国によって合意された、ドルを中心に各国通貨の対ドルレートを固定する固定相場制)を自ら放棄した。これは「ドルと米国覇権の始まりである」というものだった。
 ところがその後の米国といえば、崩壊どころかドル覇権を拡大し、冷戦終結後にはユニテラリズムを振りかざす唯一超大国として「独り勝ち」を達成した。では、「崩壊」したかに見えたニクソン・ショックの狙いはなんだったのだろうか。
 私は、ニクソン・ショックとは、50年代の「パックス・アメリカーナ」を再現するまでの緊急避難であり、意図的かつ戦略的に選択された高度な外交政策だったと考える。
 ブレストンウッズ体制下では、アメリカは1オンス35ドルで各国政府の保有する金の交換を保証していたため、赤字の増加は金の流出につながる。そこで米国は”負けたふり”をして「失った金の再備蓄」を密かに狙ったのだ。
 米国は金とドルの交換という「責任」を放棄しながら、基軸通貨特権を享受しつつ、固定相場制から変動相場制への制度変更を仕掛けたのだ。国内には投資を呼び込みたい時はドル高、逆に国内製造業を強化したい時にはドル安に誘導するという為替操作を使い分ける可能になった。日本は、プラザ合意以降、為替変動によって米国に富を搾り取られ続けてきたといっても過言ではない。
 と同時に、金の通貨としての魅力を否定することで金相場を下落させ、失った金を安く買い戻せるように仕掛けた。つまり金本位制を停止した時からすでに、再び金本位制に戻す機会を狙っていたのである。
 むろん、そんなことは、経済白書で発表されることも、ウォールストリート・ジャーナルに書かれることもない。しかし、米国が金を「捨てた」かのように見せつつ、決して金の価値を忘れていなかったことを記す状況証拠なら、いくらでもあるのだ。
 たとえばニクソン・ショックからわずか3年後の74年12月、米国は奇妙なふたつの政策を実行した。ひとつは40年ぶりの「国民の金所有の自由化」である。
 金先物市場の狙いは「ロンドンから金の価格決定権を奪う」こと、そして金所有の自由化は「民間による金の備蓄を進める」こと。共に戦略的な「米国による金の囲い込み」である。
 米国の金相場の操作は極めて巧妙だった。ヨーロッパの投機家たちを抑え込むために、74年12月31日、国家備蓄のなかから200万オンス(約62t)の金を放出すると発表し、相場の「冷やし玉」にした。同時に有力金融機関には「不買キャンペーン」を行わせた。その結果、金価格は74年12月31日の「国民への自由化」の197.5ドルをピークに、75年6月の130ドル近くまで下落を続けた。こうして米国国民は安い価格帯で金を買うことができるようになったのである。
 さらに76年1月の「IMF(国際通貨基金)キングストン合意」では「金廃貨」を正式決定させるとともに、最貧途上国を支援するためにIMFが保有する公的保有金の6分の1を売却すると決めさせた。これによって金価格は同8月には103ドルにまで急落している。
 こうして「通貨としての金」が否定され、金相場が下げ続ける中、81年にはレーガン大統領が「金委員会」を発足させ、金本位制復活の方法を検討している。91年には父ブッシュ大統領の側近、ベーカー財務長官が大統領選の最中に「金・石油・商品バスケット構想」を主張。95年にはグリーンスパンFRB議長(当時)も、「個人的見解だが、金本位制にすることが望ましい」と発言している。米国は相場をにらみながら、常に金本位制を視野に入れてきたのだ。

9.11の半年前に金高騰は始っていた

 80年1月の1オンス850ドルの史上最高値から、金は20年間にわたって下がり続けた。この間、金が下がり続けることをしっているかのようにバリック・ゴールドという産金会社は「先売りヘッジ」で膨大な利益を上げてきた。同社の国際諮問委員会委員長がブッシュ元大統領だったことも、金下落が米国の意思によるものだったことが暗示しているのではないか。
 99年8月に253ドルの二番底値を記録、そしてここから一挙に上昇を始めた(図参照)。底値から急上昇に向かった2か月間に、金を押し上げるような有事も金融事件も何も起こっていない。にもかかわらず30ドル以上も上昇している。金の上昇トレンドは9.11に始まったという専門家が多いが、その半年も前から始まっていたのだ。
 255ドルの二番底をつける3か月前に、金嫌いの民主党クリントン政権に代わりブッシュ現共和党政権が発足した。底値付近から金買いに動いたのは数千億円の資産を持つ「スパーリッチ」だ。彼らは「米国の安値での金備蓄」が完了したことを肌で感じ取ったに違いない。これが「スーパーリッチによるゴールドラッシュ」で、金価格を長期上昇トレンドへ構造転換させたのだ。
 そして今や1000ドルを超えた。昨年8月のサブプライム危機による世界同時株安で、金も連れ安して、850ドルまで下落したが、その後の1000ドルへの推進役は、通説ではドル離れマネーの買いとされているが、私は陰の主役はスーパーリッチが本格的に資産の割合を「保険としての金」へ戦略的にシフトさせたものと考えている。「第2時スーパーリッチのゴールドラッシュ」である。
 だから金価格の上昇は底堅いのだ。
 70年代のニクソン・ショックからたった今、再び「米国覇権の終わり」「ドル失墜」が叫ばれていることに、何かを感じないだろうか。私は、今が、米国が金本位制を復活させる絶好のタイミングだと見ている。

金は1500ドルまで上昇する

 サブプライムによる世界同時不況対策と称して、米国は大量のドルを世界に供給している。その結果、通貨全体の価値は下落し、強力なインフレ圧力が世界経済にかかっている。もしこのタイミングで、米国が金本位制復活を宣言したらどうなるか。不換紙幣インフレのなかで、金本位制に復帰したドルだけが「インフレヘッジできる唯一の通貨」に大化けできる。失墜したはずのドルが、再び基軸通貨として世界を支配する力をもつことになるのである。
 今、金は再び「価値保存機能をもつ唯一の通貨」として、再評価され始めた。アラブ首長国連邦の中央銀行総裁は、外貨準備のうち10%を金にする方針を発表した。他国の中央銀行も、同様の動きに出始めている。とはいえ、もし米国が40年がかりで金本位制復活の準備をしてきたのだとすれば、ほかの国にはすぐに金本位制に追従する用意はない。米国だけが「兌換紙幣ドルの優位性」を享受できるのである。
 私は、金価格は1500ドルまで高騰し、そのタイミングで米国が金本位制復活を宣言すると見ている。ブッシュ政権中に実行される確率は高いが、仮に次期大統領がマケインでも、あるいは民主党政権となっても、いずれ実行されるはずだ。なぜなら、巨額の赤字とドルの権威失墜を防ぐ解決策はほかにないからである。そして強いドルが復活すれば、日本や欧州の優良企業のM&Aも容易になる。
 荒唐無稽に聞こえるだろうか。だが、2000年以上に及ぶ通貨としての金の歴史に比べれば、変動相場制などたかだか40年にすぎない。また米国が「制度変更という外交戦略」を得意技にしていることは、日本は何度も痛い目にあって承知しているはずだ。ニクソン・ショックの時も、何の予兆もなく突然発表されたからこそ、「ショック」と呼ばれ、日本も大打撃を受けた。「負けたふりのドル安」に目を奪われていれば、戦略なき日本は「3度目の敗戦」を迎えることになろう(談)

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