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ベアー救済では終わらない危機 NEWSWEEK 2008.4.2
ウォール街に取りついた疑心暗鬼でベアー・スターンズは資金繰り悪化から身売りヘ
バブル崩壊の全貌がわかるまでには時間がかかる
ダニエル・グロス
週明けの3月17日の朝、マンハッタンのミッドタウンにある投資銀行ベア−・スターンズ本社のエントランスの内側に、2ドル紙札が数枚、テープで張り出された、特筆すべきは、前の週まで1株60ドルで取引されていたベアーの株をJPモルガン・チェースがたったの2ドルで買収したことだろうか、それとも、株価暴落で多くの社員が突然貧乏になってしまったベアーで、2ドル札が盗まれもせず数分以上そこに残っていたことだろうか。
サププライムローン(信用度の低い個人向け住宅融資一で損失をこうむったのはベアーだけでない。ウォール断の金融機関すべてが同じ目にあっている。だがベアーはこの数力月、市場の信用を失っていた。破綻する多くの結婚がそうであるように、最初は徐々に、そして最後はいっぺんに。
CEO[最高経営責任者]のアラン・シュワルツは3月12Hの水曜日、経済専門チャンネルCNBCに出演、ベアーの経営に問題はないと請け合ったばかりか、1―3月期には利益が出る見込みだと語った。それから2日もたたぬうちに、ベアーは政府関係者に破産申請の可能性をもらしていた。そして週木には、FRB(米連邦準備委員会)の仲介でJPモルガンがベアーをタダ同然の2億3600万ドルで買収することが決まる。07年1月には200億ドルの時価総額があった会社なのに。
米投資銀行5位のベアーの事実上の破綻は、米金融市場の切迫度と、信用の腐食ぶりを表している。ベアーの臨終には、現金の不足と同じくらい信用の欠如がかかわっている。銀行やヘッジファンドといった取引相手が、ベアーにお金を貸したり資金を頒けることを嫌がりだしたのだ。「企業の支払い能力は、それがあると思われている間だけしか続かない」と、投資銀行オッペンハイマーのアナリスト、メレディス・ウィツトニーは最近のリポートで書いている。
企業が山ほど借金をしている場合はとくにそうだ、ベアーは保有資産1ドルに対して33ドルまで借り入れをふくらませていた。例えて言えば、学資ローンと住宅ローン、カードローンの全額を急に明日返せ、と書われたようなもので、救済が必要になったのも当然だ。
経済は行き詰まり、ひょっとしたら景気後退に入っているが、ウォール街のほうは非常警戒態勢にあるようだ。経済的な要因と同様、心理的な要因が大きい。
'''パーティー後に待つ苦行'''
最近の住宅バプルと住宅ローン・バブルの間に人々は、貸したお金は決して焦げつかないと信じるようになった。それまで焦げつかなかったからだ。だがバブルがはじけると、心理は激しく逆方向に振れた。「市場はわずか8〜9ヵ月の間に、信用拡大の絶頂から1930年代以来最悪の信用危機へ転落した」と、投資銀行エバーコアのロジャー・アルトマンCEOは言う。「いま市場には健全性と安令性に対する疑念が渦巻いている」
90年代には、世界の市場関係者は当時のアラン・グリーンスパンFRB議長の危機収拾能力に全幅の信頼を置いていた。問題が起これば、ロバート・ルービン財務長官とローレンス・サマーズ財務次官がグリーンスパンを支持し、ホワイトハウスの熟練したスタッフもそれを支えた、ついたあだ名が「世界を救う委員会」だ。
だが、現在のFRB議長であるベン・バーナンキとヘンリー・ポールソン財務長官はまだ、グリーンスパンとルービンに匹敵するほどの実績をあげていない、バーナンキは反応が鈍かった。サブプライム危機がまだ広がり続けている昨年の時点で危機収拾宣言をしてしまったり、消費者物価が上昇しているのにインフレ懸念を鼻であしらってしまったり、もっともここ数カ月は、敏捷さと想像力をもって危機に対処し、金利を引き下げ、銀行やウォール街の金融機関に資金を供総した。
ゴールドマン・サックスのCEOだったポールソンは、まだ公職をもてあましぎみだ、ベアー救済策について彼が会見したとき、「ヘッドライトを浴びて立ちすくんだ鹿のように見えた」と、元商務次官のデービッド・ロスコプフは言う、「『大いに白信がある』と彼は言ったが、それが本心でないことは明らかだった」
ブッシュ政権が議会と作った景気対策にアナリストは及第点を与えるが、全体的な評価はパッとしない「サププライム危機が表面化したのは9ヵ月前だが、ブッシュ政権は、ほとんど手遅れになる先月まで、なんら具体的な行動を取ろうとしなかった」と、ニュー
ヨーク州卜、院議員のチャールズ・シューマーは言う。
脂肪たっぷりの数年間を過ごした後だけに、今後数年はダイエットが必要かもしれない、一プライベートエクイティ(未公開株)投資大手、カーライル・グループのデービッド・ルーベンスタイン創業者は最近、きたるべき「苦行の時代」について語った、「そこでわ
れわれは、幾分かの罪滅ほしをしなければならないだろう」
'''モグラ叩きで大わらわ'''
シティグループやゴールドマン・サックス、メリルリンチといった大手プレーヤーたちは、「大なスケールでリスクを読み違えた後、住宅ローンなどで数百億ドルの評価損を計上する羽目になった。
カーライル・グループ傘下の運用会杜カーライル・キャピタルは昨年、IPO(新規株式公開)で一般投資家から資金を募り、その調達額の31倍もの借金をして、住宅ローン担保証券などを購入した。こうなると、もはや投資戦略というより妄想のなせる業だ、憶病になった貸し手が貸し金の返済を求めると、カーライル・キャピタルは清算を余儀なくされた。
株や債券の価格が物語る今の投資家の圧倒的心理は恐怖だ、最も安全な投資先とされる米短期財務省証券の価格は急騰し、50年ぶりの高値をつけた、同じく比較的安全とされるMMF一マネー・マーケット・ファンド一の残高は3兆5000億トルにのぼり、事業会社
は多額の手元資金をため込んでいる。それらの資金を投資に回す自信をもてないのだ。
即効性のある対策はない。「これから数カ月〜1年以内に、金融システムの混乱の影響はより広い経済のなかでもはっきりしてくるだろう」と、ムーディーズ・エコノミー・ドット・コムのチーフエコノミスト、マーク・ザンディは言う。「副作用が明らかになるまでには時間がかかると思う」
リスクからの逃避はすでに、消費者の借り入れを以前よりむずかしくしている。学資ローンも、自動車ローンも、住宅ローンもなかなか借りられない。
失われた白信ばかりは、FRBからも借りることはできない。時間をかけて酸成するしかない。そのために必要なものの一つが商い透明性だ、「対象の実態がわかり、価格をつけ、価値を決めることができるかぎり、市場は何でも扱うことができる。そのためには、もっと情報が必要だ」と、未公開株投資会杜ライトイヤー・キャピタルのドナルド・マロンは言う。
サププライム危機はこれまで、モグラたたきのようなものだった。予期しないところに予期しない問題が飛び出す。その結果、銀行も監督当局もいまだに全体像を把握できない、銀行は財務体質をどこまでも強化しなければならない。ベアーを追い詰めたような「取り付け」に襲われても、簡単に倒れないようにするためだ。
「これらの銀行や金融機関にもっと資本を注入すれば、危機は緩和されるだろう」と、共和党の大統領候補ジョン・マケイン上院議員の上級政策顧問を務めるダグラス・ホルツイーキンは言う。だが何より重要なのは、金融機関が巨額の損失を出すのを食い止めるこ
とだ。失敗が疑心暗鬼を生むのと逆に、成功は白信をもたらす。
'''敗戦処理の速さは超一流'''
ウォール街がもつ強みの一つは、敗戦処理の素早さだろう。JPモルガンの幹部は、3月17日の月曜にはもうベアーのオフィスの占領を始めていた、そして水曜までには、ベアーの破綻はすでに昔話になった。ダウエ業株30種平均は火曜に420ドル高になり、水曜には
293ドル下げたが木曜にはまた262ドル戻した。
だが木曜日、株価全体が上げるなかでも大きな負け組はいた。金融サービス大手のCITグループだ。企業向け融資を行うCITは、通常の資金調達手段でお金を借りることができなくなり、銀行にもつ73億ドルの融資枠の全額を引き出したと発表。株愉は急落した。
投資の世界で働く多くの人々にとって、象徴的な映画といえば『ウォール街』だ。だが、信用危機が繰り返し醜い頭をもち上げていることを思えば、主人公が同じ日を何度も繰り返す羽目になる『恋はデジャ・ブ』のほうがふさわしいのではないか。
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38