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もう何十年も前に出版された芥川賞の特集雑誌で石原に関するつぎのようなエピソードが書かれていたのを覚えている。
まだ売り出し中の新人作家だった石原がとある夏を軽井沢の別荘で過ごした。涼しくて快適だったのだろう。それでわざわざ銀座の文壇バーに電話してそのことを吹聴した。そして、どうだそっちは蒸し暑いだろうと言ったところ、電話に出た先輩作家は、いやそんなことない東京も涼しいよと応じた(若くして世に出たので周囲の作家はほぼ全員が先輩にあたる)。さて実際にその夏の東京は涼しかったのだそうだ。すると石原は当初そんなことないだろうと信じなかったが、本当に涼しいということが判ると、「ちぇっ、つまんねえなあ、つまんねえなあ」と何度も繰り返し、じつに無念な様子を示したという。
つまり石原は自分が快適なだけでは満足できないのである。他人が不快な日々を過ごしているという現実があればこそ石原の幸福は倍加する。他人の不幸なしに石原の幸福は成立しないのだということが知れる。たしか石坂洋二郎だったかがそういう石原のことを「精神的吝嗇」と評したという逸話を紹介してそのエッセイは終わっていた。首尾相応して絶妙である。
湘南ボーイの末路・
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