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【サブ・プライム問題の処理が長期化する事は必然であり、米国経済がリセッションに突入する可能性は高まっている】---オリジナル投稿
いまだにサプ・プライム問題は早期に解決し、米国経済は下半期にかけて回復し再び成長軌道に乗るとの意見があるが、それは「経済におけるメルヘン」のようなものだと認識せざるを得ない。
○サブ・プライム問題とSIV(事実上の銀行子会社)の問題
サブ・プライム問題の解決には資本不足に陥った銀行に公的資金を注入するなり、破綻させて整理してしまえば良いとする意見があります。
一部の経済紙でそのように短絡的に考えて論評を書いているのを見かけますが、バブル破綻期の日本の銀行の問題や過去に米国で起きたS&L問題と同じように考えおり「証券化」の問題を置き忘れているように思えます。
結論から言えば、下手に銀行を破綻させると本当に「証券化商品」が紙クズになってしまうから、今の時点では事実上できなくなっていると考えています。
問題が複雑になっているのは証券化投資が銀行傘下のSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル/投資ビークル)と言う連結対象外の特定目的会社で行われている事、証券化の過程で利回や利息収入を増やすために多種の債券をスライスしてミックスしている為に発生しています。
SIVは実態的には親銀行の信用力(ほとんどの場合、親銀行から融資枠を取付けている)を担保にして投資家から資金を(CDOやABCP)により調達し、住宅ローン債券に投資したりその組成に係わってきました。
これは誤解を恐れずに簡略化して言うと、米銀は連結対象とならない事を良い事に傘下のSIVを使って相当な額の「サブ・プラ転がし」、「証券化転がし」をしていたと言う事になります。
ですから、米銀行の決算がいくらキレイで素晴らしくてもだれも信じないのは当然です。
法的には親銀行はなんら責任を負いませんが、実際にSIVを破綻させたらどうなるのは初期の破綻で既に例があります。
問題はSIV自身が係わった住宅ローン債券以外にも他から購入した債券を切り刻んだり、混ぜてCDOやABCPを発行し、そのCDOやABCPをベースに更に証券化が行われていたりする事です。
証券化商品の格付基準には問題があり、証券の中に一部でもデフォルトした債券が含まれていると他の債券がすべて健全でもAAAが一挙にBとかC格付けに落とされてしまうようです。
これはどういう事を意味するかはもうお分かりですね。
○親銀行を破綻させるスキームは負の連鎖を産む。
親銀行を破綻させるプロセスを考えて見ましょう。
@親会社破綻 → A 傘下SIV破綻 → B発行したCDO,ABCPの事実上のデフォルト発生 → C そのCDO,ABCP証券購入しスライスしてまぜた他のSIV発行の証券もデフォルトもしくは毀損 突然、所有する証券の価値が暴落、と言う信用不安の連鎖が続く事になります。
また、いくら債券の原理上の価値があっても原債券にもとづく返済金やその債券の管理会社が倒産してしまっては回収はできません。
まして債券がスライスされ、どこでどうなっているか分らないのでは抵当権で担保されていても回収のしようがありません。
つまり時間をかけて問題のあるSIVの発行した債券を集約し融資先毎に名寄せするスキームを取らないと回収ができない。
管理会社が倒産してしまっては完全に紙切れにしかならないと言う事になります。売却しようにも適正な理論価格の算出ができなれば買う人なんぞいません。また証券の保有者が単独で数百とか数千の融資先から直接回収するなんぞは事実上不可能です。
売却処理する為には買い手がなければならない。また、その為には適切な価格評価をしなければなりません。
先にベアースターンズの買収、救済劇がありましたが、ベアースターンズはMBS(Morgage Back Security)の第一人者であり、仕組みがよく似ているCDOについても全米No.1のシェアとされ、そのプライシングシステム(価格査定システム)は恐らく世界一とされています。
つまり破綻をさせるとしても正しい価格を算出できなけば、後処理もできないので現在の状況はとりあえず、価格算出と取扱のできる枠組みだけは確保したと言う段階です。
ましてや公的資金を導入して処理するなんざ、まだまだ先の話です。
○ヘッジ・ファンドの問題
サブ・プライム関連商品で一番ヤバイのはエクイティ部分とされ、その次にヤバイのはメザニンと呼ばれる部分ですが、実はこの商品を大量に保有するのが、ヘッジ・ファンドです。
現在のところ売るに売れない。売れば下がる。下がるから売ると言う負の連鎖状態が続いています。このような状態ではどうなるか。
今現在は金や原油等の商品に資金が向かっていますが、ヘッジ・ファンドはほとんどの場合銀行借入によりレバレッジをかけています。
信用を提供する銀行が資金供与を絞るとどうなるか。またヘッジ・ファンドが「売るに売れない」サブ・プライムローン証券を大量に抱え、損失が増加している事が一般に広く知られるようになった場合にヘッジファンドが証券を売り続ける事となり健全とされるプライムのローン債券の価格低下も引続き起こる事は避けられません。
また金や原油等の商品は配当や利息などのインカムゲインを生みません。したがってこれらの商品はいずれ反対売買で決済するしかありません。すでにヘッジ・ファンドの破綻がいくつか出ていますが、大型の破綻が出ないとは言い切れません。またヘッジ・ファンドを利用している金融機関も多数あるようです。
○公的資金の公的な利用法すら決まっていない。
公的資金により解決とすれば良いと言う論議がありますが、具体的にどにような手法で公的資金を利用するかについて踏み込んだものは見受けられません。
考えられるのは証券の買取機構のようなものですが、資本不足の金融機関はどのようにするのかが見えていません。(この過程で二次破綻する金融機関がでないとは言えません)
証券の発行管理先を保護しないと何も効果を生みませんが、証券が二階建てどころか三階建てなんてはまだ軽い上に数百、数千に切り刻まれた上にミックスされていたののでは・・・・・・・・整理回収は簡単にはできません。
○結 論
サブ・プライムをはじめとする証券化商品の処理スキーム、枠組みを作ったとしても準備期間だけで数ヶ月は係る事でしょう。その間、信用収縮は進みます。これで実態経済に影響が無いといえるでしょうか。
それからその資金はどこから調達するのでしょうか。損失額はIMFの集計では8000億ドルにもなります。これは損失額なので原債券の額がこれ以下とは考えられません。ドル国債で調達するにしても再建相場の下落や米国債の格付が引下げられ、暴落しないとは言い切れません。
米国内だけでも半分以上はある筈です。
※もし株式を持っているようなら外需関連(特に米国向け輸出)が多い銘柄は処分か空売りと言う事になるのではないかと思われます。少なくとも日経平均は1万円を叩く事になるかもしれません。その辺が大底となる事を祈っていますが。