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(最初にひとこと)
巨大化した多国籍企業が国家をも超越した存在となり、企業至上主義(コーポレート・クラシー)による新たな形の帝国を構築しつつあると言う意見がありますが、多国籍企業の活動はそういった側面をも考えざるを得ないと感じましたのでここに転載します。
私見ではこれは帝国主義の新段階であり「企業帝国主義」とでも言えるものと見ております。
企業が国家をも超越し支配する存在となった時、国家に属する国民は吸血鬼に血を吸い取られる存在になってしまうような予感さえします。
企業はよりやすい労働力を求めて世界を越境し、生産した財を購買力のある国(消費国)へ輸出して利益を稼ぎます。
進出先の国家には一時的に雇用が創造され、国民の所得は豊かになりますが、コストが上がれは「ポイ」です。
消費国の国民に所得がなれれば、借金をさせて買わせます。金は貯蓄や資源のある国を軍事力を使って恐喝して出させます。
全国民が借金漬けになってクビが回らなくなったら、恐慌やサブ・プライムショックなどのショックを定期的に起こして「チャラ」にします。
そんな妄想をこの記事はイメージさせました。
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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080307/149262/?P=1
巨大化する多国籍企業への期待と不安【なぜグローバル企業が米国経済の救世主になれないのか】---BusinessWeek
2008年3月10日 月曜日
Michael Mandel (BusinessWeek誌、主席エコノミスト)
Steve Hamm (ニューヨーク)
Christopher Farrell (ミネソタ州セントポール)
米国時間2008年2月28日更新 「Multinationals: Are They Good for America?」
米ニューヨーク州スチューベン郡コーニングの町を見下ろす丘の上で、研究施設の拡張が最近始まった。
この拡張に3億ドルを注ぎ込むのは、町の名を社名とした特殊ガラス大手の米コーニングだ。
好調な海外事業で稼いだ潤沢なキャッシュを元に、国内の製品開発部門の増強を図っている。
「私たちの技術革新体制を機能させるには、研究開発の拠点を1カ所にまとめることが重要だ」と同社のピーター・F・ボラナキス社長は説明する。
コーニングが最大の雇用主であるスチューベン郡の住民にとって、この拡張のニュースは歓迎すべきものだ。
2005年以降、同郡の失業率が近隣の郡を上回るペースで改善できているのは、この地域に根差しながら世界中で収益を稼ぎ出す同社によるところが大きい。
米国民はコーニングのような“国内投資意欲のあるグローバル企業”を数多く必要としている。
こうした企業は景気減速という痛みを和らげてくれるからだ。キャッシュは潤沢、海外事業での利益はうなぎ登り、国内企業をはるかに上回る生産性や革新性。
しかも米消費者や銀行、中小企業のように信用収縮で企業活動に二の足を踏むでもない。今頼りになるのは、巨大な多国籍企業なのだ。
○多国籍企業は米国経済の足を引っ張っている?
事実、米国を本拠とする多国籍企業(金融を除く)上位150社は、合わせて5000億ドル以上の流動性資金を保有している(2007年末データ)。
ヒューレット・パッカード(HPQ)、ファイザー(PFE)、イーベイ(EBAY)、サラ・リー(SLE)などが米国を本拠とする代表的な多国籍企業である。
米国で大規模に事業展開をしている外国企業のトヨタ自動車(TM)や独シーメンスなども、同様に手元資金には事欠かない。
それと対照的なのが、規模で劣る国内志向の強い企業だ。利益見通しはパッとせず、バランスシート上に多額の短期債務などの負債を抱えているので、資金の調達に苦労している。
では、グローバルに展開している巨大企業は米国経済の救世主となるのだろうか。
近年の状況から見ると、そう期待はできない。米商務省経済分析局(BEA)の2000年以降の統計によると、多国籍企業はある意味で、米国経済の足を引っ張っているのかもしれない。
2000〜2005年(完全な統計値が出ている直近年)にかけて、米系多国籍企業は国内で200万人余りの雇用を削減した。
ほかの民間企業での雇用は逆に伸びている。この傾向が大きく逆転したという兆候は見られない。
米系だけではない。外資系多国籍企業も同時期に米国事業で50万人の雇用を削減している。
経費削減や米国子会社の売却によるものだ。外資系企業で一番の優等生とも言える米国トヨタでさえ、2000〜2007年にかけて新規に採用したのはたった9000人だ。
グローバル化が野放図に加速しているような時代にあって、米経済でその流れに取り残されている部門がある。
輸出だ。ここ数年は増加傾向にあるものの、2007年の国内総生産(GDP)に占める輸出の割合は11.8%と、1997年の水準を辛うじて上回る程度だ。
この間に、米系多国籍企業の海外子会社の売り上げは急増している。
明るい材料もある。ドル安と海外でのコスト上昇が重なったため、生産性の高い多国籍企業が一部の生産活動や雇用を再び米国に移そうとしているのだ。
この動きは、既に輸出増や外資系企業の対米投資意欲の高まりとして表れている。2007年第3四半期における対米直接投資は、2000年以来最高を記録した。
今の景気減速で多国籍企業が果たす役割ははっきりしない。
そのため、米連邦準備理事会(FRB)のベン・S・バーナンキ議長の責務は一層難しいものになっている。
FRBの主たる政策手段である利下げは、キャッシュが潤沢な多国籍企業にはそれほど効き目がない。
既に有利な条件での資金調達が可能だからだ。
そのうえ、多国籍企業の経営陣にとって、金利や為替レートは数多くある検討項目の1つにすぎない。
税金対策、海外の投資奨励策、労働力の質、長期的な企業戦略など、考慮すべき事項は山とあるのだ。
多国籍企業は、近いうちに政治の影響を大きく受けるようになるだろう。
大統領選は、グローバル化の勝者と敗者との格差問題に一石を投じている。
特にバラク・オバマ民主党候補は、「米国で雇用を拡大する企業には優遇措置を与え、そうでない企業には制裁を科す」という新たな政策を何度も語っている。
○海外に輸出しているのは商品ではなく雇用機会
経済の面から見れば、多国籍企業は過去10年間、どうなるか予測のつかない存在として扱われてきた。
北米自由貿易協定(NAFTA)の成立から4年後の1997年、米労働省労働統計局(BLS)は、以後10年間における雇用成長予想を発表した。
この中でBLSは、インフレ調整済みの輸出高が10年間で倍増するという楽観的な想定を立てた。
そんな輸出ブームが実現していれば、米国に高賃金の雇用機会をたくさんもたらしただろう。
だが大方の例に漏れず、BLSのエコノミストも見逃している点があった。
輸出の大部分を占めると思われた一握りの大企業が、戦略を転換するとは予想してはいなかったのだ。
世界市場を相手にビジネスを行うゼネラル・エレクトリック(GE)、IBM(IBM)、ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)といった米巨大企業は、国内の生産能力を増強するのではなく、海外に生産拠点を移した。
アジアや欧州での事業を拡大し、国際的な労働力を抱えるグローバル企業になっていったのだ。
その結果、米国の輸出実績はBLSの予想を50%下回り、多くが予言した雇用ブームは実現しなかった。
実質的には、米系の多国籍企業は過去10年間で米国経済からの“デカップリング(切り離し)”を進めてきた。
本社はまだ米国にあり、米株式市場に上場し、株主の多くは米国人。
しかし、事業の拡大は海外が中心だ。
例えば、米エマソン・エレクトリック(EMR)は、1997〜2007年の10年間で海外売上高を倍以上の116億ドルに増やした。
だが国内からの輸出は、20%増の13億ドルだった。
海外売上高で上位20社に入るユナイテッド・テクノロジーも、国内からの輸出は62億ドルと62%の増加にとどまるが、海外売上高は130億ドルから340億ドルへと急伸している。
海外展開重視の戦略を明確に語る経営者もいる。
「得意先のために海外で仕事をしてくれないかという顧客の要望がある」と、情報システムサービス提供会社の米EDS(EDS)、ロナルド・A・リッテンマイヤー会長兼CEO(最高経営責任者)は言う。
同社は昨年、米国で2400人の早期退職を受け入れた。
「低賃金で質の高い労働力が得られる地域での雇用は拡大していく。それに合わせて、我々の雇用の拠点も移転が進むだろう」。
EDSは2005年末時点で1万4000人だった海外従業員数が、今年末までに4万5000人になると予想する。
米大手企業が国外に移転して海外事業を拡大する一方で、中小企業が“輸出業者”の座に就いたわけではない。
米商務省国勢調査局のデータによれば、輸出は依然として大企業の独擅場となっている。
従業員500人超の企業による2006年の輸出高は全体の71%を占め、2000年の水準から変わっていない。
世界的な大企業としての地位を確立している米系企業は比較的少数にすぎない。
米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のS&P1500指数構成企業(金融を除く)のうち、海外売上高上位150社が全体の売り上げの84%を占めている。
150社は大多数が名の通った企業だ。「真のグローバル企業と言えるのはごく一部」と、米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー(ロンドン)のパートナー、ジョン・ダウディ氏は発言している。同氏は最近、多国籍企業の研究に取り組んだ。
欧州でも、少数の大企業が支配しているという構造は変わらない。
「欧州各国の経済状況は、一握りの高収益企業の業績に左右される」。
こう指摘するのは、最新リポート『少数の恵まれし企業(The Happy Few)』を執筆した仏パリ大学のティエリ・マイヤー氏と伊ボローニャ大学のジャンマルコ・I・P・オッタビアーノ氏だ。
日本の状況も変わらない。トヨタ、ホンダ(HMC)、ソニー(SNE)など、少数の大手有名企業がグローバル市場に進出している。
“グローバリゼーション・ギャップ”、つまりグローバル化の波に乗る巨大多国籍企業と乗れないその他大勢との格差は、貿易問題で米国人の意見が大きく割れる原因になっている。
多国籍企業は、生産性や賃金、経営体制のすべての点で国内企業を上回っている。
「多国籍企業は高賃金で生産性も高い。どの国でもこうした企業を必要としている」と、多国籍企業研究を専門とする米ダートマス大学タック経営大学院のアンドリュー・B・バーナード教授(国際経済学)は言う。
同教授の試算によると、米国での多国籍企業とその他企業との給料格差は6%。
欧州では大半の国でこれ以上の格差がある、と経済学者マイヤー氏とオッタビアーノ氏は指摘する。
○研究開発と本社機能に限って母国経済への貢献を期待できる
多国籍企業も特定の業種においては、同業の国内企業ほど大掛かりな人員削減は行っていない。
世界市場を相手にするうえで、研究開発部門や本社機能を米国内に維持し続ける必要があると判断したからだろう。
2000〜2005年にかけて、製造業全体の雇用は18%減少したが、米系の多国籍企業では12.5%の削減にとどまった。
とはいえ、国内であれ海外であれ、多国籍企業が多数の従業員を新たに雇うことはない。
2006年、上位の米系多国籍企業の従業員数は、S&P1500指数構成企業(金融を除く)の雇用全体のわずか47%。
一方、売り上げは全体の57%、利益は62%を占めていた。これは国内だけでなく海外の雇用も含んだ数字だ。
加えて米政府の発表したデータでは、米系多国籍企業の国内生産高のGDP比は2000年の21.8%から2005年には18.5%に縮小した。その後改善している可能性は低い。
もちろん、米系多国籍企業の成功によって、国内景気が向上するというシナリオもある。
例えば株式市場。外資が大量に流入したとはいえ、現在も米国株の大部分は直接的または間接的(投資信託や年金基金を通じて)に米国人が保有している。
理由は単純で、外国人投資家の安全志向を反映したものだ。
米国債や社債、そして悲惨な結果になったが当初は安全だと目論んでいた住宅ローン担保証券(MBS)などが主な投資対象だった。
その結果、外国人の保有比率はわずか13%にとどまっている(FRBのデータによる)。
さらに、研究や製品開発での貢献も期待できる。こうした業務のほとんどは依然として国内が中心だ。
「大規模な研究開発部門の本拠地が突然どこかに移転することはないだろう。今でも極度に集約化されている」と、米ニューヨーク大学経済学部のジョナサン・イートン教授は言う。
これは短期的には好材料だ。こうした職種は高給な場合が多く、景気にもそれほど影響されないためだ。
コーニングの経営上層部は、研究開発部門をほぼすべて本社に置くと決断した。
「ここニューヨーク州コーニングで、安定的に専門知識を蓄積していくための投資を行いたい」とマーク・A・ニューハウス新規事業開発担当上級副社長は話す。
デビッド・L・モース社内研究業務担当上級副社長は、「米国は今でも工業研究を行うのに最適な場だ」と言う。
半導体の業界は、工場や研究施設の設備投資を世界中に分散して行ってきた。
そうした半導体産業でさえ、米大手企業が国内の名門25大学と連携して、最先端のナノテク材料・製造プロセスの実用化に向けた研究を行っている。
2004年に始まったこの産学連携は軌道に乗っている。
「企業と大学の連携によって技術的課題を乗り越え、今後数十年この業界で米国は主導権を握れると確信している」とIBMの研究部門責任者、ジョン・E・ケリー氏は述べている。
現在この産学連携の共同研究に投じているのは、年間わずか7000万ドル。短期的に低迷している経済を活気づかせるには少なすぎる額だ。
だが、いずれ研究が実用化に進めば、新技術を導入するための投資は数十億ドルに上るとケリー氏は予想する。
IBMは投資の大半を米国内で行う。
同社の2つの半導体工場はニューヨーク州イーストフィッシュキルとバーモント州バーリントンにあり、最大規模の研究所はニューヨーク州ウエストチェスター郡とシリコンバレーにあるからだ。
「インターネットを使って簡単にやり取りができるとしても、基礎研究部門と製造部門は、これまで以上に近接した場所に置かれることになるだろう」と米半導体工業会(SIA)のジョージ・M・スカリス会長は言う。
○「今では、企業の国籍はほとんど意味を持たない」
だがグローバル化が進めば、こんな疑問も浮かぶ。
米国経済の観点から考えると、果たして企業の国籍は重要なのか。
雇用を生み出すのが米グーグル(GOOG)かトヨタかで違いはあるのか。
米資本の多国籍企業は景気が減速する米国内で今後も投資してくれるだろうか。
多くのエコノミストは、多国籍企業の国籍は重要ではないと考えている。
「自分の住む国で仕事を提供してくれるなら、どこの国の資本の企業であろうと全く関係ない」と、米スタンフォード大学で多国籍企業を研究するニコラス・ブルーム助教授は言う。
クリントン政権で労働長官を務めたロバート・B・ライシュ氏も、「今では、企業の国籍はほとんど意味を持たない」と指摘する。
確かに、米国への大規模な移転を行う外国企業もある。
例えばシーメンスは、ここ数年、米国内で巨額の投資をしてきた。2007年には、アイオワ州フォートマディソンに風力タービン用ブレード(羽根)の製造工場を開設し、今年はさらに拡張する予定だ。
「米国市場で、事業は非常に堅調だ」と、シーメンスの米国子会社のジョージ・ノーレン社長兼CEOは話す。
その一方で、米資本の多国籍企業が国内で投資を拡大してくれた方が、米国にとって好ましいと考える専門家もいる。
「現実には、バリューチェーン(価値連鎖)において知識やノウハウは、企業の中枢部付近に集中する傾向がある。多国籍企業は米国資本であることが望ましい」と、米ハーバード大学経営大学院のクリストファー・A・バートレット教授は言う。
米資本の多国籍企業が成功すれば、その企業への依存度の高い地域の生活の質にも影響が及ぶ。
特に、本社がある企業城下町では、地元の大学、美術・博物館、病院などの非営利事業に対する資金援助をはじめ、大きな波及効果が期待できる。
米ハッチンソン・テクノロジー(HTCH)の本社があるミネソタ州ハッチンソンの例を見れば、世界的に成功した米企業が地元に与える影響がよく分かる。
ハッチンソン出身者が共同設立者となって1965年に誕生した同社は、高精度のディスクドライブ部品メーカーで、製品の90%を海外で販売している。
ハッチンソン商工会議所の会頭で、市内のリッジウォーター短期大学の教務部長も務めるマイク・ボエム氏は語る。
「地元出身者が資本所有してきたことは、地域社会にとって非常に大きな影響があった。もし外資に買収されていたら、今のハッチンソンの町はなかっただろう」。
○費用対効果を分析して選ぶのは、海外それとも国内?
住宅ブームの頃は、米系の多国籍企業が雇用や投資をもたらさなくても、さほど問題にはならなかった。
多国籍企業の国内雇用が減少しても、建設や医療、外食産業の分野の雇用で補うことができたからだ。
だが今は米国民、それに米連邦準備制度理事会(FRB)も、多国籍企業に望みを託している。
しかし、多国籍企業は景気の落ち込みを緩和できるほどの投資を米国内でしてくれるだろうか。
2003年以降、米国の貿易相手国の通貨に対するドル相場は20%以上も下落している。
これほど大きな下落が続いたのは、為替相場指標が導入された1973年以降初めてだ。特に、中国の元に対しては15%も下がっている。その間に中国やインドでの労働コストは跳ね上がった。
対照的に米国では、高賃金の業種も含む全産業を対象とした指数で、実質賃金は昨年1%下がった。
海外から物を輸入する際の輸送費も高くなり、輸入にかかる経費も増えている。
こうした状況から、米国内で生産することの利点は近年例がないほど大きくなっている。
だが、多国籍企業の経営陣は、短期的な経済指標だけを見て事業展開する地域を決めるわけではない。
例えば税金の問題がある。経済協力開発機構(OECD)の資料によると、米国は先進国の中で法人税率が最も高い国の1つだ。
海外に事業を移転すれば、多国籍企業は合法的あるいは準合法的なあらゆる手段を駆使して、米国での法人税を減らすことができる。
例えば税金の高い国で借り入れをすれば、金利負担分の控除を最大限に受けられる。
知的財産から得られる使用料収入が相場より下がるのを覚悟のうえで、知財を税金の安い国に移す方法もある。
海外の関連企業に向けて輸出する際に価格を低く抑えることで、税金の安い国に利益を移すことも可能だ。
このような操作の結果、米系企業が全世界で上げた利益の総額に対する米国の法人税収の割合は、急激に落ち込んでいる。
「企業は、こうした移転価格規則の有利に使える点をうまく利用してきた」とグリンネル大学(アイオワ州)の経済学者で、国際税制の専門家であるジャック・ムッティ教授は話す。
「法律が非常に複雑なので、ほとんどの人はその損得を理解できない」。
○グローバル化した経済に合う税制への大改革が必要
多国籍企業の米国内での事業拡大を奨励するには、法人税制の見直しが必要になるかもしれない。
驚くことに、この点は民主・共和両党から賛同の声が出ている。
“定式配分法”という難しい名の改革法案が導入された場合、多国籍企業の課税所得は米国内の顧客基盤の割合に応じて決まることになる。
この制度を適用すると、輸出のみを行っている米国企業は法人税を払う必要が事実上なくなる。
逆に米国への輸入が多い外国企業は、全世界での利益に応じて相当高額の税金を取られることになる。
一方で、法人税自体がグローバル化した経済にはそぐわないので廃止にすべきだと主張するエコノミストもいる。
米国での雇用を維持するため、政府が多国籍企業に補助金を出す必要があるかどうかも大きな問題だ。
半導体業界など、巨額の設備投資が必要な産業にとっては特に重大である。
SIAのスカリス会長は、「米国は投資レベルで競い、海外で提示される投資奨励措置や税制優遇措置に対抗する方策を講じなければならない。ここで対策を打ち出さなければ、技術革新の面で米国が主導権を保ち続けることは難しい」と言う。
米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のヘクター・ルイーズCEOも「企業への優遇を求めているのではない。厳しい競争で勝つためだ」と語る。
長期的に見て最も賢明な策は、将来の多国籍企業を育成することかもしれない。
新しい多国籍企業が生まれれば、国内経済が活気づく。会社が急成長する時期に大量の就業機会が生まれ、深く根差すからだ。
グーグルが他国ではなく米国で設立されたことで、米国経済に貢献していることは否定できない事実だろう。
前出の欧州の経済学者、メイヤー氏とオッタビアーノ氏は、政策責任者は「既存の優良企業の支援に無駄な時間を費やすのではなく、将来の優良企業を育てるべきだ」と主張する。
そのためには、あきれるほど複雑な多国籍企業への課税制度を簡素化することが必要かもしれない。
現行制度では、税収は比較的少なく、企業は法令遵守のために多大な費用を要する。「すべての企業にとって、障壁ができるだけ小さくなるようにすべきだ。優良企業はその中から頂点に昇りつめていく」と米ダートマス大学のバーナード教授は言う。
だが、そうした未来の多国籍企業を待っていては、信用収縮に苦しむ現在の米国を救うことはできない。今の状況を変えられるかどうかは、既に巨大化した多国籍企業に懸かっている。