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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080225/147982/?P=2
オバマ氏、米実業界の敵か味方か--【企業に、思い通りの支配はさせない】--BusinessWeek
2008年2月26日 火曜日
Eamon Javers (BusinessWeek誌、米連邦議会特派員)
米国時間2008年2月13日更新
「Is Obama Good for Business?」
米大統領選の民主党候補指名争いは、北東部メーン州で2月10日に党員集会が行われ、バラク・オバマ上院議員(イリノイ州選出、民主党)がヒラリー・クリントン上院議員を抑えて勝利した。
その直後、オバマ氏は米CBSテレビの報道番組「60ミニッツ」に出演するまでの間に、自分のパソコンで1通の電子メールを送った。
その相手は、メディアコンサルタントや支持者データ提供者ではない。
投資銀行大手のUBSアメリカ(UBS)のCEO(最高経営責任者)、ロバート・ウルフ氏だ。
ウルフ氏によれば、上院で可決した景気刺激法案や、今月9日に東京で開かれた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議について意見を交換したという。
リベラルなイメージのあるオバマ氏が、銀行家とメールでやり取りするとは実に意外だ。
だが彼は遊説中、集会や飛行機での移動の合間を縫って、著名投資家で大富豪のウォーレン・バフェット氏に経済に関して助言を求めてもいる。
バフェット氏がブッシュ米大統領による減税策に反対の立場を表明していることに、オバマ氏は選挙演説で何度も言及している。
オバマ氏は、元米連邦準備制度理事会(FRB)議長のポール・ボルカー氏とも連絡を取り合っている。
ボルカー氏は今年1月、オバマ氏支持を表明している。
「話してみると、驚くほど爽やかで頭が切れ、思慮深い人物だった」。UBSのウルフ氏は、投資家のジョージ・ソロス氏のオフィスでオバマ氏と会った時の第一印象について、こう述べている。
ウルフ氏はオバマ氏に活動資金として、100万ドル以上を献金している。
とはいえ、米実業界全体を味方につけるのは容易ではない。
企業経営者から見れば、オバマ氏は、2番手、3番手の候補に過ぎない。上院議員歴はわずか3年と短く、大企業を優遇するブッシュ減税の規模縮小を主張している。
そのうえ米商工会議所からの評価も主要3候補のうちでは最低で、ヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)、ジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出、共和党)に後れを取っている。
ところが2月12日、メリーランド州、バージニア州、コロンビア特別区の「ポトマック予備選」で圧勝したことで、オバマ氏は民主党の最有力候補に躍り出た。
○オバマ氏の経済政策は現実路線
では、オバマ氏が大統領になった場合、実業界に対してどんな姿勢を打ち出していくのか。
「現実路線の中道左派政権になるだろう」と予想するのは、民主党の政治戦略顧問で今回の候補者選びでは中立的立場にあるスティーブ・マクマホン氏だ。
「オバマ氏は“企業は政治にある程度の影響力を持ってもよいが、思い通りの支配はさせない”という姿勢を鮮明に打ち出している」と言う。
上院での実績は少ないが、大統領になったら、どのような政策を取るかは予測できる。
オバマ氏は、労働組合から代替燃料、所得税額控除まで、民主党が従来から推し進めてきた法案をいくつも提案してきた。
企業の役員の報酬決定に関して、株主に拘束力のない議決権を与えるという法案も提案し、企業経営者の不評を買った。
また、ペルー国内の環境と労働者の保護条項を盛り込んだ対ペルー自由貿易協定(FTA)には賛成票を投じた。
この協定は、米国内の左派に支持されても、コストの安い現地生産を目論む米国の企業経営者には受け入れ難いものだ。
完全な自由貿易路線から離れつつある民主党の傾向を反映して、オバマ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)を見直し、クリントン時代に成立した協定に、同じような保護条項を加える考えも示している。
2月13日には、ウィスコンシン州ジェーンズビルの米ゼネラル・モーターズ(GM)組立工場を視察した後に演説し、経済の“バランス”を回復して、数百万人分の雇用を創出する計画の詳細を明らかにする予定だ。
ウィスコンシン州の予備選は2月19日に行われる。
○政策立案スタッフにコンサルティングファーム出身者も
その一方で、オバマ氏の行動にはリベラル派の議員らしからぬ一面もある。
彼は政策立案スタッフに、米マッキンゼー・アンド・カンパニー、旧アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)など、無党派のコンサルティングファームの出身者を揃えているのだ。
オバマ氏は、政治倫理の回復と財政透明性の強化のための法案では、保守派と手を組んでいる。
また2005年には、企業を相手取った集団訴訟に対する連邦裁判所の管轄権拡大を認める改革法案を支持している。
この法案成立で、消費者に訴えられた企業は審理の場を州立裁判所から、消費者側の弁護士の声が弱くなる連邦裁判所へと移しやすくなり、民主党の伝統的な支持基盤である法廷弁護士ばかりでなく、原告の消費者も不利になった。
その一方で、オバマ氏は独創的な提案もしている。デトロイトの自動車メーカーの旧来の医療費負担を補助する代わりに、負担軽減分をハイブリッド車などの低燃費車に再投資させるというものだ。
「オバマ氏の政治姿勢は、総じて穏健だ」と、民主党の大統領選挙戦の戦略顧問を長年務め、今年は中立的立場にあるボブ・シュラム氏は言う。
イリノイ州上院議員を務めた8年間、オバマ氏は民主党伝統の政治手法と、企業寄りの政策の両方を採り入れてきた。
貧困世帯の所得税額控除の拡大や、企業誘致の拡大による貧困地域の開発促進など、従来から評価の高かった対策を支持する一方で、技術開発基金を設けて先端企業の同州への誘致に努めたり企業への優遇税制を推進したのだ。
「彼にはリベラルな一面もあるが、われわれのような企業の人間との協力も惜しまない」と、シカゴランド商工会議所のジェリー・ローパー会長兼CEOは言う。
「電話で話すこともあれば、こちらから会いに行くこともある。好感の持てる人物だ」。
○政府案を入念に簡素化
オバマ政権が成立した場合に入閣を予想される顔ぶれからも、オバマ氏らしさが如実にうかがえる。
米ハーバード大学で博士号を取得したケニア人経済学者を父に持つオバマ氏は、経済に強い人脈を培ってきた。
その多くは経済学者で、オースタン・グールズビー氏(シカゴ大学教授)を筆頭に、ジェフリー・リーブマン氏とデビッド・カトラー氏(ハーバード大学教授)、クリスティーナ・ローマー、デビッド・ローマー夫妻(カリフォルニア大学バークレー校教授)らが名を連ねる。
グールズビー氏が目指すのは、“単純明快で運用しやすい”経済政策づくりだ。オバマ氏が言うところの“アイポッド(iPod)政府”である。
オバマ氏は遊説中、グールズビー氏と共に行政の仕組みを簡素化する提案を次々に打ち出してきた。
例えば高齢者と身体障害者を対象とするメディケア・パートD(処方箋薬代を保険適用対象に加えたもの)は複雑すぎるというのがグールズビー氏の考えだ。学生ローンの申請や納税申告についても簡素化を提案している。
グールズビー氏によると、オバマ氏とヒラリー・クリントン氏の違いが最も顕著なのは、個人貯蓄の奨励計画だという。
オバマ氏の案は、原則として従業員全員の給与から一律3%を貯蓄分として天引きするというもの。
ただし本人が希望するなら天引きを断ることもできる。
一方、クリントン氏は、特定の条件を満たす人々に税制上の優遇措置を与えて、貯蓄を促すことを提案している。
グールズビー氏はクリントン氏の案を評して、「理論上は一理あるが、調査結果を見ると、税額控除を受けたからといってそう多くの人々が貯蓄に努めるわけではない」と言う。
○実業界とは良好な関係になる?
それでも実業界は従来から共和党を支持してきた。
米商工会議所が最近実施した上院議員の好感度調査で、共和党の有力候補マケイン氏は80%を獲得。対するクリントン氏は67%、オバマ氏は55%だった。さらに極端だったのは全米製造業者協会の調査で、民主党の2候補はいずれもゼロ、マケイン氏が100%を獲得した。
しかし評価の低さは、オバマ氏の資金集めに影響していない。
オバマ氏は候補者として、政治団体やロビイストからの献金は受け取らないようにしている。
それでも氏の元には、1日約100万ドルもの資金が集まってくる。主にインターネットによる個人献金だ。
歴史の古い業界の従業員からの献金もある。
政治資金の監視市民団体である米責任政治センターによると、2007年のオバマ氏への最大の献金元は、法律事務所、投資会社、不動産会社などだった。
実業界からの合計献金額では、クリントン氏がオバマ氏をやや上回るという。企業関連の献金が占める割合は、クリントン氏の85%対し、オバマ氏は80%にとどまった。
オバマ氏は実業界にとって理想的な候補ではないが、協調関係は築いていける候補のようだ。