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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080220/147593/
マケイン氏、米実業界の敵か味方か---【指名確実となった共和党候補への支持は拡大中】
2008年2月21日 木曜日
Eamon Javers (BusinessWeek誌、米連邦議会特派員
米国時間2008年2月6日更新
「Is John McCain Good for Business?」
米大統領選挙予備選が行われる中、共和党の大統領候補にジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)が指名されると、米国実業界はどう反応するだろう。
実業界から見て、マケイン氏は矛盾だらけの候補者だ。
当初はブッシュ大統領の減税政策に反対していたのに、今はこの政策の恒久化を支持している。
企業ロビイスト規制活動の先頭に立ちながら、ロビイストから集めた選挙活動資金は大統領候補の中で最も多い。
また経済通ではないことを自ら認めながらも、政府の規制のない、自由競争原理に基づく資本主義社会を目指すという。
中立的立場にある共和党の世論調査専門家ウィット・エアーズ氏は、「立場のはっきりしない候補者」とマケイン氏を評する。
2月5日の「スーパーチューズデー」で、マケイン氏は指名に向かって躍進。
アリゾナ、ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカット、デラウェア、イリノイ、オクラホマなどの主要州で勝利を収めた。この結果、企業経営者の多くは不承不承ではあるが、マケイン氏支持に回るだろう。
2007年の時点では、実業界は共和党の大統領候補のうち、マケイン氏よりもライバルのミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事の方を支持していた(編集部注:ロムニー氏は2月7日に選挙戦からの撤退を表明)。
実業界がロムニー氏の方を歓迎するのは当然だった。
米大手投資ファンドのベイン・キャピタルの創設者として民間部門で成功を収めてきたロムニー氏は、遊説中もその実績を繰り返し強調し、「私は生まれながらの経済通」だと訴えた。
2月5日の投票日に向け、低迷する米経済の立て直しには経験豊富な指導者が必要だと主張し「米経済は景気後退に陥っている。国民はガス代や暖房費の支払いに頭を悩ませている」と語っていた。
○過去には企業との対立も
経済通のロムニー氏とは対照的に、マケイン氏は「アラン・グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)前議長の著書を読んで経済を勉強中だ」と冗談を飛ばしている。
またマケイン氏は以前から、政府と癒着したり、消費者に不利益をもたらしていると判断した様々な業界や企業を容赦なく糾弾してきた。
こうした過去ゆえに、企業経営者たちが投票にためらう可能性はある。
「マケイン氏が共和党の大統領候補となることがほぼ確実となった今、政府と取引のあるいくつかの企業は警戒感を強めることだろう」と、共和党ロビイストでマケイン氏を支持するスコット・リード氏は言う。
2001年と2003年にブッシュ大統領が減税を提案した際、マケイン氏は2度とも「減税するなら、政府は歳出を削減して税収の減少分を補うべきだ」という理由で反対票を投じている。
これは同氏が減税の推進派でないことの表れではないかと懸念する企業経営者もいる。
だが今、彼は遊説先で、「減税政策がこのまま失効すれば、とてつもない増税になる」と訴えている。
2004年と2005年、マケイン氏は共和党の大物ロビイストでワシントンの黒幕と言われたジャック・エイブラモフ氏の贈賄問題で、上院の捜査の陣頭指揮を執った。
エイブラモフ氏は有罪判決を受け、献金と引き換えに同氏に便宜を図った何人もの議員の名前が明るみに出た。
当時マケイン氏は、一部のロビイストと議員との親密な関係を非難していた。
しかし米消費者団体パブリック・シチズンの報告によると、当のマケイン氏は2008年の選挙運動で59人のロビイストから資金調達の支援を受けており、その額は候補者の中で最大だ。
マケイン氏は自身を「連邦議会における製薬会社の“天敵”」であるとしている。
製薬業界は、2003年のメディケア(高齢者向け医療保険制度)に関する改革法案を熱心に推進していた。
同法案の成立によって医薬品の支払いは政府負担となり、予算支出が数十億ドルも増えた。
マケイン氏はこの改正案に反対し、「政府が薬価の値下げ交渉をしたり、隣国カナダからもっと安い医薬品を輸入できるようにすべきだ」と主張した。
しかし結局、いずれの提案も業界ロビイストの強硬な反対により却下された。
○エネルギーやタバコ業界、米保健維持機構とも対立
マケイン氏は地球温暖化問題にも積極的で、CO2(二酸化炭素)排出権制度を提案したが、石油・ガス業界の一部から反対に遭った。
また「CAFE基準」と呼ばれる乗用車向け企業平均燃費基準の引き上げの支持も早くから表明していた。
ある石油・ガス会社のロビイストは、「マケイン氏が指名されると、共和党、民主党いずれの候補も規制推進派となってしまい、業界としては選択に困る」と漏らす。
タバコに関しては、マケイン氏は1990年代後半に大規模なタバコ規制法案を提出し、タバコ税の引き上げ、広告の制限、タバコ業界に対する米食品医薬品局(FDA)の規制権限の強化などを打ち出した。
可決されれば、タバコ業界は25年間で5億ドル以上の打撃を被ると試算された。同業界は懸命に抵抗し、上院でこの法案を凍結させた。
マケイン氏は米保健維持機構(HMO)とも対立した。
いずれも民主党のジョン・ケリー上院議員(マサチューセッツ州選出)やジョン・エドワーズ元上院議員(サウスカロライナ州選出)と手を組み、HMOに関する新たな規制法を提案したのである。
またマケイン氏は民主党のラス・フェインゴールド上院議員(ウィスコンシン州選出)と共同で選挙資金改革法案も提出している。
これは政党への多額の「ソフトマネー献金」(合法的ではあるが、連邦法で想定された水準を超える資金援助)を規制する内容だった。
ソフトマネーの一形態である意見広告が禁じられれば規制の枠外で選挙に影響を及ぼすことができなくなるため、「言論の自由が脅かされる」と考える企業経営者も多かった。
企業との争いで最も話題となったのは、米ボーイング(BA)が米国空軍と交わした、空中給油機100機をめぐる300億ドル規模の契約だろう。 マケイン氏は数年にわたってこの契約を問題にし続けた。
米上院商業委員会の委員長として調査を行った結果、マケイン氏は官民癒着の証拠を示し、空軍の調達担当高官と当時のボーイングCFO(最高財務責任者)は罪を認めた。
この事件はボーイングにとって大変な不祥事だった。マケイン氏の遊説成功について尋ねると、同社幹部は「大統領候補についてはコメントしない」という同社の方針を楯に口を閉ざした。
○企業献金の行方は?
2007年、企業からの資金集めでマケイン氏がロムニー氏に及ばなかった1つの理由が、こうした長年にわたる業界との軋轢だろう。
政治資金の監視市民団体である米責任政治センターのアナリストによると、ロムニー氏が84%、マケイン氏が78%と、両氏とも企業献金に大きく依存している。
だが企業から得た総額では、ロムニー氏の3500万ドル超に対しマケイン氏は2100万ドル弱と遠く及ばない。
加えてロムニー氏は、農業、通信・電子機器、建設、金融、医療、運輸など、ほぼすべての業界でマケイン氏を上回る資金を集めている(責任政治センター調べ)。
マケイン氏が強みを発揮した部門は、軍需産業と、弁護士及びロビイストだけだ。
軍需産業からの献金は、明らかにマケイン氏がイラクへの米軍増派支持を明言しているためだ。弁護士とロビイストからの献金は、ワシントンで長年築き上げた厚い人脈によるものだ。
企業からの献金は、選挙戦の候補者の旗色に左右されるのはよく知られている。
ロムニー氏が企業献金を集めたのは、2007年の選挙戦で優勢だったことの表れだ。当時マケイン氏は指名争いから脱落しかけており、ロムニー氏優位が囁かれていたからだ。両者の力関係が逆転した今、企業の資金支援も逆転するだろう。
企業経営者の多くは、民主党候補よりも圧倒的にマケイン氏支持に回るだろう。
米商工会議所が最近行った上院議員好感度調査で、マケイン氏は80%を獲得。
これに対しヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は67%、バラク・オバマ上院議員(イリノイ州選出、民主党)は55%だった(ロムニー氏は上院議員でないため対象外だ)。
支持者たちはマケイン氏を“今の時代にぴったりの人物”と評し、減税、研究開発費の法人税控除、貿易とグローバル化の推進、移民による高技能労働者の増強、教育訓練による米国労働者の競争力強化など、彼の企業寄りの姿勢を称賛している。
「マケイン氏が掲げる政策は米国民にとって有益なものだ。その政策を米国企業が実践するのだ」と、マケイン氏の上級国内政策顧問を務めるダグラス・ホルツイーキン氏は言う。
「マケイン氏は外交政策同様に、経済問題でも指導力を発揮するだろう」。
マケイン氏の支援者には大企業のトップも多い。
米シスコシステムズ(CSCO)のジョン・チェンバースCEO(最高経営責任者)、米大手証券メリルリンチ(MER)のジョン・セインCEO、米ヒューレット・パッカード(HPQ)のカーリー・フィオリーナ前CEOなどだ。
マケイン氏の遊説にも同行したフィオリーナ氏は、今年1月にミシガン州の経済団体に対し、「実績はロムニー氏よりはるかに上」と言い切った。