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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080305/149020/?P=1
ヒラリー・クリントンは米実業界の敵か味方か--【大衆迎合色が強いものの、ウォール街の大物が支持】---BusinessWeek
2008年3月7日 金曜日
Moira Herbst (BusinessWeek.com記者、ニューヨーク)
米国時間2008年2月28日更新 「Is Hillary Clinton Good for Business?」
2月26日、米大統領選の民主党予備選最後の討論会でヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州選出)は大衆に迎合する主張を高らかに謳い上げた。
「今まで大統領は財力や人脈に恵まれた人々の代表だった。今こそ中産階級と労働者のための大統領が必要だ」。
討論会の開催地はオハイオ州クリーブランド。
民主党候補者指名争いでバラク・オバマ上院議員(イリノイ州選出)に追いつくには、絶対に負けられない州だ。
オハイオ州予備選挙を3月4日に控え、クリントン氏は中産階級の味方であることをアピールして支持獲得を狙う(編集部注:4日、クリントン氏はオハイオ州で勝利した)。
同州ではジョージ・W・ブッシュ現大統領の政権下で、20万人以上の雇用が失われた。
○ウォール街の大物が支持
クリントン氏は富裕層を対象とする減税に反対し、医療保険会社や大手石油会社など特定の権益を持つ組織に対して厳しい政策を掲げている。
だが、過去の実績と支持基盤からは、同氏が米実業界の敵とは言えないことが読み取れる。
米モルガン・スタンレー(MS)のジョン・マックCEO(最高経営責任者)や、米投資会社クアドラングル・グループ共同経営者のスティーブ・ラトナー氏をはじめとするウォール街の大物たちは、クリントン氏支持を表明している。
限度額いっぱいまでクリントン氏に献金した財界人の献金者数は、オバマ氏やジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出、共和党)を上回る。
医療業界関係者からの献金も390万ドルと、候補者の中で最も多い。
一番の献金元は投資銀行ゴールドマン・サックス(GS)の関係者である。
「遊説中の候補者は有権者におもねって、献金者には不愉快なことを言うものだ。だが大抵の場合、献金者は最後には望み通りの成果を手にしてきた。誰が大統領になっても、ウォール街とホワイトハウスの良好な関係は続くだろう」と政治資金の監視市民団体である米責任政治センター(ワシントンDC)の広報担当者、マッシー・リッチ氏は言う。
○大衆迎合(ポピュリスト)色の強い政策案
いくら実業界とのつき合い方に長けているとはいえ、クリントン氏はブッシュ大統領ほど企業寄りの大統領にはならないだろう。
2月18日にクリントン氏が発表した13ページにわたる経済政策案は、中産階級と労働者に配慮し、企業に厳しいマニフェスト(政権公約)のように読める。
選挙遊説で強調しているように、クリントン氏は国民皆保険制度の導入を目指しており、保険料を払えない人には政府が補助金を出すとしている。
住宅差し押さえ急増の問題については、差し押さえに90日間の猶予期間を設け、変動金利型のサブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)の金利を5年間据え置くと公約した。
さらに、道路や橋などのインフラ整備に多額の公共投資を行って、雇用を創出することも公約している。
クリーンエネルギーや再生可能エネルギーへの公共投資で500万人以上の“グリーンカラー職”の雇用を創出する計画も盛り込まれている。
この政策案で標的にされているのは、クリントン氏が過大な利益を上げていると主張する業界である。
「製薬会社、石油会社、雇用を海外へ移す会社から、少なくとも年550億ドルを取り返し」、その分を雇用創出や医療保険に回すつもりだと論じた。
具体的には、大手石油会社に“超過利潤税”を課し、戦略エネルギー基金に充当することなどを提案している。
規制についての一般論としては、「現在の住宅危機を招いたような貸し過ぎを防止する規制枠組み」を支持すると述べている。
さらに重要なのは、クリントン氏が、減税や自由貿易協定など、ブッシュ政権下で企業が享受してきた利益の一部を取り上げようとしていることだ。
中核的労働基準(国際的に守られるべき最低限の労働基準)や環境保護を義務づけていない自由貿易協定の下、企業は米国との貿易を望む国々から低コストで製品を調達できた。
一見すると、クリントン氏の政策案はあまり実業界寄りとは思えない。
「大ざっぱに言えば、クリントン氏が大統領になると景気は悪化するだろう」と、米投資調査会社ストラテガス・リサーチ・パートナーズ(ワシントンDC)のアナリスト、ダニエル・クリフトン氏は言う。
クリフトン氏によれば、実業界は所得やキャピタルゲイン、配当に対する増税についても懸念しているという。
2月18日、ウィスコンシン州でクリントン氏は“ヘッジファンドのディーラー”に有利な抜け穴をなくした“公平な税制”を導入すると語った。
ヘッジファンドの運用マネジャーの投資利益に課す税率を、現行の15%から通常の所得税率である最高35%へ引き上げるというのだ。
○NAFTAと石油業界に及ぼす影響は?
実業界は貿易に対する規制も懸念している。
2月26日のオハイオ州クリーブランドでの討論会で北米自由貿易協定(NAFTA)について追及されたクリントン氏は、労働者保護と環境保護の改善についてカナダとメキシコが半年以内に交渉に応じなければNAFTAから脱退する意志を両国に表明すると公約した。
「クリントン氏はNAFTAの見直しを目指しているが、大企業の多くが必要としているのは貿易の拡大だ」(クリフトン氏)。
石油・天然ガス業界も、クリントン氏の大衆迎合色の強い主張で新たな課税の標的にされていることに不満を持っている。
これまで同業界は新税の導入を阻止するため、議会へのロビー活動を展開してきた。
クリントン氏が当選してもロビー活動はやめないだろう。
米国石油協会(API)上級税制政策アナリストのマーク・キッブ氏は言う。
「私たちは決して再生可能エネルギーの推進に反対しているわけではない。だがエネルギーの海外依存脱却を目指すのなら、石油と天然ガスに新税を課すのは間違いだ」
○目指すのは“均衡の取れた”政策
では、実業界にとってクリントン氏に好ましい点はあるのだろうか。
米商工会議所がこのほど発表した、上院議員の好感度調査によれば、クリントン氏は67%を獲得。
対するオバマ氏は55%だった(マケイン氏は80%)。
財界人の多くは、経済が成長し、米国民の給与が軒並み上昇した1990年代後半のビル・クリントン政権下の好景気時代を忘れていない。
ビル・クリントン政権下では“ニューレフト(新左翼)”が台頭した。
クリントン氏は前大統領である夫と同様に、極端な富の再配分ではなく、“均衡の取れた”政策を目指している。
つまり、中低所得層を今よりも手厚く保護する一方で、米国の通商と自由貿易の基本構造は維持しようというのだ。
ウォール街では、クリントン氏が大統領になることにあまり抵抗はない。
「(クリントン氏は)7年間ニューヨーク州選出の上院議員を務めてきた。ニューヨークは米国、そして世界の金融の中心だ。企業のCEOなど財界人はクリントン氏と密接に協力する機会があった。金融業界の有力者に何か懸念材料はあるかと質問すれば、8割以上が“何もない”と答えるだろう」と米投資顧問会社エバーコア・パートナーズ(EVR、本社:ニューヨーク)の共同創業者でクリントン氏の上級経済顧問のロジャー・アルトマン氏は言う。
実際、クリントン氏が当選すれば多大な恩恵を受ける業界もある。
クリントン氏は “経済政策案”で500億ドルの戦略エネルギー基金を創設して代替エネルギー産業を支援することを提案している。
「過去の実績と提案内容を見ると、ヒラリー・クリントン氏が大統領になれば我々が何を獲得できるのかはっきりと予想できる。前回の大統領戦では、当選したらどうなるのか分からないまま、多くの人がブッシュ氏に投票した。もう同じ轍は踏みたくない」と言うのは、エタノール生産事業者の米エサネックス・エナジー"(本社:サウスカロライナ州チャールストン)のCOO(最高執行責任者)、ブライアン・シャーバコー氏だ。
シャーバコー夫妻はそれぞれ予備選挙の献金限度額である2300ドルをクリントン氏に献金した。
目下の問題は、本選でマケイン氏と対峙するのは誰かということだ。
有権者は、クリントン氏であれオバマ氏であれ民主党候補者に対して、支持者の意向に沿う経済政策を打ち出すよう期待する。
「民主党候補者が誰であっても、中産階級への支援措置を取ると同時に実業界との良好な信頼関係を維持するという、綱渡りのような政策運営をすることになる。常に微妙なバランス感覚が要求される」(アルトマン氏)
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