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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080303/148767/?P=2
【FRBバーナンキ議長、教訓に学ぶ】--【自身の「大恐慌研究」が追加利下げを示唆】(BusinessWeek誌)
2008年3月5日 水曜日
米国時間2008年2月27日更新
「Bernanke's History Lesson」--(バーナンキの歴史学習)
2月27日、ベン・S・バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が連邦議会に向かう。
下院の金融委員会で半期ごとの金融政策報告を行うためだ。足取りは重い。
まるで敗色濃厚な戦況を報告するために戦地から呼びつけられた軍司令官のようだ。
バーナンキ議長の報告にもあるように、苦戦の原因は米経済が同時に2方面の敵を相手にしていることにある。 一方の敵は金融危機や景気減速、もう一方の敵はインフレだ。
FRBが金融危機や景気後退を撃退しようと必死になるほど、インフレの懸念は高まる。逆もまたしかりだ。
2年前にアラン・グリーンスパン氏から議長職を引き継いだバーナンキ氏にとって、この困難な状況は悩みの種だ。
FRBの置かれた状況を、「成長の下振れリスク、混迷する金融状況、インフレ圧力の3重苦」の中で金融政策の舵取りをしていると表現した。
FRBの当面の方針については、インフレ抑制よりも金融危機の沈静化や景気のてこ入れを優先させる考えを示唆。
「金融市場の混迷は続いている」という認識を示した。
今年の経済成長については、1.3〜2%程度の水準を保つという予想をまだ変えていないが、「この成長見通しには依然として下振れリスクがある」と述べた。
例えば、住宅市場や労働市場は予想以上に落ち込むかもしれない。
FRBの緩和措置に対する反応は鈍く、信用市場は今後さらに逼迫する可能性もある。
インフレに関しては、「FRB内部では、今年はかなり落ち着くと見込んでいる」と証言した。
「FRB政策決定者は、経済成長を支え、下振れリスクに適切に対応するため、必要ならば時期を逃さずに行動する」というお馴染みの発言も出た。
この日の発言を市場関係者は、「バーナンキ議長は3月18日開催の次回の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の大幅引き下げを支持する考えを変えていないもの」と受け止めた。
金利先物市場では、FF金利は3%から2.5%へと0.5ポイント引き下げられるとの見方が優勢だが、バーナンキ議長証言後は、利下げ幅は0.75ポイントまで拡大するという憶測も高まっている。
○戦況はどこも厳しい
FRBがどう動くにしても、八方丸く収まることはあるまい。
成長維持とインフレ抑制という2つの相反する目的を同時に達成することは困難だからだ。
インフレ懸念に敏感に反応する傾向のある金価格は1オンス=1000ドル近くに急騰した。
原油価格は再び1バレル=100ドル近辺の値をつけている。
さらに2月26日、米労働省が発表した1月の卸売物価指数は大幅な伸びを見せ、過去3カ月で年率換算11%近くまで上昇した。
こうしたインフレ懸念材料がある一方で、景気の急減速を示すデータの発表も続いている。
全米産業審議会(コンファレンスボード)は2月26日、2月の消費者信頼感指数が12ポイント悪化し75となったと発表。
消費者の期待値を示す期待指数は17年ぶりの低水準となった。
同日、米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、昨年12月の全米20都市の住宅価格指数が前年同月比で9.1%下落したと発表。
米不動産仲介業のリアルティトラックも、1月の米抵当住宅物件の差し押さえ登録件数が前年同月比で57%増加したと報告している。
翌27日には、政府が1月の耐久財受注の予想以上の落ち込みを明らかにした。
インフレ懸念が払拭されなくても、バーナンキ議長は金融危機の防止と景気のてこ入れを重視し続けるだろうか。
この問いの答えの参考になるのが、バーナンキ議長の“大恐慌”に関する学術研究だ。
当時創設されたばかりのFRBは奇遇にも似たようなジレンマに直面していた。
同議長は論文の中で「1929年8月に始まった通常の景気後退を、FRBが大恐慌にまで悪化させた」と主張した。
2002年には、「FRBは金融システムの重大な問題を放置し、金の海外への流出を防ぐため高金利を続けた」と講演で述べた。
○歴史は繰り返されるか?
大恐慌時代と現在の状況がぴったり重ならなくとも、類似点から学ぶことはできる。
1920年代、株式市場は急騰し、最新技術(ラジオ)が脚光を浴びるとともに(フロリダ州で)不動産バブルが起きていた。
景気後退は1929年に始まった。
FRBは大胆な利下げに踏み切るべきだったところを、逆に高金利を続け、利上げさえ行った。
ドルと金価格の連動(金本位制)を維持することが不可欠だという認識があったからだ(金利が高ければ、外国人はドルを金に換えるのを思いとどまる)。
バーナンキ議長は、米プリンストン大学時代の研究の中で、この認識は間違っていたと論じた。
1930年代に金本位制を続けた期間が長い国ほど、不況も深刻であったことを示したのだ。
当時、強硬派は金本位制の維持を主張していた。
この間違った主張の現代版が、“インフレは国民の最大の敵”というものだ。
物価上昇を抑制するために行き過ぎた高金利を続ければ、大恐慌時代の政策の二の舞いとなる。
バーナンキ議長は恐らくこうした失敗は犯さないだろう。1930年代の同様の過ちに関する研究を長く積み重ね、そうした政策は誤りであると身に染みて理解しているからだ。
「中央銀行の役割とは、金融機関の最後の貸し手となり、金融制度が大混乱に陥るのを防止することだ。バーナンキ議長はそのことをよく分かっている」と、米カリフォルニア大学バークレー校経済学部のバリー・アイケングリーン教授は言う。
バーナンキ議長の選択が簡単なものだと言っているわけではない。
高インフレが定着すれば、その鎮圧のため、いずれさらに高い金利で対処する必要に迫られることも十分承知している。
ポール・ボルカー元議長の時代には、1970年代のインフレ熱の沈静化に翻弄された。
19%という高水準にまでFF金利を引き上げざるを得ず、1980〜1982年まで2度の景気後退も経験することになった。
さらに証券化商品の登場など金融システムの複雑化で、FRBの対応は難しくなっている。
金融市況がつかみにくくなっているのだ。ましてや、政策的影響力を発揮するのはさらに困難である。
つまり、どんな事態も起こり得るということであり、「中央銀行はある意味、出たとこ勝負の対処を行っていくことになる」とアイケングリーン氏は言う。
○利下げで指導力を誇示
バーナンキ議長体制になってから、FRBは斬新な手法で金融システムに十分な資金を送り込んでいる。
貸付期間の長期化に応じ、受け入れ担保の要件(発行機関及び種類)も緩和した。
FF金利は1月単月で1.25ポイントも引き下げた。
現在の金融市況は悪化しているが、FRBのこうした新しい柔軟な措置がなければ、事態はもっと悪くなっていただろう。
だが金利を引き下げるにつれ、バーナンキ議長はさらに大きな抵抗に直面するだろう。
ダラス連銀のリチャード・W・フィッシャー総裁は、1月30日の利下げで唯一の反対票を投じた。
同総裁は2月7日のメキシコシティーでの講演で低利融資資金を上質のテキーラに例え、魅力的だが慣れすぎると危険だと評した。
問題は、バーナンキ議長が利下げ反対派の意見に、どの程度まで同調するかだ。
同議長はかつて、「1929年に世界経済を最も大きく左右する米国の中央銀行が指導力と見識を欠いていた」ことを大恐慌の一因に挙げた。
今もこの考えが変わっていないのなら、必要な限り利下げを続け、景気浮揚の道を率先して示す決断を下すかもしれない。
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