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株式市場での強弱感が対立した状況が持続している。日経平均株価は1月22日に12,573円まで下落したのち、2月4日に13,859円まで反発した。2月8日に13,017円に反落したのち、2月4日の13,859円と2月8日の13,017円との間でもみ合い推移を示したが、2月25日に13,859円の上値抵抗ラインを上方に突破し、2月27日には14,031円まで上昇した。 しかし、その後NYダウの下落に連動して日経平均株価も反落し、3月3日に2月8日の13,017円を下回り、12,992円まで下落した。日経平均株価がこのまま下落し続けて1月22日の12,573円を下回ると、2月27日の14,031円を起点に、昨年7月9日以来、4度目の株価下落局面を迎えることになる。 1月20日付本コラムに記述したように、日本の株価は米国株価との強い連動性を維持しており、NYダウが2月1日の12,743ドルの上値抵抗ラインを上回ることができずに2月27日の12,694ドルをピークに反落したことを受けて、日経平均株価も2月27日をピークに反落した。 当面の焦点はNYダウが12,182ドルと12,743ドルのレンジを上方に抜けるか、下方に抜けるかである。米国住宅価格下落に連動する不動産金融不況の進行に対して、財政金融政策のマクロ経済政策と、金融機関の資本不足への対応策が順次示されており、米国経済金融の実態悪化と政策対応に伴う事態改善に対する期待が対立し、株式市場の強弱感が対立している。 2月26日に発表の昨年12月のS&Pケース・シラー住宅価格指数では、米国主要10都市の1戸建て住宅価格指数が前年同月比8.9%下落した。過去最大の下落率となった昨年11月の8.4%下落を上回る下落率が示された。住宅価格下落-景気悪化-金融不安の悪循環は現時点ではまだ断ち切られていない。大手金融機関のサブプライム関連巨大損失が追加的に発表され続けており、モノラインと呼ばれる金融保証会社の格付け引下げ懸念も強く残存している。 3月5日(水)には2月ISM非製造業景気指数および地区連銀経済報告(ベージュブック)、7日(金)には2月雇用統計、13日(木)には2月小売売上高、14日(金)には3月ミシガン大消費者信頼感指数が発表される。米国経済の減速の程度が注目される。 バーナンキFRB議長は2月27日に下院金融サービス委員会で証言し、金融政策について「成長を支え、下振れリスクに適切に対応するため、必要ならば時機を逃さず行動する」と発言した。3月18日の次回FOMCでの追加利下げの方針が明確に示されている。 バーナンキFRB議長は2月28日の上院銀行委員会での証言で、住宅価格下落に伴う損失拡大により中小金融機関の破たんが表面化する可能性を明言した。NY株価はバーナンキ発言を受けて下落したが、バーナンキ議長は金融市場の現状を市場に正確に伝えようとしたのだと考えられる。 日本円に対しても米ドルは下落し、円は1ドル=102円台に上昇した。米ドルの総合的な価値を示す「実効レート」は過去最低水準に下落しており、米国経済の先行き不透明感の強まりが米ドルの全面的な下落を招いた。 日本の株価変動を考察する際には、米国株式市場動向を注視することがまず必要である。日本市場が米国市場に連動する状況は当面持続する可能性が高い。 2月29日に政府、与党が衆議院での2008年度予算案と租税特別措置法案を強行採決して可決したことを受けて、国会審議が中断している。衆参議長あっせんで、法案採決までに十分な審議が求められていたが、政府与党は議長あっせんを無視して強硬行動を示した。野党が反発するのは当然である。 政府と民主党との間に密約が存在するとの見方が存在している。ガソリン税の上乗せ税率の期限延長と武藤氏の総裁昇格を最終的には民主党が容認するとの見方である。自民党と民主党との大連立構想が依然として消滅しておらず、この文脈上で、福田首相と小沢一郎民主党代表との間で密約が存在するとの見方である。 政府、自民党は武藤氏の日銀総裁昇格に反対する民主党の主張について、日銀総裁人事への政治の介入、株式市場、為替市場の混乱を助長する行動と批判するが、この批判はまったく的外れである。日銀総裁人事に関連してもっとも重要な事項は、「中央銀行の独立性確保」である。日本は第2次世界大戦に際して、財政当局が中央銀行を支配下に置いたために、戦後の悲惨なハイパーインフレを招来した重大な歴史を背負っている。 「日本の構造改革」が現代日本の重要課題になっているが、改革の真のターゲットは財務省を中核とする官僚主権構造なのである。小泉政権が標榜した改革は、郵政、建設のみを標的とし、財務省利権については温存、強化したもので、「えせ改革」としか呼ぶことのできぬものであった。自民党清和政策研究会(旧岸派、旧福田派)の牙城である財務省、警察・検察利権の増大を図り、平成研究会(旧田中派、旧橋本派)の牙城であった建設、郵政利権を叩き潰したのが小泉改革の実相である。詳しくは拙著『知られざる真実-勾留地にて-』(イプシロン出版企画、2007年)を参照いただきたい。 日本経済や株式市場の先行きに対する警戒感が強まっているのであれば、政府与党は経済安定化に向けての具体的な施策を示す必要がある。景気抑制的な緊縮予算が国会で可決されても、経済の悪化要因にはなっても経済支援要因にはならない。政府与党が日本経済の動向を本当に憂慮するのであれば、ガソリン税の上乗せ税率適用期間を再延長する増税法案を撤回すべきである。もっとも有効な景気支持政策になる。 正念場を迎えているのは民主党である。民主党が昨年7月の参議院選挙で負託を受けた多数の有権者の意向を厳粛に受け止めて、真の構造改革を実現するために、次期総選挙での政権奪取に向けての王道を歩むのか、自民党との談合政治に陥り、自民党との利権互助会組織に堕するか、その真価が問われている。 武藤氏の日銀総裁昇格を排することは、日本経済100年の計に適う正当性を備えた施策である。財務省、政府、与党は支配下にあるマスメディアを総動員し、また、米国の支援をも確保して、武藤氏の昇格実現に向けて総力を傾けると考えられるが、民主党は道を誤ることなく正しい判断を下すべきである。われわれは日本再生、日本復興の可否に関わる重大局面に対面している。 2008年3月5日 |