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後藤達也(08/2/26)
最悪期を脱したのだろうか。日経平均株価は26日の取引時間中、約1カ月半ぶりに1万4000円台を回復。ゆっくりと下値を切り上げてきた。米金融保証会社(モノライン)の救済問題が解決に向けて前進しているほか、欧米金融機関への損失懸念もひところに比べて薄れてきている。米景気など不安定要因はなおも残るが、市場を取り巻く環境は全くの視界不良から脱しつつある。
グラフの「VIX指数」と「TEDスプレッド(ドル)」をみてほしい。
http://veritas.nikkei.co.jp/scramble/index.aspx?id=MS3Z2600D%2026022008
前者は米国株の先行きの不安定さを表す予測指数で、後者は銀行同士がドル建てで資金融通する際の信用を測る指標だ。1月下旬まで高水準にあった両指数は、2月に入り低下傾向にある。各国中銀の協調資金供給などを背景に市場参加者の疑心暗鬼が和らいできたことを示している。国内においても、長期金利は26 日、約2カ月ぶりに1.5%台に乗せ、短期金融市場での日銀利下げ観測はほぼ消失。国内外の様々な市場で極端な動きは収束してきた。
先週、欧州に出張したクレディ・スイス証券の市川真一チーフ・ストラテジストによると、欧州の投資家は日本株のウエートを引き上げようとしているという。(1)日本株はかなりの悪材料を織り込み、相対的に下振れリスクが小さい(2)円高傾向が続く可能性に着目している(3)アンダーウエートにしているため、何かをきっかけに日本株が急上昇した場合、追いつくことが難しい――などがその理由。5月ごろにウエート引き上げを狙っている投資家が多いようだ。欧州投資家は1月に日本株を6584億円売り越した「売りの主役」。そんな彼らにもスタンスの変化が出始めている。
昨年来の金融市場の動乱は、「21世紀型危機」とも呼ばれる。世界規模での複雑な信用収縮という新種の金融不安が根底にあったために将来の見通しが利きにくく、世界中の投資家は株式などリスク資産の圧縮を急いだ。1月に日本株がアジア株や円相場との連動性を強めたのも、他市場を横にらみし、状況をうかがい知ろうとする不安心理の表れだろう。しかし、こうした連動性は最近弱まってきた。モノライン問題を巡っては、欧米金融機関の救済協議が進むなど前向きなニュースが小出しに出てきている。日替わりで悪材料が飛び出し、不安心理に拍車をかけていた1月とは風景は異なることを、各種市場指標が物語る。
楽観論を語るつもりはない。米景気後退懸念を高める経済指標の発表が相次いでおり、世界経済の先行きも予断を許さない。グラフの「アイ・トラックス・ヨーロッパ」にみられるように、企業への信用リスクは高まっており、今後の企業活動を鈍らせる恐れもある。さらにLBO(借り入れで資金量を増やした買収)の低迷や住宅ローン価格の下落が続くなど、クレジット市場の関係者の声は必ずしも明るくない。火種は残り、強弱材料が混在しているというのが現状だ。
だが、昨年8月の相場急落から半年を経て、おぼろげながら混乱の輪郭が浮かび上がってきた。着地点が全くみえないがゆえに、バリュエーションによる投資評価が機能しなかった時期は峠を越えた。疑心暗鬼が支配する局面から、世界経済や企業業績の動向を丹念に分析していく局面へ――。足元の市場データは潮目の変化を映し出しているようにみえる。