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「“無尽蔵の労働力”はもはや幻想」---蔡 ファン (日経NB)
http://www.asyura2.com/08/hasan55/msg/360.html
投稿者 梵天 日時 2008 年 2 月 25 日 18:48:50: 5Wg35UoGiwUNk
 

これも少々古いが・・・・重要と思われるのでアップしておきます。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20071001/136474/

「“無尽蔵の労働力”はもはや幻想」---蔡 ファン (日経NB)

中国社会科学院 人口労働経済研究所 所長
「2010年 日中逆転」碩学が語る(3)2007年10月3日  田原 真司

 農村部に無尽蔵に近い人手があり、賃金は長期にわたって上がらないと言われていた中国。
そんな中、労働経済学の権威である蔡所長は「余剰労働力は枯渇に近づいており、今後は賃金が上昇する」といち早く警告を発した。
「ルイスの転換点」(2ページ最後の囲み参照)を迎える中国経済は、どんな変化を見せるのか。
(聞き手は北京支局 田原 真司)

 ―― 昨年頃から、「中国の労働力は過剰から不足の時代に入った」とする議論が大きな波紋を呼んでいます。
蔡所長はこの問題をいち早く指摘しました。


蔡 ファン(以下 蔡)
 1980年代から最近に至るまで、中国の農村部にはおよそ1億5000万〜2億人の余剰労働力があると言われ続けてきました。
ところが2004年、出稼ぎ労働者の多い広東省の珠江デルタ地域で「民工荒」と呼ばれる一般労働力の不足現象が起こりました。

 この時、私はある疑問に突き当たりました。経済がこれほど急成長しているのに、余剰労働力はそんなに残っているのだろうかと。
例えば、農村部の地元企業だけで1億8000万人を雇用しています。都市部への出稼ぎ労働者は1億3000万人に達しています。
さらに、中国の食料生産を支えるために、農業になお1億8000万人が必要とされます。

 そこで、最も保守的な条件で独自に推計してみたところ、農村部には現在も約1億人の余剰労働力があるという結果が出ました。
しかし年齢構成を見ると、40代よりも上が半分以上を占めていました。

企業が求めている比較的若い労働力は、もはや豊富とは言えないのです。

 実際、人手不足は珠江デルタ地域から上海市周辺の長江デルタ地域に広がり、最近では東北部や中部地域の主要都市でも見られます。

 中国の生産年齢人口(15〜59歳)は現在も増加していますが、2013年頃にはピークを迎え、緩やかな減少に転じます。
農村部の余剰労働力の払底に加え、労働力全体の供給量も、もうそれほど増える余地はありません。

例えば、沿海部の工場では18〜20歳の女性を雇用したがる傾向がありますが、この年齢層の人口は既に減少し始めています。
こうしたことから見て、労働力の供給に問題が発生していることは間違いありません。


■国際競争力の比較優位は持続

 ――本格的な労働力不足の時代に入ったとすれば、今後は賃金が上昇し、中国の国際競争力が低下する懸念はありませんか。


 中国では長年、企業が人を採用したければいくらでも採用できると考えられてきました。
 しかし労働経済学で言う「ルイスの転換点」(2ページ最後の囲み参照)を迎えると、人々の考え方は変わります。
 今後は、労働者はよりよい賃金や福利厚生を求めるようになります。これは大きな変化です。
 要求に応えられない企業は、事業に必要な人手を集めることができず競争力を失うでしょう。

 とはいえ、労働力が不足し始めたと言っても、労働力の絶対量の多さは変わりありません。
 中国は依然として世界で最も労働力が豊富な国なのです。生産年齢人口の減少は穏やかであり、総人口に占める比率は2020年でも60%と見込まれています。
 これは現在の多くの先進国よりも高い水準です。

 最近の人手不足には制度的な要因もあります。
 農村部からの出稼ぎ労働者は、都市部で自由に仕事を探すことはできますが、医療や子供の教育など社会保障や公共サービスの多くを受けることができません。
 ですから、若くて元気なうちに稼げるだけ稼いで、40代になったら故郷に戻ろうと考えます。
 このような制度的な要因を取り除けば、40代以上の経験豊富な労働力の供給を増やすことができます。

 また、中国の賃金が今の2〜3倍になったとしても、まだ米国や日本の数分の1の水準です。
 仮に賃金上昇が続いても、国際的に見れば安いという比較優位は相当長く維持できると思います。

 この先も中国の人口は巨大です。中国人の収入が増えれば、国内消費が伸びていきます。
 外資系企業にとって安価な労働力の確保は大切ですが、中国の市場を押さえることはさらに重要かもしれません。


■人民元の大幅な切り上げは不要

 ―― 中国政府は雇用吸収力の大きい労働集約型の輸出産業を保護するため、人民元の対ドルレートを低めに維持してきました。
 完全雇用に近づけば、人民元切り上げのペースを速めることもできるのでは。


 人民元が急激に切り上がると、輸出産業が打撃を受けるのは間違いありません。
 それは雇用問題にも悪影響を及ぼし、社会の安定を損ないます。
 しかし中国経済が引き続き成長し、労働生産性が向上するのに伴い、緩やかな人民元切り上げは受け入れられるでしょう。

 中国の膨大な貿易黒字は欧米や日本から批判を受けていますが、急速な黒字拡大の背景には2つの「テコ」があります。
 1つ目は安い人民元。2つ目は安価な労働力です。

 人民元の為替レートは、「中国政府が人為的に操作している」と諸外国から批判されています。
 確かに一理はあるとは思いますが、その意味ではドルや円も「安すぎる」「高すぎる」と常に批判されています。
 本当に適正なレートはどのくらいなのか、誰も正確なことは言えません。

 一方、2つ目のテコである安い労働力は事実です。
 このテコは既に変化を始めています。労働力の不足で、賃金は既に上昇を始めています。
 今年になってインフレ率も高まってきました。中国は賃金と物価が同時に上昇する新しい時代に突入しつつあり、これは経済成長に有利に働きます。

 むしろ、2つのテコが同時に上がると、中国はその衝撃に耐えられず景気が失速しかねません。
 それは他国にとっても利益にならないはずです。
 反対に2つのテコがどちらも働かなければ、貿易黒字はますます拡大し、諸外国の不興を買って人民元切り上げを余儀なくされるでしょう。
 しかし賃金は既に上昇中であり、人民元の大幅な切り上げは必要ないと思います。


■賃金上昇が環境問題解決の契機に

 ―― 賃金上昇が経済成長の重しにならないためには、労働生産性の向上が不可欠です。


  中国は人的資本を大量投入することで高度成長を実現しました。
  しかし、経済の成長は必ずしも労働力によるものだけではありません。
  例えば、日本は(1950年代の)余剰労働力が豊富な時期にも急成長しましたが、60年代以降に労働力が不足するようになっても成長を続け、90年代に入ってからようやく成長が止まりました。

 重要なのは「ルイスの転換点」を過ぎても(生産性の向上を通じて)経済成長を続けられるか否かです。
 自分の労働生産性を高めれば賃金をアップできるという条件なら、労働者は受け入れるはずです。
 日本やアジアNIES(新興工業経済地域)はそれに成功しました。中国にも可能なはずです。

 生産性の向上を通じた経済成長は、我々学者や中央政府が一方的に主張しても実現するものではありません。
 それは地方政府、企業、労働者そして一般の人々の理解と協力が必要です。

 例えば、ある工場が環境汚染を引き起こした場合、それは労働者にとって耐え難いはずですが、労働力が余っている時代は賃金がもらえれば文句は言えませんでした。
 しかし「ルイスの転換点」を過ぎて賃金が上がり始めれば、労働者はようやく自分の生活の質を重視できるようになり、不満を訴えます。
 企業の経営者はそれを無視できなくなり、工場の移転を考えるでしょう。
 しかし次は、産業の流出を恐れる地方政府が引き留めにかかります。
 経営者は、工場を持続的に発展させるためには資金を投じて浄化処理を施すべきだと総合的に判断するかもしれません。

 この段階に至れば、中央政府、地方政府、企業、労働者のベクトルが(環境にやさしい経営という方向に)一致します。

 つまり、「ルイスの転換点」は中国の環境問題を解決する要素の1つでもあるのです。
 環境汚染の防止は社会の要求次第であり、それがなければ企業がこの問題に真剣に取り組むことはまずありません。
 政府は政策や規制を打ち出すことはできますが、徹底させることは困難です。しかし、一般の人々や企業の経営者が環境問題を無視できなくなれば、解決に向けて本格的に動き出すはずです。
 この変化は比較的速く進むと見ています。


【ルイスの転換点】
 1979年にノーベル経済学賞を受賞したイギリスの開発経済学者、アーサー・ルイスが提唱した学説。
 発展途上国の多くでは、農業部門に大量の余剰労働力が存在し、工業化に伴う経済発展とともに工業部門に吸収されていく。
 この余剰労働力がなくなるまでは、賃金は労働者の生存に必要最低限の水準から上がらない。
 しかし余剰労働力が枯渇すると、工業部門は農業部門から雇用を奪う形で労働力を確保しなければならなくなるため、賃金が上昇し始める。
 このタイミングを「ルイスの転換点」と呼ぶ。

 蔡 ファン(ツァイ・ファン)氏
(ファンは日へんに方と書く)
中国社会科学院人口労働経済研究所所長。1956年9月北京市生まれ、51歳。文化大革命末期の76〜78年に農村部への下放を経験した後、中国人民大学に入学し農業経済を専攻。82年同大学を卒業し、中央政府直属の研究機関である中国社会科学院の修士課程に進む。85年経済学修士号、89年経済学博士号を取得。93年から中国社会科学院研究員(教授に相当)。98年から現職。

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 この記事を読む限りではすでに中国の余剰労働力の半分以上は平均年齢が40歳を超えているとされる。

 これは人口ボーナスの終了時期がそんなに先ではない事を意味すると思うが・・・・・・どうなるのでしょうか。

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