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【一見インフレの現在の状況は、デフレである!】----- 森永 卓郎 ---- (SAFETY JAPAN)
経済アナリスト 森永 卓郎氏 2008年2月25日
先日、ドイツ国営テレビの記者と話をする機会があった。
そこで話題になったのは、世の中の大半が、インフレとデフレの判断について誤解をしているという点である。
私は以前から「デフレだから金融緩和をしなくてはいけない」と主張し続けている。
ところが、周囲の人たちは「でも消費者物価は上がっているじゃないですか。
これはインフレでしょう」と笑う。
確かに、1月25日に発表された昨年12月の全国消費者物価指数は、前年同月比で0.8%も上昇した。
しかし、インフレ・デフレの判断は消費者物価で行なってはならないのだ。
なぜかといえば、現在の物価上昇は、需給が逼迫したことによる上昇ではないからである。
けっして景気が過熱しているわけではない。
ただ単に、原油や穀物などの輸入物価が上昇したことによるコストアップに過ぎないのだ。
むしろ、いま起こっているのは付加価値の圧迫である。
輸入物価の上昇を、製品価格に転嫁できないのが問題なのだ。
では、インフレかデフレかは、どう判断すればよいのか。そして、現在の日本の経済状況に対して、どういう対策をとれば有効なのかを検討していきたい。
■インフレかデフレかはGDPデフレーターで判断せよ
景気が過熱して物価が上昇しているかどうかは、消費者物価ではなく、GDPデフレーターで判断しなければならない。
GDPデフレーターとは、「付加価値の物価」を示す指標である。
需給が逼迫して物価が上がるときは、付加価値の物価が上がるからだ。
この付加価値の物価(GDPデフレーター)は、次のような式で算出する。
GDPデフレーター = 名目GDP/実質GDP --------(1)
名目GDPは、国が生み出した付加価値の総額のこと。
実質GDPは、名目GDPから物価の変動分を差し引いて、基準年(2000年)の価値で評価した数字だ。
いわば、名目GDPは時価での計算、実質GDPは基準年で計算したものといっていいだろう。
名目GDPが増えても、単に物価が上昇しただけならば、経済規模は拡大したことにはならない。
その場合、実質GDPは変わらないことになる。
そして、名目GDPは、次の式で算出される。
名目GDP = 消費 + 投資 + 輸入 − 輸出 --------(2)
つまり、国や民間が消費した金額に、設備投資、住宅投資、在庫投資などの投資にまわした金額を加える。
そこに輸出額を加えて、そこから輸入額を引いたものがGDPというわけだ。
いま、実質GDPが変わらないと仮定しよう。
つまり、経済規模が本質的にまったく変わらないとするわけだ。そこで、「輸入」の物価が上がると何が起こるか。
(1)の式の分母は変わらないが、分子が変わることになる。
分子である名目GDPの内訳は(2)の式を見ていただきたい。
単に「輸入」物価が上がっただけならば、(2)の式の左辺である名目GDPは減るはずだ。
だが、輸入品である原材料の価格が上がれば、製品価格が上がるのは当然である。
現に、以前の石油ショックの際には、輸入物価の上昇が製品価格に転嫁され、「消費」「投資」「輸出」も上昇したのである。
そして、「消費」「投資」「輸出」の上昇の和が、「輸入」の上昇よりも大きくなったために、(2)の式の左辺である名目GDPは増えていった。
それを(1)に当てはめてみると、右辺の分子が大きくなるわけだから、GDPデフレーターは大きくなり、インフレになっていることを示すわけだ。
■GDPデフレーターは急速なデフレ進行を示している
ところが、現在起きている事態は、以前の石油ショック時とは大きく異なる。
「輸入」の額が増えているにもかかわらず、「消費」「投資」「輸出」が増えていないのだ。
つまり、原材料価格の上昇が、製品価格に転嫁できていないのである。
その理由は「第107回 食料品値上げ、狂乱物価より心配なこと」で示したように、サラリーマンの可処分所得が減ったために、小売店が値上げによる客離れを恐れているからだ。
結局、(2)の式で、「消費」「投資」「輸出」の上昇の和が、「輸入」の上昇よりも少ないために、名目GDPは減少してしまっているのだ。
その結果、(1)の式で分子が小さくなってしまったために、GDPデフレーターはマイナスになっている。
では、実際のGDPデフレーターの数字はどうなっているか。
石油ショック後の1974年には、輸入物価は64.1%上昇したが、GDPデフレータも20.8%上昇した。
これは、消費や投資の額が輸入物価にも増して上昇したことを意味している。
まさにインフレである。こうした状況では、金融引き締めが必要なのはいうまでもない。
ところが、昨年7〜9月期を見ると、輸入物価は5%上昇しているが、GDPデフレータは逆に0.4%の下落となっている。
つまり、消費や投資の額は増えていないのだ。
10〜12月期のGDPデフレータについてはまだ発表はないが、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによれば、1.0%の下落と予測している。
下げ幅は拡大するというわけだ。さらに最新の予測では、来年度のGDPデフレーターは2%程度の下落になるのではないかという。
これは、インフレどころの話ではない。急速なデフレの進行なのだ。
■いま必要なのは、金融引き締めではなく金融緩和
いま起こっているのは、急速な物価の下落なのである。デフレの復活なのだ。
ところが、目の前では消費者物価が上がっているので、多くの人はインフレが起きていると勘違いしている。
そこが大きなトリックになっている。
たまたま原油や穀物価格の上昇という、需給関係とは関係ないところでの物価上昇が起きたことによって、デフレが覆い隠されてしまったのだ。
それにしても、これほどの勢いでデフレが進行しているのにもかかわらず、それを指摘する人がいないとはどういうことか。
それどころか、「インフレだから利上げしろ」という愚かなことを言う人さえいる。
この不況下で金利をあげたら、中小企業は破滅である。去年の利上げによって、ただでさえ中小企業の倒産が増えているということを忘れてはならない。
むしろ、金利は下げなくてはならない状況なのである。
いまこそ経済学の根本に立ち返り、消費者物価が急上昇しているなかで、金利を下げなくてはならないという状況をよく認識していただきたい。
日銀がいう「まともな金利」にしたければ、いったん金利を下げるのが近道である。
その上で、日本経済が回復したところで金利を上げればいいのである。
このワンクッションが必要なのだが、それがわからないから、ただ金融引き締めをすればいいと考えている人が多い。
確かに、私たちの身近な生活にとっては、消費者物価というのは大切な指標であることは間違いない。
金融緩和をすれば、一時的に物価は上がるだろう。
しかし、原油価格はまもなく下落していく−−少なくとも頭打ちになるだろうから、それによる物価下落が起きるはずだ。消費者物価上昇に惑わされず、日本はいまこそ金融緩和をすべきタイミングなのだ。
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(コメント)
少なくともFRBのバーナンキは大学で教鞭をとっていただけありマクロ理論に精通していると思います。
一部でアメリカのスタグフレーションを心配する向きもありますが、アメリカの金融政策は私から見ればまさにツボを得ていると思います。
森永氏の解説を現在の日本とアメリカの経済に当てはめて考えて見ると良く分かります。レベルが違い過ぎます。
ヤッパね〜これじゃあニポンは勝てませんな・・・・・・・・