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合理的な説明は難しい新銀行東京への追加出資(KlugView)
2008/02/20(水)19:58
東京都は、1千億円を出資して設立した新銀行東京に対し、400億円を追加出資する議案を都議会に提出しました。また、これに先立ち、新銀行東京は、東京都による400億円の追加出資を柱とする再建計画を発表し、店舗を現在の6店舗から1店舗に集約するとともに、2012年3月末までに人員を4分の1の120人まで削減することを表明しています。
新銀行東京は、2003年、石原都知事が、資金調達に悩む中小企業を救済することを理念とした新銀行プランにもとづき、2004年4月に設立された銀行です。設立のきっかけが、石原都知事の発案によるものということもあり、東京都は新銀行東京の発行済み株式の84.22%を保有する圧倒的な筆頭株主となっています。
ただ新銀行東京の経営は設立当初から非常に苦しい状況が続いています。新銀行東京は、これまで2度の決算を迎えていますが、開業初年度の最終損失が209億円、次年度の最終損失が547億円となり、今年度中間期(2007年9月)までの累積損失は936億円となっています。またこれにともない、米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は、新銀行東京の長期格付けをBBB+と、投資適格とされる10段階のうち下から3番目の位置まで格付けを下げています。
新銀行東京の経営が苦しくなった原因の1つに融資審査ノウハウの不足が指摘されています。一般に、銀行が企業に融資をするには、融資先企業の返済能力など財務状況をもとに融資条件が決められます。しかし、新銀行東京は、東京都という公的組織が中心となって設立されたため、企業融資に関する経験・知識を有する人材が不足していたようです。また、新銀行東京の設立趣旨が「中小企業の救済」にあったため、どうしても融資判断が甘めになったようです。その結果、新銀行東京による融資の多くは、不良債権と化し、多額の貸し倒れ損失が発生してしまいました。
こうした状況を打開すべく、石原都知事は、新銀行東京にリストラを迫りながらも400億円の追加出資を決断したようです。ただ、石原都知事に対しては申し訳ありませんが、仮に400億円の追加出資が実施されたとしても、新銀行東京の先行きは厳しいままと思われます。
日本銀行の貸出約定平均金利をみると、中小企業を主要顧客とする地方銀行や第二地方銀行の貸出平均金利は昨年11月より低下しています。日本の金利は依然として低い状態が続いているほか、中小企業向け融資をメインとする小規模の銀行の数が相対的に多いこともあって、地方銀行や第二地方銀行が貸出金利を引き上げるのは、他行との競争もあって難しい状況です。こうした状況では、新銀行東京の融資業務の採算性が急速に改善することは期待しにくいと言えます。
また、政府による中小企業政策も、新銀行東京にとって逆風です。マスコミ報道によると、政府は中小企業向け資金繰り支援対策の原案をまとめたようです。原案では、中小零細企業を中心に年度末の資金繰りを円滑にするため、国民生活金融公庫(政府系金融機関)による保証人不要の融資限度額を2000万円から4800万円に引き上げる内容が盛り込まれています。新銀行東京のライバルといえる政府系金融機関からの融資限度額が増えるのであれば、中小企業は、あえて新銀行東京から融資を受けなくても、政府系金融機関からの融資を増やすことで資金需要を満たすことができるようになります。
石原都知事は、追加出資の議案を提出した都議会後、報道陣に対しは「つぶすわけにはいかない。都民にもっと迷惑をかける」、「債務超過になって店じまいになると1000億円以上いる。放置してペイオフになったら日本全体に影響を与える」と語っています。ただ、追加出資後の新銀行東京に明るい姿が期待できない状況の下、単に「つぶすわけにはいかない」という理由のみでは、追加出資の意義を合理的に説明することは非常に難しいのでしょう。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
新銀行東京の累積損失はどれくらい?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
936億円(2007年9月末現在)
http://www.gci-klug.jp/klugview/08/02/20/post_5130.php