★阿修羅♪ > 国家破産55 > 202.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
http://www.uekusa-tri.co.jp/column/index.html
2月9日、東京でG7(7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)が開催された。米国のサブプライムローン問題に端を発するグローバルな金融市場の不安定性に対して、具体的な対応が示されるかが注目されたが、具体策は示されなかった。 G7は共同声明で、(1)経済の安定と成長を確保するため、個別にあるいは共同して適切な行動をとる、(2)金融機関が金融商品の損失を認識し、資本増強を講じることは市場機能回復に重要、(3)為替レートは経済の基礎的条件を反映すべきだとの考えを再確認。人民元の実効為替レートのより速いペースでの上昇を促す、ことが示された。 NYダウは、昨年7月9日に14,000ドルに到達して以来、3度の下落局面を経験してきた。1度目が昨年7月9日から8月16日までで、ダウは1155ドル、8.3%下落した。2度目は10月9日の14,164ドルから11月26日の12,743ドルまでで、1421ドル、10.0%下落した。3度目は12月10日の13,727ドルから本年1月22日の11,971ドルまでで、1756ドル、12.8%下落した。 3度目の下落はFRBが12月11日の利下げ幅を0.25%にとどめられたところから始動した。年末から1月中旬にかけて、米国金融機関の追加巨額損失が発表され、さらに金融保証会社の資本不足に対する懸念と米国経済失速懸念が広がり、株価が急落した。 米国政策当局が財政金融政策を総動員したことで、NYダウは反発したが、先行き警戒感は依然として非常に強い。米国経済混迷の原因は不動産価格の下落にある。1月29日に発表された昨年11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数によると、全米主要10都市の1戸建て住宅価格は前年同月比8.4%下落した。16年ぶりに過去最大を記録した10月の下落率6.7%を大幅に上回る下落率を記録した。米国不動産価格の下落が加速している。 1990年代以降の日本経済は、資産価格下落-金融不安増大-景気悪化の悪循環を断ち切れずに、奈落の底に落ちて行った。公的資金を活用して信用不安を断ち切るための制度整備、環境整備が遅れるとともに、景気悪化を回避する経済政策路線が右往左往したことが、混迷拡大、長期化の理由だった。 マクロ経済政策では1997年と2001年に致命的な政策失敗を演じた。回復過程にある経済を超緊縮経済政策で破壊してしまったのだ。経済政策の破綻の終着点が2003年5月の「りそな銀行危機」だった。小泉政権は公的資金でりそな銀行を救済して金融恐慌を回避したが、金融市場の「倫理の全面崩壊」を生み出してしまった。 最悪の状況に向かうリスクは大幅に軽減されているが、完璧な政策対応により、事態悪化を最小限にとどめる明確な見通しはまだ見えてきていない。3つの課題が存在している。(1)米国政策当局が財政金融政策をもっとも有効に活用すること、(2)米国当局が金融機関の資本不足不安に対して明確な安心感を与えること、(3)マクロ経済政策の協調をグローバルに広げること、の3つだ。 サブプライムローン問題による大手金融機関および金融保証会社の資本不足懸念に対する米国政策当局の明確なコミットメントが求められているが、現状ではまだ示されていない。カナダや英国は米国に連動して利下げに着手しているが、ECB(欧州中央銀行)、オーストラリア中銀は利上げの可能性をまだ否定していない。日本銀行は利上げの可能性を排除したが、利下げには現段階では慎重である。 日本の株式市場の波動は昨年来、米国に完全に連動している。ただ、株価下落率は米国をはるかに上回っている。NYダウの下落が昨年10月9日の14,164ドルから本年1月22日の11,971ドルまでの2193ドル、15.5%であるのに対し、日経平均株価は昨年7月9日の18,261円から本年1月22日の12,573円まで5688円、31.1%下落した。日本の株価下落率は米国の約2倍に達している。 日本の株価下落率が突出して高いのは、福田政権が日本経済の成長持続を支える政策スタンスをまったく示していないからである。自民党税制調査会副会長の茂木敏充衆議院議員は2月10日のテレビ番組で、「日本の株価が下がっているのは、日本経済、日本企業そのものが『サブプライム』だからなのだ」と断言した。 福田政権は財務省の近視眼的緊縮財政政策運営路線に何らの思慮もなく乗っている。財務省の近視眼的緊縮財政政策運営路線こそ、日本経済の「失われた15年」をもたらした主犯である。1997年、2001年に続き、3度目の政策不況に福田政権が日本経済を誘導するリスクが高まっている。 財務省、政権、与党に完全に隷属している大手マスメディアの大半は、武藤敏郎氏の日銀総裁就任を、全力をあげて支援している。日銀関係者のなかには、日銀が従来同様、日銀総裁ポストを財務省と交互に獲得できるのなら、今回は武藤氏昇格を容認しようとの「利害と打算」で問題を考える輩も存在する。大手メディアはこうした輩の声を大きく取り上げ、議論を誘導しようとしている。 自民党と民主党とが、「保守」と「リベラル」の軸によって大規模に再編されるなら、それは非常に分かりやすい政界再編になる。政界再編の胎動を感じさせる変化が蠢き始めているのは事実であるが、現状では明確な展望は開けていない。 ブッシュ政権、福田政権の経済問題への対応能力不足から、経済、金融の不安定性は長期化するリスクが高まっている。だが、一方で、事態打開のために何が必要であるかはかなり明確になりつつある。不安定性が持続するとしても、最終的には必要な措置が取られる可能性が高いように思われる。 2008年2月12日 |