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http://www.news.janjan.jp/area/0902/0902117249/1.php
低レベル放射性廃棄物もお断わり（高知県・大月町）
小倉文三2009/02/13
東京や大阪に火力発電所は多いが、原子力発電所は皆無である。事故が起こったとき、放射能が危険すぎるからである。放射性廃棄物の処分場についても、国は同じ理由で地方に押し付けようとしている。地方にはカネに目のくらむ首長が出てくることもあるから、拒否条例を作っておいた方がいい。一寸の虫にも五分の魂がある。
また、端っこが狙われた
２年前、高知県の東の端っこの東洋町に高レベル放射性廃棄物が持ち込まれようとしました。時の町長が、独断で「応募」したのです。補助金は、最初の２年間だけでも２０億でした。「応募」後に推進派と反対派の対立が起こり、殺気立った人たちも乗り込んできました。結局、町長選挙で決着をつけるという流れとなり、反対派の澤山保太郎氏が圧勝し、一件落着となりました。当時、マスコミをにぎわしたので、記憶している人も多いと思います。
今度は、西の端っこの大月町に低レベル放射性廃棄物が持ち込まれそうな雲行きになりました。昨年１２月に誘致の陳情書を提出した木崎正美さんによると「低レベルなら危険性は低く、心配はない」ということですが、はたして心配はないのでしょうか？ 木崎さんは、今後３００年間生きておられるのでしょうか？
まだ安心はできない
当然予想されたことですが、今回も科学的な思考のできる人たちが黙ってはいませんでした。津野町や東洋町で、高レベル放射性廃棄物を阻止したネットワークが再び機能し始めました。隣接する土佐清水市の議会は、「漁業が重要な産業で、風評被害が懸念される」として、調査受け入れに反対する文書を決議しました。また、県知事も自然を生かした産業を伸ばす方向で慎重に議論するよう求めました。短期間の内に、広範な反対世論が形成されていきました。
小出裕章氏（京都大学・原子炉実験所・助教）
そして、反対派は、京都大学・原子炉研究所の小出裕章氏を招き、２月７日に講演会を開く計画を立てました。しかし、直前の３日には、町議会の産業建設委員会が全員一致で、翌４日には、町議会が全員一致で陳情書を「不採択」としました。それで、（よかった、よかった、一件落着）と思った人も多かったようです。
しかし、私は、この「不採択」には裏があるのではないと考えました。私は、これは、小出氏の講演会に人が集まらないようにするための推進派の演出と考えました。昨年１２月の段階では、町議会のほぼ全員が推進派だったのですから、私以外にもそう考えた人は多かったようです。そこで、講演会は予定通り開かれ、２２０名が小出氏のよく準備された講演に耳を傾けました。
【小出裕章氏（京都大学・原子炉実験所）の講演内容の一部】
原子力のつけは誰が払うのか？
昨年１２月１日、「低レベル放射線性廃棄物の設置調査の受け入れについての陳情書」が大月町議会に提出されました。その陳情書にはこのように書かれています。
『大月町が赤字再建団体に近づいている。再建団体になれば、町民の生活に多大な負担が求められ、さらに苦しい生活が伴う。大月病院もなくなるだろう。これらを防ぐ対策は、低レベル放射性廃棄物の誘致しか他に策はないだろう。（中略）交付金で町の財政を立て直し、町の活性化をはかろう。』
こんなことでいいのでしょうか？ 原子力開発によって生み出された放射能のゴミは、今、貧困な政治によってすっかり疲弊させられた地方の小さな町村に押し付けられようとしています。陳情書を提出した人たちは、放射能のゴミ処分場を誘致することで、カネを得ようとしているのです。しかし、「悪銭身につかず」のことわざがあります。自分で働かず、人から受け取るだけのカネは、結局、雲散霧消していくものです。長い目で見れば、地域社会は一層疲弊していくことでしょう。大月町の皆さんにとって大切なことは、自分たちの力で自分たちの地域を支えていくことではないのでしょうか？
茨城県東海村・核燃料加工工場での臨界事故
カネの代わりに失うもの
「ＲＩ・研究所等廃棄物」を埋め捨てにする処分場は、１ｋｍ四方の広さとされています。もし、大月町が処分場を引き受けた場合、それは白浜地区であろうとの予測があります。そこに、トレンチ処分、つまり、ただ穴を掘っただけで埋め捨てにするドラム缶が３７万本、コンクリートピット処分、つまり、コンクリートのプールのようなところに埋め捨てにするドラム缶が２２万本運び込まれるのです。トレンチ処分は５０年、コンクリートピット処分は３００年、管理が必要です。ところで、皆さんは、自分の家系を３００年さかのぼれますか？ 今後３００年にわたって、誰がこの放射能ゴミの責任を持つというのですか？ ３００年後には、自民党も民主党も存在していないと思います。
高知県の海岸部は論外
被曝には安全といえる量はありません。また、人間にも自然にも放射能を消す能力はありません。ただ、放射能には寿命というものがあります。（高レベルで１００万年、低レベルで３００年の管理が必要）そして、日本では、できる限り長く閉じ込めるため、地下に放射能ゴミの埋め捨てが計画されています。しかし、地震大国・日本に安全な地下など存在しません。
特に、高知県の海岸沿いは、南海地震の震源域です。処分場で放射能ゴミを埋める作業をしているときに地震が来るかもしれません。仮に、埋めてしまった後だとしても、管理が不要になるという３００年がたつまでには、１度か２度の南海地震に襲われることは確実です。地震発生直後に来る津波の高さは５ｍを超えると予想されています。
高知県の海岸部は論外ですが、そもそも、放射能のゴミを埋め捨てにしていい場所が日本にあるとは思えません。まずは、放射能ゴミを生み出さないようにすること、つまり日本社会が原子力から足を洗うことこそが大切です。原子力発電に頼らなくとも、やっていけるのです。実は、眠っている水力発電や火力発電で十分まかなえるのです。今後の方向性としては、太陽エネルギーを活用すればいいのです。
都会で享楽的な生活を送っている人たちに、原子力利用の持つ重荷に目を向けさせるためにも、大月町の皆さんがカネと引き換えに放射能のゴミを引き受けないよう、お願いします。
今回、誘致陳情書はこの講演会の直前に「不採択」となりましたが、いつまた同じ問題が起こってくるかわかりません。しかし、東洋町のように条例で放射性廃棄物の持込みを禁じておけば、安心です。今、東洋町の澤山町長が、この会場に見えていますから、相談してみてください。
澤山保太郎氏（東洋町・町長）
（参考資料）
「東洋町放射性核物質（核燃料・核廃棄物）の持ち込み拒否に関する条例」の全文
【目的】
第１条 この条例は、東洋町非核平和都市の宣言に関する決議（昭和６１年）の精神に則り、すべての放射性核物質及び放射能による災害から町民の生命及び生活を守り、次世代を担う子供達に美しい自然と安心して暮らせる生活環境を保護し、東洋町及び周辺地域の発展に資することを目的とする。
【定義】
第２条 この条例において、「放射性核物質」とは、原子力発電所など原子力関係施設の核燃料、及びそれらから生ずる使用済み燃料など全ての放射性廃棄物を指す。
２ この条例において「調査等」とは、東洋町において（１）前項原子力発電所等「核燃料」を使用する施設、（２）「放射性物質」の収容施設等、の建設に関する調査及び検査、宣伝等を指す。
【基本施策】
第３条 東洋町は、町地域内においていかなる場合も放射性核物質の持ち込みを禁じ、またそれを使用したり、処分したりする施設の建設及びそのための調査等を拒否する。
【立場の表明】
第４条 東洋町は、第１条の目的を達成するために、国及び関係機関に対して、前条基本施策を通知して、その立場を明らかにする。
【権限】
第５条 東洋町は、第３条に規定する事項に関する計画等があると疑われる場合においては、関係機関及び関係施設に対して関連情報の提供を求め、立ち入り検査を行なうことができる。
２ 東洋町は、この条例に違反した原子力関連施設の責任者に対し、調査及び施設の供用及び操業の即刻停止を求めることができる。
【町民の義務】
第６条 東洋町住民は、この条例の趣旨を守り、核物質・放射性廃棄物等の町内持ち込みをさせないよう努めなければならない。
【町長らの義務】
第７条 町長、副町長、教育委員、農業委員、町議会議員、町職員ら公務員はこの条例の趣旨を守り、第２条に係る東洋町への放射性核物質の情報については速やかに町民、近隣市町村、高知、徳島両県知事に知らせ、これを隠してはならない。
【委任】
第８条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、別に規則で定める。
附則
この条例は、公布の日より施行する。（平成１９年５月２１日施行）
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（下の写真はクリックで拡大します）
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