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アイスランド地熱発電 07.10.2004
http://www.yasuienv.net/IcelandGeoPower.htm
今回、UNUの研究・研修所であるGTP(Geothermal Training Program)とFTP(Fisheries Training Program)を訪問することが目的であったが、再生可能エネルギーとしての地熱利用の実態を知ることが、もう一つの重要な目的である。
アイスランドの唯一の国際空港であるケフラビックの近傍にある地熱発電所の実態を報告したい。
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まず、アイスランドという国の位置であるが、大西洋の中心を走る2つの地殻構造体の境目の真上にある。アイスランドの観光地としてシングべトリルという場所があるが、そこには、地球の割れ目があるとされている。この割れ目こそが、大西洋の中心を走る溶岩の湧き出し口である。そのため、アイスランドには多くの火山があるが、それも当然のことである。
800〜1100年前、多くの火山活動があって、国際空港のあるケフラビック周辺は、溶岩で覆われている。浅間山の鬼押し出しよりは平坦であるが、あんな景色だと思えば良い。
この地域の地熱発電は、1226年の噴火によってできた溶岩地帯の熱を利用している。
レイキャビック地域熱利用組合が、運用の主体である。国の金が40%、その他は、地域の自治体が資金を分担している。地域の自治体の持分は、住民の数で決められた。
1969年、地熱の研究を始めることを決定。240mと430mの2本の井戸を掘った。最初は非常に上手く行きそうな気配だったが、実際には、そう簡単ではなく、以下のことが確認された。
(1)1000m掘ると、200℃の熱が得られる。
(2)地下の地熱貯蔵池は、海水の2/3ほどの濃度の塩水からできる。
一方、レイキャビック地域では、高温の地下水をそのまま温熱と温水の供給が可能であった。海からの距離はそれほど違わないのに、地熱の状況はかなり違ったものであった。
そのため、地熱を活用するためには、熱交換を含むやや複雑なシステムが必要となった。1973年、国のエネルギー省は、地熱利用プランを作成した。
それに基づき、1713mと1519mの2本の井戸が掘られ、地熱が利用可能な地域の検討がなされた。その結果分かったことは、地下600mにおける熱水の貯蓄池の大きさは、400haに及ぶということ。
それ以後、14本の井戸が掘られた。2本は外れ、4本は今は稼動していない。1本は、途中で止め。現在7本の井戸が稼動中。内2本は、蒸気しか出さない井戸である。
精力的に研究が行われ、シミュレーションモデルが構築された。1982年に1445mの井戸が掘削されて、260℃という温度で、モデルが正しいことが証明された。その後、1億1000万トンの熱水が汲み出された結果、圧力は低下し、地盤がかなり沈下してしまった。
蒸気だけの井戸から、より多くのエネルギーが汲み出せることが分かり、また、地盤沈下なども伴わないために、塩水の井戸よりも活用度が高い。
地盤沈下を防ぐために、一旦汲み出してエネルギーを使った後の水を井戸に圧入することも行われた。
C先生:こんな状況であったようで、地熱だからといって環境的にいつでも良好な状況が保てるものでも無さそうだ。掘りすぎれば水位が低下、圧力も低下して地盤沈下を招く。
A君:汲み出した熱は、もともと発電が目的だったのですよね。
C先生:いや必ずしもそうではないようだ。レイキャビックの市内にも井戸が何本も掘られているのだが、そこからは、淡水が汲み出されていて、それが直接各家庭やホテルなどに供給されている。そのため、ホテルの風呂もイオウ臭い。多少硫化水素が入っているようだ。しかし、この硫化水素のお陰で、鉄系の材料がさびないらしい。熱力学的にあり得ることかどうか、検討した訳では無いが。
B君:鉄の錆といえば、普通は、酸化鉄か水酸化鉄。それも3価の鉄である場合が多い。それが硫化水素の還元力で、2価の鉄になって、同じ酸化鉄でもいわゆる黒錆になれば、腐食は進行しない。
A君:硫化鉄は、パイライトとして結晶化すると金色。かなり安定なんですかね。
B君:そのあたりの化学は、検討を要する。
C先生:いずれにしても、レイキャビックでの地熱利用は、温水供給、すなわち、熱としての供給が主たる目的だった。ところが、このケフラビックエリアでは、出てきた熱水が塩水だったので、それをそのまま使えない。となると、多少複雑なシステムを構築する必要がある。
A君:ということで、発電も考えるようになったということですか。
B君:地熱は最初から発電を考えているものだとばかり思っていた。
C先生:アイスランドの電力供給は、現時点では、ほとんどが水力。多少の地熱発電といった状況。レイキャビックなどで温水の供給が行われるようになってから、それがアイスランド全体に広がって、そして現在では、化石燃料は電力用にも暖房用にも温水用にも使用されていないのだそうだ。
A君:となると、化石燃料は輸送用だけということですか。
C先生:ということ。それもあって、アイスランドでは、化石燃料を水素エネルギーに切り替えて、輸送用エネルギーも非化石燃料にしたいらしい。
B君:二酸化炭素の排出量の基準が1990年だとすると、日本の省エネが終わった後が基準だから苦しいのと同様に、アイスランドも、これ以上二酸化炭素の放出を減らすのは困難ということだろう。
C先生:ということで、ケフラビックの地熱発電所の話に戻る。
A君:地熱発電で電気を起こしても、ポンプのための動力などに使われる量が多いのでしょうね。
C先生:それも次の説明で分かる。
高温の塩水は、非常に多くの溶解物を含んでいて、温度が下がると、それらが固化し、パイプが詰まる。そのため、高温の塩水からは、蒸気を取り出して、それを使うシステムを開発した。
まず、高圧力(5.2〜5.5bar)の塩水からは蒸気をとりだし、それで、8MWの発電機を回す。高温の塩水は、熱交換器に入れて、淡水(25℃:別の地域からの井戸水)を75℃に加熱する。
高圧力の蒸気は発電機を通った後も、ORMAT発電機なるもの7台を駆動する。合計8.4MWである。
図に示すような全システムで、26台のポンプが全出力1212L/秒の水を圧送しており、これで、1100kWのパワーが必要。
この他に、別の淡水井戸から水をくみ出すために、ポンプ8台が使用され、能力が400L/秒であり、消費電力は合計520kW。
高温の塩水は、ブルーラグーンに送られて温水プールになっている。年間5〜600万トンで、これにはシリカのスラッジが2200〜2500トン含まれている。温度は、20〜80℃である。
エネルギー収支であるが、125MWが温水の形で利用されている。これは、125℃の温水が最終的に使用者によって40℃で排出されているとの仮定に基づく計算である。電力は、16.4MWに過ぎない。
C先生:こんな訳で、電力にしても実はこのシステム内部でのポンプ動力に10%ぐらいが使用されているので、非常にざっくり言えば、温水8:発電1といったシステムで、決して単なる地熱発電システムではない。
A君:となると、地熱を活用するには、温水の利用が無いと、余り効率的とは言えないということになりますか。
B君:日本の場合、地熱発電を行っているのは、松川発電所。
C先生:その実態を調べたいところだが、現在、インターネットを常時接続できる環境にないので、後日の宿題にする。
以上、スイス・サンモリッツにて記述。