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【日経BP】背後に見え隠れするロシア原子力マネーの影:TCIホーン代表「敗北宣言」の真意はどこに?
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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080620/162932/
背後に見え隠れするロシア原子力マネーの影
TCIホーン代表「敗北宣言」の真意はどこに?
2008年6月24日 火曜日 児玉 博
TCI 原子力 ロシア 電源開発
もううんざりした。そんな声が聞こえてきそうだ。
電力卸の最大手「電源開発」(Jパワー)の筆頭株主でありながら、その投資計画に日本政府から中止勧告がなされた英国系投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド」(TCI)。
TCIの創設者にして代表がクリス・ホーンである。Jパワー問題について終始沈黙を守っていたホーンがその重い口を開き始めている。
その口調は、外資を頑ななまでに拒絶する“閉ざされた島国”に対する苛立ちと諦めがない交ぜになっているようだ。
ホーンに近い投資家によれば、投資先の会社の経営が悪くなろうとも経営陣に反対の声さえ上げようとしない日本の株主の在り方が信じられないとホーンは話している。
そして先の言葉からも分かる通り、Jパワーの株主総会でのプロキシーファイト(委任状の争奪戦)の見通しについても厳しい見方をしているようだ。
「Jパワーの(株式の)持ち合い企業がわれわれの意見に賛成してくれるとは到底思えない」
プロキシーファイトでの事実上の敗北宣言とも取れる発言をするホーン。ホーンのこの発言を聞けばJパワー側は小躍りして喜ぶだろう。しかし、株主総会を数日後に控えたこの時期を狙ったかのような事実上の「敗北宣言」の真意はどこにあるのだろうか。
常識的に考えるならば、攻勢を強める時は往々にして水面下での株式買い取り交渉が進んでいる場合が多い。
TCI側がJパワーの監査法人に対して、昨年9月の料金値下げによって60億円もの利益が失われたとJパワーの13人の役員に賠償請求を求めるように働きかけたり、Jパワーと株式の持ち合いをしている鹿島、みずほコーポレート銀行などに対してプロキシーファイトに協力要請をするなど、まさに攻勢を掛けているタイミングでもある。
「儲けが出ない市場」と日本の株式市場を断じるホーンの言葉の裏からは、ファンド運営責任者の本音が覗こうというもの。
そして、もう1つ。
TCI内部から聞こえてきた不協和音。
その国の基幹企業への投資が1つの大きな戦略となっているTCIは、Jパワーの株主総会とほぼ同じ時期に太平洋を跨いだ米国でも重要な投資先が株主総会を持つ。
その企業は米国の大手鉄道会社「CSX」だ。経営改革を求めるTCIとCSXとはプロキシーファイトを展開しているばかりか、CSX側は米連邦地裁に提訴して対抗するなど、激烈な争いを繰り広げている。
先日、CSX側の提訴に対してSEC(米証券監視委員会)は地裁判事に、CSX側の主張を退ける判断を示した。しかしながら、CSX側では有力議員が議会で安全保障を盾にTCI側を牽制するなど、予断を許さぬ状況が続いている。
収益の半分はアフリカの貧困に喘ぐ家庭の児童やエイズ感染児を支援する慈善活動に費やすことをファンド設立趣旨に掲げるTCIにとって、年率40%以上のパフォーマンスは最低ライン。はっきり言ってしまえば教条的な安保論者が跋扈する行政に支配される株式市場などに構っている時間はないのだ。
それゆえに、理論一辺倒でJパワー、経済産業省を攻め立てるアジア代表のジョン・ホーの戦略に対しても本国から疑義の目が向けられ始めていた。こうしたことがホーンにして、「儲からない市場・日本」からの撤退さえも臭わせる発言につながったのだろう。
だが、本当にそれだけなのだろうか。どうしてもあることが気にかかる。
それはTCIの背後に見え隠れするロシアの原子力マネーの影である。
クリス・ホーンが金融界で頭角を現すきっかけは、投資ファンド「ペリー・キャピタル」時代にさかのぼる。この時代にホーンが担当したのが、英国ロスチャイルド家4代目当主、ジェイコブ・ロスチャイルドの資産運用だった。
投資信託会社RITキャピタルを興し成功した金融界の実力者は、ホーンの実力を評価し、TCI設立時には最初の顧客に名を連ねた。
かつてドイツ証券取引所がロンドン証券取引所の買収へと動いた時の話。この時、TCIはドイツ証券取引所の筆頭株主になるとともに、米国ヘッジファンド「アッティカス・キャピタル」や投信大手「フィデリティ」などと組んで買収阻止に動いた。
この際、ドイツ証券取引所との仲裁に動いたのが先のジェイコブ・ロスチャイルド卿であった。ホーンの頼みを受けてのことだった。
ここで注目すべきは、ホーンとともにロンドン証券取引所の買収阻止で共同戦線を張った「アッティカス・キャピタル」で、当時は上級パートナーを、現在は共同会長を務めるのがロスチャイルド卿の息子、ナセニエルの存在だ。
このナセニエルこそロシア原子力マネーに深く関与している人物なのである。
米アルコアを凌ぐ世界最大のアルミ会社「ルスアル」を率いるロシアのビジネスマン、オルグ・デリパスカが来日したのは2年前。その数カ月後には東シベリアにアルミ工場とともに原子力発電所の建設計画を発表し、原子力業界を驚かせた。
エネルギー戦略の中核に原子力を据えるロシアにあってその中枢に食い込むデリパスカのアドバイザーを務めるのが、誰あろうナセニエルなのである。
ゆえに、以前から運用資産1兆5000億円以上と伝えられるTCIには相当額のロシア原子力マネーが流入しているのではないかと見られていた。
勃興し世界のエネルギー勢力地図において重きを増し続けているロシアが戦力的なパートナーに選んだのが日本である。早ければ、7月の北海道・洞爺湖サミット期間中にも日露原子力協定の批准が行われるのではないかとも見られている。
通常ファンドの戦略は一出資者の意向などに左右されることなどない。しかし・・・。
TCIのJパワーへの投資で日本政府側が最も神経を尖らせたのが、Jパワーが青森・大間に建設を開始した原子力発電所の存在だった。なぜなら、大間原発こそ日本の原子力政策の根幹をなす原発になるからである。
その大間原発の危機は、日露原子力協定への行方にも影を落とすだけでなく、日本の原発ビジネスにも暗雲をたれこめさせる。
日本の閉鎖マーケットがTCIを追い出した。そう言ってしまえばそれまでだが、果たしてそれだけだろうか?
洞爺湖サミットを直前に控え、TCI総帥の日本マーケットとの決別宣言とも取れる発言の投げかける意味は様々に深く、重い。
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