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それでも資源囲い込みを続ける中国
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090218/186483/
* 谷口 正次 【プロフィール】
ますます深刻さを増す金融危機と世界同時不況の最中、中国は変わらず資源の囲い込みを続けている。当然といえば当然である。資源は景気の良し悪しにかかわらずず長期的視野から国家戦略の下に確保しなければならないからだ。
とくに中国は、経済成長維持が胡錦濤政権の最重要課題であり、世界のメタル資源の25%を消費していることからすれば不思議ではない。
去る2月12日のこと、BBCはじめ世界のメディアが次のような内容のニュースを一斉に報じた。「中国最大の国営鉱山会社チャイナルコ(Chinalco=Aluminum Corporation of China)が世界第2位の資源メジャー企業、英豪リオ・ティント・グループ(Rio Tinto group、本社ロンドン・メルボルン)に195億ドル(約1兆7500億円)の資金注入をする。リオ・ティントはそれを負債の返済に充てる。中国側は見返りとして、195億ドルのうちの123億ドル分のキャッシュで、リオ・ティントの主力事業であるアルミニウム、鉄鉱石、銅の9鉱山の権益の一部を取得する。残り72億ドルでリオ・ティントの転換社債を引き受ける」というものだ。
この取引が成立すればリオ・ティントはボードメンバー15人のうち2人をチャイナルコから受け入れることになるということだ。
ただ、本件は、まだオーストラリアの外資規制当局の承認を得ていないし、承認を得るのにはハードルは高く、このドラマの決着は長引くという噂である。承認されれば中国による外国企業の株式取得で過去最大のものになる。
リオ・ティントとチャイナルコの関係は今急に出てきたわけではない。
2007年11月のこと、世界の資源争奪戦とM&A(合併・買収)合戦が最も激しかった当時、世界最大の資源メジャーBHPビリトンが第2位のリオ・ティントに対して1530億ドルという規模の買収提案を行って世間を驚かせた時からチャイナルコの介入が始まるのである。
中国は、2006年度の粗鋼生産量が世界の35%を占め、鉄鉱石消費量が世界一であるのに自給率が42%に過ぎない。BHPによるリオ・ティントの買収が成立すれば両社で生産量が世界の38%になり寡占支配が強まる。しかも、中国は合併後の1社に鉄鉱石輸入量の60%を依存することになり、現状でも強い価格支配力は圧倒的になる。
これは到底容認できないとして買収阻止に出た。まず、リオ・ティントの株をアルミニウムで世界第3位の米アルコアと組んで12%取得した。チャイナルコとアルコアの比率は3:1。141億ドルの投資である。それにとどまらず2008年8月にはさらに独自に2%買い増したが、オーストラリア規制当局は14.99%を閾値として認可した。しかし、今回の転換社債が普通株に転換されると中国側の持ち分は18%になるため再度認可が必要になる。
リオ・ティントとしては、387億ドルという過重な債務をチャイナルコのキャッシュで一挙に減らすことができるし、2010年までに返済期限が来る189億ドルを決済できることになるとともに、バランスシートに弾力性を与えて新たな投資が可能になるということだ。
本件に対してCEO(最高経営責任者)のトム・アルバニーズが主張していることは、チャイナルコとのタイアップによって、中国の旺盛な資源需要、中国政府の資源政策と行動に対する読み、中国国内に眠る資源開発への参入の可能性、そして中国の銀行からの一層の資金調達が可能になるといった利点である。
中国は将来、アルミニウム、銅そして鉄鉱石の消費量が世界の1/3から1/2を占めるようになると予想されている国である。しかし一方、中国の製鉄会社が鉄鉱石の価格交渉の際に北京が過度の影響力を持つのではないかと懸念する声もあるが、アルバニーズは、今回の取引ではまだ懐に入らせるほど中国側のリーチが長くなるわけではないので、それほどの影響力はないと断言している。中国側も、本件は独自の決断であり長期的な投資収益を第一義に狙ったものであるという。
ちなみに、チャイナルコが123億ドルで取得する鉱山の権益の主なものは、52億ドルでハマースレイ鉄鉱石鉱山の15%、これはリオ・ティントの利益の10%を占める。チリにあるエスコンディダ銅鉱山は、リオ・ティントの権益30%の約半分弱を45億ドルで取得する。これは世界最大の銅鉱山でリオ・ティントの利益の36%を稼いでいる。そして、2007年にリオ・ティントが買収したアルミニウムのアルキャンに21億ドルを投入する。これはリオ・ティントの収益の4%を占める。
なお、2007年11月のBHPによる買収提案を評価が低すぎるとしてリオ・ティントは拒否したが、2008年2月になって、BHPは株式交換比率を引き上げて再提案した。買収総額は1700億ドルであった。これも拒否されたため、敵対的買収を準備する情勢となり世界が固唾をのんで行方を見守っていた。結果的には、2008年11月になってBHPは買収を断念すると発表した。当初の年間37億ドルという合併効果も見込めなくなったということであった。
このたびの一件を見ても、100年に1度と言われる世界経済の危機的状況をものともせず、中国が並々ならぬ決意で資源囲い込みを続けていることが分かる。しかし、これだけではない。
2008年12月10日、中国国営鉱山開発会社である冶金科工集団(MMC=Metallurgical Group Corp.)の戦略企画部幹部がインタファクス(Interfax)に次のように語っている。「世界の金属価格は急落しているが、海外鉱物資源の探査・開発プロジェクトをスローダウンさせることはない」。
やはりMCCの海外開発部の幹部も「現在の極めて弱い商品市況は、鉄、非鉄金属資源の探査・開発調査にはよい機会を与えてくれている。したがって、現在開発工事中のプロジェクトをスローダウンさせる計画はない。例えば、パプアニューギニアのニッケル・コバルトのラムーニッケル鉱山(Ramu Nickel)、オーストラリアのシノ・アイアン・鉄鉱石プロジェクト(Sino Iron Project)、パキスタンのサインダック金・銅鉱山(Saindak)ならびにドゥッダール鉛・亜鉛鉱山(Duddar)、ブラジルの銅鉱山、西オーストラリアのケープ・ランバート鉄鉱石プロジェクト(Cape Lambert Iron Ore Project)そしてアフガニスタンのアイナック銅鉱山(Aynak)だ。さらに、今メキシコとチリでも銅鉱山開発のフィージビリティースタディーを行っているところだ」といった調子である。
このような強気の姿勢は、2007年10月21日の第17回中国共産党全国大会において、胡錦濤主席が、政権の抱える「困難と課題」の筆頭に「資源確保」を掲げ、それを今も変わらず忠実に胡主席が陣頭指揮して資源外交を実行していることからもうなずける。
世界経済が危機的状況にある最中でも、内需拡大、格差是正のための西部・東北開発政策を推し進める中国が長期的国家戦略として資源確保の手を緩めていないのだ。
日本では昨年、あれだけレアメタルで大騒ぎしていたのに、喉元過ぎて熱さをもうすでに忘れてしまったということなのか。