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受注拒否を始めた「世界の工場」 フィナンシャル・タイムズ
http://www.asyura2.com/08/china01/msg/306.html
投稿者 TORA 日時 2008 年 10 月 14 日 12:41:14: CP1Vgnax47n1s
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20081001/172356/?P=1

中国・広東省。この中国南部の一大輸出拠点で玩具工場を経営するロバート・チャンは、かつての中国の輸出企業では考えられなかった行動を取り始めた。

 それは、不当に安いと判断した注文は、引き受けないこと。今のような厳しい環境の中で生き残るためには、受注価格の引き上げでは、もはや対応できないからだ。

 広大な工場、そしてとにかく稼ぐことに一生懸命な1万人の従業員を抱えるチャンにとっては、客からの注文がどんなに安値であろうとも、引き受けることができた。世界が太刀打ちできない「チャイナプライス」で、チャンの工場は製品を供給できた。

 しかし、そんな話も今は昔。チャンは今年、従業員の半数を解雇した。人員整理は、中間管理職や幹部クラスにまで及んでいる。こんなことは初めての経験だ。

 「生産性の低い社員を削減するしかない。そうしなければ生き残ることはできない」と、チャンは言う。かつては15〜20%という高い利益率を上げていたが、今期は赤字の見通しだという。


1万件の倒産が予想されている広東省

 広東省では、今年中に約1万件に上る製造請負業者の倒産や廃業が予想されている。深刻な資金難から、受注した製品の生産に必要な原材料を調達できない業者も存在する。これまで取引通貨とされてきた米ドルに代え、人民元での支払いを要求するケースも見られるようになった。

 原材料費に人件費、そして地価に人民元、税金とあらゆるものが上昇し、今年度の利益は吹き飛んでしまっている。中国製品の大半は、原材料費が製造コストの約60〜70%を占める。その原材料コストが、近年の商品価格の上昇に伴い増大しているのだ。2005年7月に為替制度をドルペッグ制から管理フロート制に移行して以来18%上昇した人民元高も、輸出業者の利益を圧迫している。


 中国南部の各地方政府はここ数年、毎年2ケタの率で最低賃金を引き上げている。香港に隣接する深セン市でも今年、最低月給基準を中国国内最高額となる1000元(約1万5500円)に引き上げた。

 それに加え、今年1月に施行され話題になった新法、労働契約法により従業員の解雇が困難になったことも、製造業者のコスト増大の一因となっている。中国の裁判所は今や、雇用主に対し同法の順守を求める労働者側からの提訴で手いっぱいの状態だ。

また、主要顧客である米国や欧州から、受注鈍化も起こっている。対米輸出の伸び率は年初来7カ月間で9.9%にとどまり、前年の18%からほぼ半減している。対米輸出伸び率が10%を下回るのは、2002年以降初めてのことである。


230万人の雇用機会を奪った勢いも今は昔

 1978年に改革開放政策で外国資本の投資を受け入れ、輸出拡大による成長路線を歩み始めきた中国にとって、こうした事態は初めての経験と言っていい。チャンの工場も含め、中国の製造請負業者は、世界最低水準の生産コストで、過去20年間にわたり、他国の工場を閉鎖に追い込んできた。

 米ワシントンに拠点を置くシンクタンク、経済政策研究所(EPI)によれば、対中貿易赤字を抱える米国では2001年から2007年にかけて230万人の雇用機会が失われた、との推計を出している。米国の玩具、靴、家電製品などのメーカーが、国内の工場を閉鎖し中国へ移転したためだ。

 5年前ならば、世界中のメーカーの経営者は、ほとんど間違いなくチャンのような工場に脅威を感じていたはずだ。しかし、今はチャンの方が脅威を感じる側になったのだ。それは中国の発展が新たな段階へと移行する、重要な節目を迎えたことを意味している。

 次なるステップに踏み出すためには、中国の製造請負業者は何をしなくてはならないのか。それは、日本の製造業が1970〜80年代にかけて、「カイゼン」「カンバン方式(ジャスト・イン・タイム)」で世界を一変させたような経営技術を、身につけることだ。

 現在でも、大半の中国の工場は、そうした高度な生産管理体制とは程遠い運営がなされている。欧米の発注者と中国などアジアの製造請負業者の仲介を、20年以上してきた米国人実業家のジェームズ・ストラウスは、こう証言する。

 「受けた注文の利益が出ているか、年度末になって判明する。多くの請負業者は、こんな経営を続けてきた」


自転車操業のような経営を強いられてきたのは、過当競争で、発注業者は中国で、いつでも、安値で受注してくれる相手を見つけることができたからだ。必ず生産を引き受ける業者がいるので、交渉の主導権は完全に発注側が握ってきた。


安全を求める世界の声


 原材料費高騰など様々なコストアップ要因に加えて、中国の工場には今、新たな試練が待ち受けている。米国は今年8月、連邦議会で消費者製品安全法の改正案を通過させた。この十数年で最も包括的な法改正が行われ、玩具への鉛の使用に関する規制も大幅に厳格化された。

 この改正消費者製品安全法により、玩具業界はほかの業界よりも大きな打撃を受けている。中国本土内に工場を持つ香港の玩具製造業者の幹部は、同改正法によりコスト負担がさらに増大すると言う。

 中国製品には現在、玩具や食品、医薬品など様々な製品の安全性について、世界から厳しい目が注がれている。

 そのためには検査設備を新たに設置する必要も出るなど、新たなコストが発生する。だが大半の工場経営者は、注文を引き受ける場合でも、顧客には最小限の価格引き上げにしか応じてもらえないと言う。小売業者が消費者への価格転嫁を嫌がるからだ。

 こうした事態を打開するためにも、品質管理や原価低減など経営技術の向上が欠かせなくなった。新たな安全基準を満たすために必要な受注価格の引き上げが難しいならば、注文を断るしかないからだ。それしか手段がなければ、工場は廃れていく一方だ。それは中国の工場に限らず、海外の発注者側にとっても好ましい事態と言えるか分からない。


新しい関係作りの時代

 米国人実業家のストラウスは、受注価格の引き上げを要求する製造業者がさらに増えてくれば、発注者側も製造業者との不安定な関係を改める必要が出てくるだろうと言う。

 衣類や家電製品のような労働集約型の製品の発注者は、これまで複数の業者間で価格を競わせ、一番安い価格で買い叩いていたようなところがあった。しかし、「もはや買い手が圧倒的に優位な時代ではない。製造業者ともっと良好な関係を築くため譲歩することが必要だ」とストラウスは言う。

 海外の発注業者と対等な関係を築くことは、結局は中国にとってメリットとなる。世界の“労働搾取工場”の地位からの脱却を意味するからだ。とはいえ、中国以外の国にとっては物価の上昇を招くことになる。

 ストラウスは家電業界の話を引き合いに出して言う。

 「我々は日本への生産委託を始めた後、台湾へ移り、そして中国へやってきた。アフリカやベトナムまで行くつもりはない。中国で乗り切る手立てを見いださなければならない」

アレクサンドラ・ハーニー
日本語、中国語が堪能な香港在住の米国人ノンフィクション作家。98年に英FT(フィナンシャル・タイムズ)入社。FT退社後、香港に拠点を移し、2年ほどかけて中国本土で工場経営の実態を調査する。その成果は『THE CHINA PRICE』(The Penguin Press)としてまとめ、今春から世界各国で発表され始めた。邦訳版は日経BP社から発刊予定。(写真:菅野 勝男)
 

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