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ATMの故障が誘発した犯罪
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080305/148967/
24歳の青年が17万5000元を手にした代償は無期懲役
2008年3月7日 金曜日 北村 豊 銀行口座の残高は2万円しかないはずなのに、ATM(現金自動預け払い機)から1万円を引き出そうとして、間違って引き出し額を1ケタ多い10万円と打ち込み、画面上の数字を確かめもせずに「確認」と入力したところ、何と不思議なことに現金10万円が出てきた。発行された明細表を見ると、そこにプリントされていたのは、引き出し額は1000円で残高が1万9000円。「そんな馬鹿な」と明細表をしげしげと確認し、現金を数え直したが、明細書に印字されている引き出し額は1000円であり、手元の現金が10万円であることは間違いない。
そこで質問。“もしATMから現金を引き出そうとして、同じ状況に遭遇したら、貴方ならどうしますか?”。銀行(あるいは警察)に届けますか? そのままネコババしますか? この驚くべき事態に遭遇した人物が、中国広東省の省都、広州市に実在したのである。
2006年の年初に山西省襄汾県から広東省広州市へ出稼ぎにやって来た許霆は、当時24歳。広州市に到着後、友人の紹介で広東省最高人民裁判所の警備員の職を得た。それから3カ月後の4月21日金曜日の夜10時頃、勤務を終えて同僚の郭安山と連れ立って宿舎へ帰ろうとした許霆は、郭安山を人民裁判所側に待たせて、通りの向こう側にある広州市商業銀行のATMに立ち寄って銀行カードで現金を引き出そうとした。
(註)中国のATMは歩道に面して設置されていることが多く、24時間利用可能。
自分の銀行口座には170元(約2550円)程度しかないことを知っていた許霆は、ATMから銀行カードで100元(約1500円)を引き出そうとしたが、何を間違えたか、引き出し額を1ケタ多い1000元(約1万5000円)と入力した。すると、何事もなくATMから1000元が支払われたのだ。口座には170元程しかないはずだが、おかしいと残高を確認してみると、たった1元を引き出しただけになっている。そこで、もう1度、引き出し額を1000元と入力してみると、前回同様に1000元が支払われ、残高は1元差し引かれただけだった。
これで完全に頭に血が上った許霆は、その後立て続けに53回同じ操作を行い、合計で5万5000元(約82万5000円)を引き出した。通りの反対側で待っていた郭安山はいつまで経っても戻ってこない許霆にしびれを切らし、ATMにへばりついている許霆に向かってその名を呼んだ。この声を聞いてびっくりしたのは許霆である。郭安山によれば、許霆は慌てて郭安山の所へ戻ってきたが、恐怖に駆られた様子で顔は汗びっしょり、どうしたのかと聞いても何も答えず、2人は無言のまま一緒に宿舎へ戻ったという。
宿舎へ戻って一息つくと、許霆は現金を郭安山に示して、「これは俺たちの金じゃない、どうしたものだろう。警察に通報すべきか、銀行に連絡すべきか」と言った。郭安山は許霆の話に驚きながらも、「こりゃ、天から焼き餅が落ちてきたみたいなものさ。貰わないのは損だ」と答えた。そこで、2人は22日の深夜1時頃、あのATMに戻って、許霆は引き出しの操作を連続して102回行い、前回分を含めて合計17万5000元(約262万5000円)、郭安山は1万8000元(約27万円)をそれぞれ手にしたのである。
その22日は土曜日だったが、許霆はいつも通り朝9時に広東省最高人民裁判所へ出勤した。心の中では、“あの金は自分のものではないから、事態が判明して銀行から人がやって来たら金を返せば大丈夫、何事もなく済むさ”と思っていたが、22日は何事もなく過ぎた。翌23日の日曜日、その日許霆は宿直ではなかったが、宿舎に帰る気がせず、裁判所の宿直室でぼんやりと夜を過ごしたが、何事も起こらない。“これは天が自分に味方してくれていて、銀行はATMの異常に気づいていないのかもしれない”と考えるようになった許霆は、郭安山と語らってそれぞれ生まれ故郷へ戻ることにした。
4月24日の月曜日、土・日休業の銀行が営業を開始したその日の午後3時、許霆は17万5000元を入れた袋を背負って故郷の山西省へ向かう長距離列車に乗り込んだ。同日営業開始と同時にATMの異常に気づき、それが許霆の口座であることを突き止めた広州市商業銀行は、速やかに許霆の勤務先の保安部門へ連絡を取り、同時に広州市公安局へ事件として届け出た。広州を後にした許霆は列車の中から広州市商業銀行に電話を入れて、「金を返せば問題は無くなるか」と尋ねたが、銀行側の回答は「金を返すだけじゃだめ、既に公安局に届けたから自首しろ」だった。