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http://mainichi.jp/enta/art/news/20080604dde018040058000c.html
描かれた沖縄:/7 経済 基地と補助金、麻薬に
沖縄には、多くの人が<麻薬>と言い表すものが二つある。米軍基地の軍用地料(借地料)と日本政府の補助金だ。これらは、戦前の倍以上に人口が増えた沖縄の経済を支えてきた。ただし、日本最高の失業率と、最低の県民平均所得を維持させたままで。
基地がある土地は、もちろん元々、沖縄の人たちのもの。従って、軍用地料が払われる。松島泰勝・龍谷大准教授の『琉球の「自治」』(2006年、藤原書店)によると、その額は03年に計約766億円。72年の約123億円から大幅に増えた。軍用地料は日本政府が払っており、<軍用地主の地代収入への依存度を高めるために>値上げがされてきた。また、軍用地主に基地で働く人などを足して試算すれば、県民の4人に1人が基地関連の収入を得ている。
大城立裕さんの小説『恋を売る家』(98年、新潮社)は、軍用地主の一家が舞台。一家は元々、ノロ(巫女(みこ))の家系で、戦後、2万坪の土地が基地になった。年間3000万円以上の軍用地料が手に入る。
家長の英男は、これを元手にラブホテルを建てるが、管理は妻に任せて遊びほうける。しかも、やくざにはめられ、軍用地を巻き上げられる。その直後、基地が日本に返還された。
大城さんは「不労所得が多過ぎれば、人間は必ず堕落する。それを描いた」と言う。人々は、いつどの基地が返還されるか<予測がつかないままに、惰性で軍用地料という不労所得を食っている。あたかも麻薬中毒のようなもので、軍用地返還はいわば麻薬患者の禁断症状に似たものではないか>。
もう一つの<麻薬>について。『琉球の「自治」』によれば、沖縄の名目県民総所得は、約4割が国の補助金だ。その額は、メーンの沖縄振興開発事業費が72〜04年度で延べ約7兆5968億円。9割方が公共事業に使われ、<赤土が海に流出したことで、沖縄島(本島)周辺の珊瑚礁(さんごしょう)の九〇%以上が破壊された>。
補助金も、基地がらみが多い。名護市辺野古への米軍ヘリ基地建設問題とリンクする形で、県北部には97年から10年間で1000億円が投下された。しかも、これで<各種の施設が建設されればされるほど、市町村はその運営・維持のため(略)財政が悪化し、(基地への)依存度を一層深めてしまう>。
戦後の初めから、依存体質だったわけではない。ジャーナリストの奥野修司さんが『ナツコ』(05年、文芸春秋)で描いたような「密貿易」が栄えた。奥野さんは、当時を<誰の支配も受けず、誰の手も借りず、占領軍に対抗して(略)生き抜いた>沖縄自身が主人公の時代<ウチナー世>だったとする。奥野さんは、新しいウチナー世が来るとしたら、「建設業以外の産業が生まれ、補助金なしでやっていけるようになること」だと言う。
ちなみに、今の沖縄県が検討する観光振興策の目玉は、建設業に利益をもたらす大規模なカジノの建設である。【鈴木英生】=つづく
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◇松島泰勝(まつしま・やすかつ)
1963年、石垣島生まれ。南大東島、与那国島、沖縄本島などで育つ。早稲田大博士課程単位取得。東海大准教授などを経て現職。著書に『沖縄島嶼(とうしょ)経済史』など。
◇奥野修司(おくの・しゅうじ)
1948年生まれ。立命館大卒。南米での日系移民調査から帰国後、フリージャーナリストに。『ナツコ』は講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞。
毎日新聞 2008年6月4日 東京夕刊
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描かれた沖縄:/7 経済 基地と補助金、麻薬に
沖縄には、多くの人が<麻薬>と言い表すものが二つある。米軍基地の軍用地料(借地料)と日本政府の補助金だ。これらは、戦前の倍以上に人口が増えた沖縄の経済を支えてきた。 ...
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2008年6月4日16時6分 [トップ > エンターテインメント > 芸術文化]
描かれた沖縄:/6 離島 失われないつながり
沖縄には有人島が49ある。そのうち、本島以外の離島に人口の1割、約13万人が住む。崔洋一監督が、映画「豚の報い」(1999年)を撮影した久高島(くだかじま)も離島の一つだ。本島の東側にあり、人口約200人。 ...
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2008年6月4日10時28分 [トップ > エンターテインメント > 芸術文化]
描かれた沖縄:/5 アメリカ あこがれと怖さと
27年間続いた米軍統治下、沖縄の人々はその手のひらの上で生きざるをえなかった。人々は、アメリカに命も財産も尊厳も握られた。だからこそ、かの国の圧倒的な豊かさは、あこがれの対象にもなった。 ...
mainichi.jp/enta/art/news/20080602dde018040062000c.html
2008年6月2日17時29分 [トップ > エンターテインメント > 芸術文化]
描かれた沖縄:/4 反基地 怒りに火がつく時
極東最大とされる米軍嘉手納基地の周辺。主人公の目の前で火炎瓶が舞い、米兵の車が次々と燃えた。彼は基地に突入できないまま、銃口を自らの口に入れて、物語は終わる。 ...
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2008年5月23日10時18分 [トップ > エンターテインメント > 芸術文化]
描かれた沖縄:/3 信仰 日常に息づく独特な形
沖縄本島をドライブすれば、そこかしこで亀甲墓(かめこうばか)と呼ばれる巨大な墓が見られる。亀甲墓は那覇市の繁華街、国際通りのすぐ裏にもあり、大抵の三差路には魔よけの石敢當(いしがんとう)が張ってある。 ...
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2008年5月21日16時27分 [トップ > エンターテインメント > 芸術文化]
描かれた沖縄:/2 沖縄戦 「裂け目」から蘇る記憶
那覇市首里城の守礼門をくぐり、正殿に抜ける道を外れて左側の階段を下りると、草に囲まれたコンクリートの壁のようなものがある。沖縄戦のとき、首里城周辺の地下には日本陸軍の総司令部壕(ごう)があった。 ...
mainichi.jp/enta/art/news/20080520dde018040025000c.html
2008年5月21日10時16分 [トップ > エンターテインメント > 芸術文化]
描かれた沖縄:/1 首里城 「誇り」とカチャーシー
◇日本社会の矛盾拡大鏡でのぞくように この十数年間、又吉栄喜(またよしえいき)さん(1996年)と目取真俊(めどるましゅん)さん(97年)の芥川賞受賞、99年の映画「ナビィの恋」のヒット ...
mainichi.jp/enta/art/news/20080519dde018040028000c.html
2008年5月20日16時33分 [トップ > エンターテインメント > 芸術文化]