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http://www.labornetjp.org/news/2008/1212387814106staff01
木下昌明の映画批評〜3世代にわたる戦争の傷跡描く「花はどこへいった」
●ドキュメンタリー映画「花はどこへいった」
兵は死に国は罪過を忘れたが
3世代にわたる戦争の「傷跡」
ベトナム戦争の時代(1964〜75年)、一つの歌が世界ではやった。ピート・シーガー作詞作曲の「花はどこへいった」で、「兵士はどこに行ったのだろう……みんな墓の中に」といった歌詞だ。日本でも加藤登紀子らによって反戦歌として盛んに歌われた。
今度、同名の映画が公開される。54歳で急逝した夫の死に疑問を抱いた妻が、その理由を追い求めたプライベートなドキュメンタリーだ。
夫は『タイム』誌の契約写真家としてアジア各国を取材した米国人のフォト・ジャーナリスト、グレッグ・デイビス。妻はこの映画を撮った坂田雅子。二人は70年に結婚するも、18歳でベトナムへ出征したグレッグは、米軍機の散布した枯れ葉剤を浴びたので、妻には「子供は作れない」と伝えた。兵隊時代についても多くを語りたがらなかった。
グレッグは03年、がんを発病してわずか半月後、「肝臓が爆発」するようにして亡くなった。雅子は心の空洞を埋めるため、夫の親友の写真家とベトナムへ旅立つ。そこで彼女が見たものは、枯れ葉剤に含まれる猛毒のダイオキシンのために3世代にわたって苦しむ人々の姿であった。
手のない子、足のない子に目のない子。なかでも頭の上にもう一つ頭がある子供には驚かされる。それでも、その子が家族に甘える姿はいとおしく、胸が痛くなる。
日本でもダイオキシンの被害実態を記録したものに、テレビ朝日の「ベトナム枯れ葉作戦の傷跡」(81年)や西山正啓が手がけたNHKの「ベトナムに生まれて」(99年)などがあるが、映画は米軍機が散布した枯れ葉剤は8550万リットルにも達したとする。
雅子はグレッグと同じ猛毒に侵された子供たちにひかれ、鎮魂の旅は、米国家と戦争で儲けた大企業の悪を告発する歩みへと変わっていく。
なお、ベトナムの風物詩を撮ったグレッグの数葉の写真が印象的だ。(木下昌明)
*『サンデー毎日』2008年6月1日号所収
映画「花はどこへいった」は6月14日から東京・神田神保町の岩波ホールで公開