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まだまだ世界大崩壊は始まったばかりなの。来年からが本番なのよ。世界経済崩壊後に現れる”新国際秩序(世界政府アジェンダ)”が重要なの....これから日本に限らずグローバル・エリート式ペテン経済(罠)で金儲けしたツケが世界中にさらに降り注ぐ予定なの
(フィナンシャル・タイムズ 2008年12月18日初出 翻訳gooニュース) フィリップ・スティーブンズ
予言者の季節がやってきた。各界のコメンテーターたちは毎年今頃になると決まって、未来を語る予言者のフリをし始めるからだ。身の回りで起きている現実は混沌としていてとても分かりにくい。なので彼らは(あるいは「私たちは」?)これから先、確実に起きると分かっていることについて語り、自分を慰めるのだ。特に今年は、バラク・オバマがもう間もなくアメリカの大統領になることが決まっているだけに、わかりきったことを語りたいという誘惑は実に強力だ。
2007年12月にいわゆる評論家たちがどんなことをしたり顔して語っていたか、わざわざ遡って読んでみたとする。とすれと、いかにこの手の予言ごっこが信用できないか分かるはず。2008年の混乱で私たちが何かひとつでも学んだとするならそれは、思いもしなかった意外な出来事というのは、実にあっという間に、平々凡々な当たり前に成り果ててしまうということだ。
なにはともあれ。この世のどこかにはいるのだろう。2008年になると石油価格がいったんは1バーレル150ドルまで急騰するものの、同じくらいあっという間に40ドルに向かって急落すると、そう見事に予想していた予言者が。だとすればその人物は、世界的な投資銀行の失墜も同様に予言していたに違いない。ベア・スターンズとリーマン・ブラザーズが破たんすることも、ゴールドマン・サックスに集い宇宙を司る全能の支配者たちが慌てふためいて、殊勝にも頭を下げて、米連邦準備制度理事会(FRB)の助けを乞い求めることになるなどという展開も、全て見通していたに違いないのだ。
そこまで分かっていれば、そこから先の展開は予想も簡単だったはずだ。小さくて元気なアイスランドが財政破たんするのも予見できだろう。各国政府が再び舞台中央に躍り出てきて、国際金融システムを国有化することも分かっただろう。2008年末の金利はゼロに限りなく近くなることも、あちこちの銀行は政府の管理下におかれることも、ヘッジファンドが忌み嫌われるようになることも。予言者にはもちろん何もかも全て、茶葉占いでお見通しだったのだろう。
10年以上も我が世の春を謳歌していた勝手気ままな自由資本主義が2008年に死滅することも、コメンテーター軍団はもちろん予言できていたはずだろう? そうでしょう? 違います? それに、たとえば米ナスダック・ストック・マーケット(現ナスダックOMXグループ)のバーナード・マドフ元会長が関与したとされる500億ドルの巨額詐欺事件にしても、問題のヘッジファンドは実は巨大なねずみ講だったことも、最初からずっと一目瞭然だったのだろう。そうでしょう?
そういうたぐいの洞察力を持ち合わせる人たちなら、ジョン・マケイン氏と戦って勝つのはバラク・オバマ氏に決まっている、最初から予言できていたのだろう。残念ながらこの私ときたら、民主党候補はヒラリー・クリントン氏、共和党候補はミット・ロムニー氏で確実だと、そんなことを確信していたのだが。そんな私は、何かを見落としていたに違いない。
それに、英国政治の勘所が少しでも分かっている人なら、ゴードン・ブラウン首相の株価は一気にうなぎ上りすると最初から分かっていたはず。何せ、本人が「そんなことには絶対ならない」と断言していた金融破綻が実現して、経済が不況に陥るのと同時に、首相の評価は急騰したのだから。さらには、頑なまでにむっつり陰鬱なブラウン首相と、フランスの、えーと何と言うか、それに比べるともっと社交的というか快活なサルコジ大統領が、大の親友同士として年末を迎えるだなど、もちろんみんな最初から分かっていたことだと言うのだろう。
もっとも、予言者たちがピシャリ言い当てたこともあるにはある。それは認めてやらねば。たとえばジョージ・W・ブッシュ。彼は見事に期待を裏切らなかった。コメンテーターたちは、ブッシュ政権はみじめな終わりを迎えると予言していたわけだが、まさしくその通りになったではないか(とは言えさすがに、バグダッドで靴を投げつけられた一件では、これまで辛辣にブッシュ批判を展開していた人たちも、ついつい思わず気の毒がっていたが)。
スポーツの慣用句を使うなら、2008年は前半戦と後半戦に分かれて展開した1年だった。今年前半には、地球規模で枯渇する天然資源をめぐり各国政府が必死になってしのぎを削り、そして経済学者トマス・マルサスが復権していた。
商品価格は天井知らずに急騰し、各国の中央銀行はインフレの予兆をあちこちに見ていた。そして先進各国における景気失速については、これは必要な調整局面に過ぎないと思われていた。失速した分は、アジアの新興国が穴を埋めるはずだと言われていた。当時さかんに「デカップリング」議論が自信たっぷりに披露されていたのを覚えているだろうか?
地政学上の議論で言えば、エネルギー資源収益がいかに独裁や権威主義の台頭を促進しているかが、主要な論点だった。それによればつまり、いずれこの世はウラジーミル・プーチン率いるロシアのもの、ウーゴ・チャベス率いるベネズエラのもの、そして湾岸地域の政府系ファンドのものになり、民主主義はモスクワから北京へと連なる独裁の枢軸に駆逐されてしまうはずだった。
しかし2008年後半戦は、この前半戦を頭からひっくり返してしまった。マルサスは再び歴史書の中に戻り、代わりに墓の中から掘り起こされたのがジョン・メイナード・ケインズだった。市場が自由気ままな魔法を働くのを一歩下がって見守ってさえいれば、国家の役目はそれで終わりだなど、そんなわけはない、それで済むわけはないと、各国の政治家はそう思い至ったのだ。
株式市場の急落によって、プーチン氏の台頭は勢いを削がれた。中国といえども、欧米を襲ったみじめな経済混乱の余波を免れていない。そして少し前まで、夢の黄金郷「エルドラド」もかくや……と思われていたドバイさえもが、今やその輝きを失っている。
世間の目のなかで、投資銀行家に対する評価は失墜し、マスコミ人への評価よりも下に落ちてしまった。中央銀行は、問題はインフレではなくデフレなのだと気づくに至った。1バレル150ドルという原油価格がいつまでも続くと思い込んだように、今や私たちは、この不況がいつまでも果てしなく続くのだと思っている。
2008年の前半と後半と結びつける共通項がなにかあるとしたら、それは伝統的なものの考え方では目の前に展開する事態を全く説明できなかったという、その一点に尽きる。相次ぐ危機に対する政府の反応の仕方は、かつてならエキセントリックだと批判されるようなものばかりだが、今やそれが主流になってしまっている。
それよりもむしろ、今おきている事態の真相を伺い知ることがいかに難しいか。これこそが私たちが学ぶべき、より大きな教訓だ。経済の相互依存性や、国際社会における「パワー(力)」が東半球の新興国に傾斜しつつあること。これはだいぶ前から、議論されてきたことだ。しかしこうした変化が実際にどういう意味を持つのか、ようやく目の当たりにするようになったのは今年が初めてなのだ。
金融については、世界市場の統合のペースに、政治の統治力が追いついていないことが、大きな気づきだった。市場同士の連結性が日に日に緊密さを増しているというのに、各国の政府同士、中央銀行同士、規制当局同士は全くそれに追いついていけなかった。
その結果、どうなったか。本来リスクのきわめて高いサブプライム・ローンをなぜか「AAA」級の最優良金融商品に変身させたのが、錬金術にも似た金融マジックだったのだが、このマジックに内在していた覚束なさをそもそも見通していた人たちでさえ驚くほどの、強力な毒性と感染力をもって、危機と言う伝染病が瞬く間に広まって行ったのだ。
この金融危機の地政学的な影響について言えば、これはまさに立場の逆転にほかならない。今年まで金融危機とは、「自分」たちではない「連中」に起きることと相場が決まっていた。「連中」とはたとえば中南米とか、アジアとか、ロシアやアフリカなどのこと。しかし信用収縮は欧米で始まったのだ。台頭する新勢力の無責任ゆえに起きたことではない。世界の最たる先進国が贅沢三昧を尽くし、規制に失敗したからこそ起きたことだった。今回の危機においては、債権者は新興国で、債務者が欧米なのだ。
2008年に起きた驚くべき事態の、より大きな意味合いはまさにそこにある。力の趨勢が変化しつつあり、その変容に反応して既存秩序がひび割れた。それが2008年の世界だ。中国とインドの台頭、それに相対するアメリカの衰退、そして国際システムの力不足——こうしたことは誰の目にも明らかだ。冷戦後の世界秩序がこうやって過ぎ去って行くことの意味を、私たちはついに知ることになったというわけだ。
今の世の混沌が示すもの。それは、過去何百年にもわたって掌握してきた経済的な、そして政治的な覇権を、欧米が手放そうとしていることにほかならない。また同時に、グローバリゼーションがいかに国民国家に多くを要求しつつ、その過程で国民国家を疲弊させているのかも、私たちは目の当たりにしているし、さらには、旧秩序における多国間の境界を打ち砕いて、今や多極的な国際システムが生まれつつあるのだ。
私たちはこれまで、こうした展開について話し合ってはきた。しかしきちんと理解はしてこなかった。夜空の星を見上げて未来を探るのは、別に悪いことではない。しかし真実はむしろ、現在の中にこそ見つけられるかもしれないのだ。
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