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日本IT復活へ新たなエコシステムを・英エジンバラ大教授
日本のIT産業が国際競争力を失いつつある、と言われて久しい。政府は昨年から「ICT国際競争力強化プログラム」を進め、今月「ICT成長力懇談会」を発足させたが、効果が現れるには時間がかかる。日本のITが世界の舞台で再浮上するチャンスはあるのか。英国エジンバラ大学に「日欧技術研究所」を創設し、海外から日本のIT産業を研究しているマーチン・フランスマン教授に話を聞いた。
――携帯電話端末メーカーを筆頭に、日本のIT産業の国際競争力の低下が叫ばれている
日本には数多くの端末メーカーがあり、激しい競争を繰り広げながら魅力ある製品を作ってきた。皮肉なことだが、まさにその競争のために、端末が機能的に高度化しすぎ、コストもかかる製品が主力になってしまった。それは世界の多くの地域で求められる携帯電話とはかけ離れたものであり、結果的に国際競争力を失ってしまった。
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今月スペインで開かれた界最大級のモバイル業界イベント「Mobile World Congress 2008」の会場。日本企業の存在感は薄い〔AP Photo〕
そして多くの端末メーカーがある以上、各社のビジネス規模はどうしても比較的小さいものになってしまう。世界市場では、端末の特徴よりも、商品流通のためにどれだけ投資できるかがシェア獲得のカギになることも多い。そうなると、ノキアのような専業メーカーにはなかなか太刀打ちできないものだ。
今後端末メーカーの統合が進み、それぞれが一定の規模を持つようになれば事情は変わってくるだろう。また新料金プランの導入により、ユーザーがこれまでのように短い期間で端末を買い換えることを控えるようになれば、メーカー側も少し腰を据えて海外市場をにらむ余裕が出てくるのではないか。
――3月にはNTTがNGN(次世代ネットワーク)のサービスを始める。機器メーカーにとってこれはチャンスとなるか。それとも携帯電話の二の舞になるのか。
日本がいち早くNGNを実現したということは、日本国内の機器メーカーにとっては当然アドバンテージとなるのではないか。販売奨励金など、特殊な事情があった携帯電話の市場とは話が異なってくると思う。
――現在の日本のIT産業を、他の地域と比較してどのように見ているか。
日本と欧州のIT産業は、似たような状況にあると見ている。いずれもアマゾン・ドット・コム、ヤフー、グーグルに代表される米国のIT産業にチャレンジしつつ、中国やインドなどの新興国の追い上げに備えるという厳しい立場にあるからだ。
そして、言うまでもなくIT産業はその重要性をますます高めつつある。それ自体の国内総生産(GDP)への貢献はもちろんだが、経済成長のけん引役であると同時に社会インフラを提供する存在でもある。いかに厳しい立場であろうと、IT産業の継続的な成長は維持していかなくてはならない。そのためのカギはイノベーションをいかに促進できるか、ということにあると思う。
フランスマン教授の近著「The New ICT Ecosystem」。IT産業のエコシステムについて具体例を挙げて解説している
――そのイノベーションのために、日本は何をしなくてはいけないのか。
新しいIT産業の「エコシステム(生態系)」について考えることだ。ITの世界では、ハードウエアメーカー、通信キャリアやインターネットプロバイダー、アプリケーションやコンテンツの供給者、そしてエンドユーザーといった様々な会社や人がそれぞれに密接な関係を持ち、影響しあいながら産業全体を発展させていく、という特徴がある。それはさながらエコシステムのような複雑なサイクルだ。
このエコシステムをトータルに見据え、イノベーションが起こりやすい状況を作り出していかなくてはならない。例えば米国IT産業のエコシステムでは、ベンチャーキャピタルやアントレプレナー(起業家)、そして大学などが重要な役割を果たしている。そのために新規参入や新しいビジネス領域の開拓を実現しやすい。これがイノベーションを誘発し、競争力の源泉につながっている。
――そこでの政府の役割はどうなるのか。
どの国の政府も「産業振興のためにはまず競争環境の整備を」と考えるものだ。もちろんそれは重要。しかし「競争をすれば競争力がつく」という単純な話ではないということに気付いてほしい。先に話したIT企業をとりまくエコシステムを十分に研究し、金融システムや教育機関などの役割などにも目を向け、総合的な戦略を立てる必要がある。
――この数年、日本ではよく「iPodの主要部品は日本製なのに、なぜiPodは日本から生まれなかったのか」という議論がなされている。これも日本のエコシステムの問題なのか。
iPodはやや特殊なケースで、分けて考えたほうがいいだろう。これは米国のエコシステムの勝利というよりは、アップルという会社だからこそ生まれたモデルだ。ウィンテルが席巻するPC市場において、デザインを武器にニッチではあるが忠誠心の高いファン層を獲得する、という戦略で生き延びてきたアップルが、同じ手法でミュージックプレーヤーを開発したに過ぎない。むしろ学ぶべきは、グーグルやヤフー、アマゾンといったアプリケーションプロバイダーが世界的な成功を収めているという事実にあると思う。
私は日本のIT産業の将来については楽観視しているが、さほど安心できる状況にないのも確かだ。競争環境の整備だけでなく、イノベーションを生み出すようなエコシステムを構築し、国際的な競争力を高めてほしいと願っている。
[聞き手:日経メディアラボ・市毛勇治]
http://it.nikkei.co.jp/trend/special/interview.aspx?n=MMITaa000018022008
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