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「日朝、再び「持久戦」か」----(辺真一のコリア・レポート)
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投稿者 ミスター第二分類 日時 2008 年 11 月 05 日 08:55:31: syFUAx3Wc1pTw
 

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10月31日(金)
「日朝、再び「持久戦」か」----(コリア・レポート)

 漆間巌官房副長官は10月29日の拉致問題対策本部関係省庁対策会議で拉致問題解決の手段として行なっている経済制裁について「今の北朝鮮への制裁を検証した結果、北朝鮮が痛痒を感じないものであって、圧力にはならない」と自省したうえで、「大事なのは北朝鮮が本当に困る圧力をかけられるかどうかだ。今後、工夫する必要がある」と発言していました。

 漆間巌副長官は04年8月から07年8月まで警察庁長官のポストにありましたが、「北朝鮮への圧力を担うのが警察。潜在的な事件を摘発し、実態を世間に訴える。北朝鮮関係者が起こしている事件は徹底的に捜査するよう全国警察に求めている」と述べるなど圧力路線の陣頭指揮を取ってきたことで知られています。

 小泉訪朝で拉致問題がクローズアップされた過去6年間、日本政府はこれまで北朝鮮に対して様々な経済制裁法案を成立させました。

 キャッチーオール規制と改正外国為替法(北朝鮮への送金を規制する法律)を2002年に成立させたのを皮切りに2003年には外国船舶安全性検査(PSC)を実施しました。また、2004年には特定船舶入港禁止法(万景峰号の入港などを禁止する法律)を成立させ、2005年には改正油濁損害賠償法(保険会社に未加盟の船の入港を禁止する法律)を通しました。保険付き郵便物(限度額48万円)の検査を強化し、郵便窓口で送金主への金額の確認。郵便物の開封を義務付けました。また、外国為替及び外国貿易法に基づき、国内の輸出関連企業100社を対象に軍事転用されていないか、抜き打ち検査なども行なってきました。

 そしてこれらの規制法案とは別途に、2004年12月には食糧支援など人道支援の凍結を決め、さらに2006年7月には万景峰号の入港を禁止しました。2ヶ月後の9月には資金の移転防止措置も講じました。そして、10月には北朝鮮の核実験との関連で全ての船舶の入港禁止と北朝鮮製品の輸入禁止、北朝鮮からのチャーター便の乗り入れ禁止などの制裁措置を発動しました。朝鮮総連に対しても締め付け、規制を強めてきました。

 一連の経済制裁により、金融機関による送金(貿易は除外)は2001年に5億8千7百万円あったのがほぼゼロとなりました。現金などの携帯輸出額(2001年に38億4千万円)も、大幅に減少されました。北朝鮮船籍の入港は2002には1,415隻あったものこれまたゼロとなりました。アサリも紅ズワイガニなどカニの輸入も2005年3月からは全面ストップとなりました。

 その結果、日朝貿易は2001の4億7千5百万ドルから昨年は1千万ドルを切って700万ドルまで激減しました。もはや国家間の貿易とは言えないほどです。それにもかかわらず制裁、圧力の象徴的存在である漆間巌官房副長官が「今の制裁は北朝鮮への圧力にはならない」と発言するとは意外でした。これだけやっても効果が上がってないことを実質的に認めたことに等しいからです。

 今日の事態を早くから予測した人がいます。小泉純一郎元総理です。小泉元総理は現職の06年3月の国会答弁で「私が訪朝した2002年当時とは随分違う。韓国や中国が経済的に支援している中にあって日本だけが経済制裁して効果があると思えない」と言っていましたが、その通りの結果となりました。

 韓国と北朝鮮の南北貿易は2001年の2億7千6百万ドルから昨年は17億9千万ドルと6倍の伸びを示しました。中朝貿易も2001年の7億3千7百万ドルから昨年は19億ドルに急増しました。中国は鉱山の利権を得るため北朝鮮に12億ドルも投資していますし、韓国の北朝鮮への経済支援は2002年から07年までの間12億3千万ドルに上っています。

 北朝鮮とは疎遠の関係にあったEUも北朝鮮との貿易に本腰を入れ始め、今年上半期は昨年同期の26%増の8千8百万ドルを記録しています。日本と同じ拉致被害者を抱えるタイも昨年は1億9千万ドルと減少したものの06年には4億ドルの貿易量がありました。これでは日本がいくら北朝鮮に対して兵糧攻めしても、効くはずがありません。

 米国の敵性交易法の解除とテロ支援国指定解除により北朝鮮が今後、世界銀行やIMFなどへの加入が認められれば、ベトナムの例を取るまでもなく、国際金融機関からの融資、借款を得ることが可能となります。韓国の現代経済研究院の報告書(米国の対北経済封鎖解除の経済的効果)によれば、米国との貿易が正常化し、北朝鮮が世界貿易機構(WTO)に加入すれば、北朝鮮の貿易額は現行の29億ドル(07年度)から19倍の551億ドルに伸びるとのことです。

 麻生総理は10月15日、全閣僚をメンバーとする拉致問題対策本部の会合を2年ぶりに開き、「事件発生からすでに30年という時間がたっている。一刻の猶予も許されない」と強調したうえで「日本は日朝関係を前進させる用意があるとずっと言っている。待っているのは北朝鮮の行動であり、早急な帰国実現を強く求める」と、北朝鮮が8月11日に約束した拉致被害者の再調査を速やかに開始するよう迫りました。

 しかし、麻生総理の意に反し、北朝鮮は22日、日本政府が制裁をさらに半年間延長させたことを理由に「労働新聞」を通じて8月11日の日朝合意(拉致被害者再調査や制裁一部解除)について、「麻生政権がこれらの合意を白紙化した」と主張し、「日本と懸案を協議し解決することは空虚であり、時間の浪費でしかない」と、再調査する意思がないことをほのめかしました。

 ならばと、麻生総理は30日、「対話と圧力は北朝鮮との交渉の基本で、常にどういうふうにやるかが課題だ。8月以降、話が進んでいない。それを見ながら考える」と述べ、再調査がさらに遅れれば北朝鮮への追加経済制裁を行う可能性を示唆しました。これを補佐する形で河村建夫官房長官も「(再調査の動きが)全然起きないとなれば、さらに圧力を強めていかなければいけない」と強調しました。麻生総理、河村官房長官、漆間副長官の発言は換言するならば、北朝鮮が動かなければ、福田政権の対話路線から再び安倍政権の圧力路線に回帰することを宣言したに等しいと言えます。

 北朝鮮が本当に困る圧力とは何か、今後麻生政権がどのような制裁を追加するのか、またそれに北朝鮮がどう反応するのか、日朝は再び持久戦に入りつつあります。
 

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