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でもオリンピック前は事を起す絶好のチャンス(邱 永漢 HI-Q)
邱 永漢氏のコラム”もしもしQさん、Qさんよ” より
3記事を転載します。
第2946回 ポタラ宮の前に頭を抱えてしまいました 08/04/03
第2948回 でもオリンピック前は事を起す絶好のチャンス 08/04/05
第2949回 でもオリンピックはちゃんとひらかれるでしょう 08/04/06
■第2946回 ポタラ宮の前に頭を抱えてしまいました
http://www.9393.co.jp/moshiq/kako_mos/2008/08_0403_moshiq.html
6月にチベットに行くのを断念したのは、
医者からさしとめられたからですが、
偶然にも程なくラサで一騒動起って、
「計画をとりやめてよかったですね」
と慰められているところです。
5年前にチベットに行った時も、
実現までに2回もペンディングをくりかえしました。
1回目は同じように
ドクター・ストップがかかってとりやめたのですが、
もう1回は行く前に北京の三全公寓で転んで足を挫いたためです。
それでもあきらめきれずに、
とうとうチベットの土を踏んだのですが、
同行した40名の中で高山病にもかからず、
頭痛とも関係がなかったのは
何と一番年をとった私1人だけでした。
私の面倒を見ると言ってついてきた私の中国人の秘書は
ラサにいる間中、3日間も寝込んで
逆に私に面倒を見てもらう始末でした。
どうして私だけ何ともなかったかというと、
「海千山千超えてきた人は高山病に強いんだ」
とわけ知りの人が後講釈をしていましたが、
本当かどうかは保証の限りではありません。
世界の屋根と言われるチベットのラサに建ったポタラ宮は
誰でも一生に1回は行ってみたいところです。
でもタイム・カプセルを
500年間も昔まで戻した世界に戻ったようなもので、
私たちが住めるところではありません。
「坊さん多くして粥少し」の格言通り、
いまでも貧しい農村を坊さんが支配しているところですから、
中国政府も頭を抱えています。
道をひらいたり公共設備の予算を組んでも、
お寺を建てるのに使ってしまうので
目を離せないときかされていますが、
300万人にも充たない人口のところに漢民族を自由に入れると、
忽ち台湾の高山族のような運命を辿ることは目に見えています。
では文字通りの自治区にしてやって行けるかというと、
経済的な自立は困難だし、
かと言ってインドに入られて主権争いをする方向に動いたら、
もっと困ることは目に見えています。
日本ではダライ・ラマ14世に同情する世論が強いようですが、
中国政府はどうするのが正しいか、
誰か教えてあげてくれませんか。
私はポタラ宮の前に立って頭を抱えてしまいました。
■第2948回 でもオリンピック前は事を起す絶好のチャンス
http://www.9393.co.jp/moshiq/kako_mos/2008/08_0405_moshiq.html
外国には中国のことを心よく思っていない人たちがたくさんいます。
中国の経済発展に対して嫉妬まじりの批判をする人も
それに負けないくらいいます。
かつて日本が日の出の勢いで発展していた時に
ジャパン・バッシングが盛んだったことは
まだ皆さんの記憶に残っている通りです。
そういう人たちは北京オリンピック前に、
何か中国が面子を失うようなことが起ればいいと
ひそかに期待しています。
オリンピック前は
中国も武力に訴えることを控えざるを得ませんから、
チベットや台湾など政治的に未解決の問題を抱えている地域では
事を起す絶好のチャンスでもあります。
台湾で陳水扁が次々と難題を持ち出して、
中国よりもアメリカを困らせてきたのも、
この時を逃しては二度とチャンスがないと思っているからです。
チベットで坊さんたちが漢人を狙って暴行を加えるのも、
世界の注目を浴びたい一心からで、
決して偶発的なものではありません。
独立とか、自治とか、そんなに簡単に片づかないことを
中国だけでなく、世界中が抱えています。
台湾の場合は、一足先に台湾に渡ったいわゆる台湾人と、
蒋介石について戦後渡ってきた人々との間のぎくしゃくが、
中華人民共和国と中華民国との対立に受け継がれ、
更に中華民国の中で
独立を志向する民進党が政権を握るようになって8年、
結果は国民党時代よりも利権争いと汚職まみれの台湾に
転落してしまいました。
「義経びいき」の日本人は
大陸にいじめられている台湾人の抵抗に
同情的な人も少くはありませんが、
現実は台湾の主要産業の9割方が大陸に既に進出しており、
1年に470億ドルもの黒字を台湾にもたらしています。
台湾人の方が経済的に先を進んでいるし、
大陸でもそれなりに尊重されているので、
台湾人が不当に扱われていることはありません。
あとはお互いに政治的に満足のできる解決策を
どう見出すかに搾られますから、
少し時間がかかりますが、
チベットと同時に論ずることはできないと思います。
■第2949回 でもオリンピックはちゃんとひらかれるでしょう
http://www.9393.co.jp/moshiq/kako_mos/2008/08_0406_moshiq.html
台湾に比べると、チベットの問題は簡単でもあり、
その分だけ難題でもあります。
ラサに行くと、500年昔にかえったような感じですから、
あなたがチベットの人たちと共存するためには、
500年前の人たちと折り合う方法を考えなければなりません。
かつてアメリカに移民した人たちが
アメリカン・インディアンをどう扱ったか、
また台湾に渡った福建省や広東省の人たちが
原住民である高砂族をどう扱ったか、
それをいまやるとすれば、
どうやればいいのかということになります。
いまの台湾は2300万人の人口ですが、
原住民である高山族(いまはこう呼ばれています)は40万ほどです。
その中から議員さんも選ばれていますが、
大半の人たちが台湾人に同化されて、
そのオリジンを表に出す人はほとんどおりません。
もしチベットでも同じやり方をすれば、
どこにチベット人がいるのかわからなくなってしまいます。
現に内モンゴルでは漢人との混血がすすんで、
自分から名乗り出なければ、
誰が何人かの区別もできなくなっています。
モンゴル人は目が細く、目と目の間が離れているから、
人相を見たらわかると説明を受けましたが、
どうして目が細いかというと、
砂ぼこりが激しく、
何千年もまともに目を開けられなかったからだそうです。
もしチベットでも漢人を自由に入れたら、
たちまち同じことが起ります。
逆にチベット族を天然記念物として保護する積りなら、
チベットを別世界にしなければなりませんが、
世界中どこにでも人が行き来するグローバル化の時代に、
はたしてチベット人を
オラン・ウータンのように扱っていいものでしょうか。
胡錦濤さんはチベットの行政責任者をやった人ですから、
私なんかより現地の事情に通暁しています。
政治犯をどう扱うかは別として、
平和を保つにはどうしたらよいか、
対策の仕方が明朝、清朝時代と同じだとはとても思えません。
従ってオリンピックがひらけなくなるようなことにはならないと
私は楽観しています。