★阿修羅♪ > 戦争99 > 462.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
中東情勢とドル支配体制の崩壊
−イラク撤退がサウジアラビアに及ぼす影響―
2008.1.3
現在、アメリカ石油主義はジレンマに陥っている。
中東の石油獲得のために2003年3月に開始されたイラク戦争は、原油高騰時代の到来と時期一致し、その原油高が原因となり、ドル安を加速させている。
半年前と比べ確度を高めたアメリカ民主党政権の発足は、その4年の政権中に世界のドル体制崩壊を招く事になるのは決定的だろう。
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=USDJPY=X&d=c&k=c3&a=v&p=m130,m260,s&t=ay&l=off&z=m&q=l&h=on
アメリカによる中東・アフリカでの中国との石油争奪戦が進行している中、原油高騰がアメリカ経済の性格により、石油獲得量との採算がまるで合わないほどに、ドル安を進行させている。
『SAPIO』今年1月23日号で、高齢のZ.ブレジンスキー(リベラル)が段階的イラク撤退論を主張しているが、米軍のイラク撤退は、イラクと中東でのイランの支配力・覇権を増大させるのは既に常識論だ。米軍のイラク撤退は、スンニー国家サウジアラビアにとって軍事的に裏切り行為と映り、これが契機となって、昨年後半から言われているサウジアラビアのドル本位制からユーロ本位制への切り替えを招く可能性は充分にあると思う。
イランが核兵器を保有した場合、サウジアラビアは核兵器開発に踏み切るとかなり以前から言われていた。現在、サウジアラビアはイランが核兵器開発に成功した場合を想定し、核兵器開発の技術供与をしてくれる国を考えているはずだが、アメリカは他国に核兵器開発の技術供与をした例はない。まして社会治安が悪く、腐敗していて、過激派による政権転覆の恐れのあるサウジアラビアへの技術供与など考えられない。
ここで考えられるのは、中国共産党によるサウジアラビアへの核開発援助だ。
サウジアラビアと中国の石油協力
2006年6月のアルジャジーラは、アメリカの国家安全保障評議会の石油問題分析担当者であるケネス・ポラック氏とのインタビューの中で、
「中東産油国は、中国がやがて同地域における米国の覇権に取って代わるだろうと見るようになっている。」
との見方を載せているが、これは当然の成り行きになりつつある。
「石油をめぐる米・中の角逐 米国の中東覇権に潜在的な脅威 [2006年6月29日 アルジャジーラ]」
http://www.asyura2.com/0601/war81/msg/747.html
上記のアルジャジーラの記事から引用すれば、
<頑固な反共国家で、米国企業が油田開発に当たってきたサウジアラビアでさえ、米国との外交関係が今後、悪化する場合に備えて、中国を自国の石油・ガスの受け入れ先として関係改善しようとしている。
ポラック氏は「9・11事件の結果、起きた米国での反サウジの動きを見て、サウジは、米国との戦略的提携関係が悪くなることもあると深刻にとらえたのです。基本的には、サウジは米国に代わるものが必要でした」と述べた。>
<(米国の)カトー研究所のテッド・カーペンター副所長(国防・外交政策担当)はアルジャジーラに対し、「現在、サウジは中国を非常に重要な石油のお客さんと見なしていますが、今後の数十年間で、ますます重要性を増すでしょう。」と語った。>
ハドソン研究所の日高義樹氏は、サウジアラビアと中国の石油協力体制は1999年から始まったとし、中国のサウジアラビアへの接近を2006年1月に『米中石油戦争がはじまった』の著作で警告し、おおむねこう述べている。
<中国はイランの石油はもとより、新米国家のサウジアラビアやクウェートの石油にも手を伸ばしており、一例を挙げれば、アメリカ資本であったサウジアラビアの国立石油企業サウジ・アラコムの株の20%を現在中国が取得、他の石油共同事業を見てもサウジアラビアは中国寄りの姿勢を強めつつある。>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569648061/qid=1144597148/sr=8-1/ref=sr_8_xs_ap_i1_xgl
サウジアラビアのドル本位制からの脱退
さて、現在おきている世界的ドル離れは、競争通貨の力の規模とドルの置かれている軍事情勢などからして、従来のドル安危機とは比較にならないと言われている。ドル体制を最も支えているのは、サウジアラビア・リヤル、日本円、中国人民元の3つの通貨だ。
ヨーロッパのユーロと共に、ルーブル・ロシアと反米連合を作り、ドル体制打倒を目標とする中国は、すでに「4000憶ドルとも1兆ドルとも言われる貿易によってかき集めたアメリカのドルを金かユーロに変えようと動き始めている」。
いま、湾岸協力会議(GCC)がドルペッグ制や自国の通貨切り上げなどを検討・協議しているが、サウジアラビアが中国との結びつきを深めている中で、サウジアラビアが、ユーロに対して余りにも安くなっているドル本位制から脱退すれば、湾岸諸国を始めとする多くの国々でドミノ現象がおき、世界のドル体制は一挙に崩壊する可能性は確かに高いだろう。
前述の『SAPIO』1月23日号の誌上では、カレル・ウォルフレン氏が、「もしドルが崩壊しかかれば、中国はドルをサポートしないだろう」という北京大学の専門家の話を短く紹介している。
サウジアラビアのドル本位制からの脱退について、前述の日高氏は、昨年12月に出版された著作、『資源世界大戦が始まった』の中の「石油高がドル体制を終焉させる」の章で、アメリカは脱退阻止のために、アメリカの「強力な軍事力」を切り札として切って来ると予想している。これには、イランからの攻撃に対するサウジアラビアの安全保障の約束も含まれている。しかしサウジアラビアからすれば、暴落するドル資産による財政悪化と、それによってカロリーを騰げるであろう国内での過激派のテロと社会混乱をも恐れ、(過激派による政権転覆などがおこらないうちに)ドル本位制からの脱退を選択する事になると思う。
なぜなら、この千載一遇の状況を、中国共産党が見逃さないと考えるからだ。
米軍のイラク撤退後の、イランの核への脅威が高まっているサウジアラビアに対して、中国共産党が核兵器開発の技術供与のオファーをかけたらどうなるだろうか。
イランのアハマディネジャドは、世界のドル支配体制を崩壊させるという目標のためならば、中国によるサウジアラビアへの核開発援助を容認するかもしれない。イランの核兵器開発は中国による技術供与が行われていると見られているが、一国による中東世界の覇権を狙うイランは、アメリカのドル体制が崩壊した後、中国とロシアの力をかりてイスラエルとの戦争に勝ちさえすれば、核兵器を持ったサウジアラビアを攻め落として野望を実現できる。
また、サウジアラビアに対して中国による核兵器開発の技術供与のオファーが行われた場合、それが初めからイランと中国による「罠」であり、謀略である可能性もある。
関連リンク:
「『イラク撤退論』と中国による中東石油支配の始まり」
http://www.asyura2.com/07/war91/msg/889.html
参考文献:
『資源世界大戦が始まった』 日高義樹 ダイヤモンド社 2007年12月刊
『米中石油戦争がはじまった』 日高義樹 PHP研究所 2006年1月刊
DOMOTO
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html