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トルコの選択 中東全域を不安定化する懸念(10月31日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071030ig91.htm
トルコ軍が、イラク北部に拠点を構える武装組織、クルド労働者党(PKK)への越境攻撃の構えを見せている。
ただでさえ流動的な中東地域で、新たな武力衝突が引き起こすリスクについては、いくら強調しても、し過ぎることはない。トルコ政府の自制が求められる局面だ。
トルコのクルド人組織、PKKは、トルコからの独立を主張し、主にトルコ国内で武装闘争を展開してきた。10月にはトルコ軍と激しい衝突を繰り返し、トルコ軍側に大きな人的被害を与えた。
トルコが問題視しているのは、PKKがイラク北部の山岳地帯を出撃地点としていることだ。トルコはイラク政府に対し、その拠点閉鎖などを求めてきた。
しかし、イラク北部は、PKKの取り締まりに消極的なクルド自治政府が統治している。イスラム教シーア派出身のマリキ首相が率いる中央政府の影響力は、きわめて限られている。
トルコ国会が、エルドアン政権が提出した、PKK掃討を目的とするイラク北部への軍事作戦を承認した背景には、このような事情もある。
トルコは、国内に1000万人以上ものクルド人を抱える。歴代政権は、国家の安定に直結するクルド問題の動向に神経をとがらせ、時として強硬な対応を示してきた。
ただ、この時期にトルコが、イラク北部のPKK拠点への越境攻撃に踏み切れば、その影響は計り知れない。トルコの強硬姿勢があらわになっただけで、原油価格が暴騰したことでも明らかだ。
イラク北部のクルド地域は、イラクの中で唯一、比較的安定を保った地域だ。トルコが越境攻撃に踏み切れば、イラク情勢はさらに混迷するだろう。
国内に同じクルド問題を抱えるイランやシリアは、どう出るか。その対応によっては、中東全域で情勢の流動化が避けられないのではないか。
米国を中心に、国際社会がトルコに自制を迫っているのには、こうした背景がある。しかし、その米国で、下院外交委員会が、第1次大戦中の「アルメニア人虐殺」をめぐる対トルコ非難決議を採択したことが、事態を複雑にした。
トルコは、対米姿勢を硬化させた。イラクへの越境攻撃を支持するトルコ世論が、反米の主張とも重なり、ブッシュ政権の外交努力をそいでいるのは、米国自身の“独善”がもたらした結果だ。
今週末、イラク安定化のための国際会議がトルコで開催される。日本を含む参加国は、トルコの自制を求めるだけでなく、有効な打開策を探る必要がある。
(2007年10月31日1時40分 読売新聞)