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2007.10.26(その1)
森田実の言わねばならぬ[679]
平和・自立・調和の日本をつくるために【474】
日本人の平和意識
――戦後62年、2007年夏の“変化”
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07年7月29日の参院選で民主党が大躍進し、参議院で与野党逆転が実現したことは、日本の政治にとって画期的なことであった。民主党は参議院において第一党となり、新参議院議長に民主党出身の江田五月氏が就任した。議院運営委員長には民主党の西岡武夫氏が就任。常任委員会の委員長ポストも民主党が最多を占めた。参議院運営の主導権は民主党が握った。
この結果、自公連立政権は衆議院で3分の2の多数をもちながら、自公2党だけで法律を制定することができなくなった。衆議院で自公2党だけで強行採決しても、その法律案は参議院で審議されなくなる。
さらに、いままで行われてきた秘密行政・秘密外交ができなくなる。いままで衆参両院の与党多数に支えられて非民主的な秘密行政がまかり通ってきた。秘密外交が行われてきた。行政府が野党の情報公開要求を突っぱねつづけることができたのは、衆参両院で多数をもつ与党の力に支えられていたからだった。だが、07年7月29日の参院選で与野党逆転した結果、もはや情報の秘匿はできなくなった。
もう一つ重要な変化がある。朝日新聞社と東京大学政治研究室の共同調査(07年8月上旬)によると、7月29日参院選以後の参議院議員のうち、憲法改正派は3分の2を大きく割り込み53%になった。これにより参議院で憲法改正の発議を流ことは不可能になった。憲法第9条改正については賛成31%、反対50%となり、憲法第9条の改正を含む憲法改正の発議は当分の間不可能になった。
これは、7.29参院選の当選者のなかに憲法改正反対派(とくに第9条改正反対派)が多かったことによる。民主党内に護憲派が増えた。 私はこの背景に日本国民の平和意識の深化があったのではないかと見ている。戦後62年を経て、超高齢期に入った戦争体験者が、62年前の悲惨な戦争体験を語り始めた。
私は1932(昭和7)年生まれである。第二次大戦が終わったとき中学1年生だった。ほんの4カ月程度の短期間だが学徒動員も体験した。
大学時代の友人に、東京での戦災の体験者がいる。彼はその体験を今年初めて娘さんやお孫さんに語ったという。なぜ今まで話さなかったことを今年初めて話したのか、彼は私にこう言った。
「ブッシュ大統領に追従している小泉純一郎(前首相)や安倍晋三(現首相)を見ていて、平和がが危ないと本気で思うようになった。とくに安倍首相。戦争のおそろしさを知らず、戦争をおそれず、戦争をしたがっているように見える。ブッシュ・小泉・安倍らにまかせていたら大変なことになると心配になった。今までは話さなかったが、今年は家族みんなに戦争の悲惨さを話して聞かせた。戦争だけはしてはいけないとも話した」。
かれは官界と学界で生きてきた男で、私とは異なり穏健保守の立場に立っていた。他の友人からも同じような話を聞いた。多くの人が安倍の言動を見て、日本の将来が心配になった。
戦場に赴き戦場の大悲惨を直接体験した多くの人々が、戦後62年間沈黙をつづけてきた。とくに戦場において「敵」を殺傷した体験者はまったく口を閉ざして生きてきた。
10年ほど前、学習院大学法学部政治学科で「現代社会思想」の講座を担当していたとき、私はレポートのテーマに「戦争体験を体験者に直接聞く」を提示したことがあった。数百名の受講者のうち、実際に戦争体験者に直接取材できた学生は十数名にすぎなかった。それも取材対象者はすべて女性(多くの場合祖母)だった。男は誰も戦場での体験を語ろうとしなかったのだ。
だが今年、80歳台、90歳台の体験者が生々しい体験を語り始めた。これが新聞記事になった。NHKではテレビとラジオで放送した。各地で戦争体験をテーマとする講演会が開催された。こうした戦争体験を語る運動の広がりが国民の平和意識を刺激し、これが7・29参院選に影響をもたらしたのではないかと思った。
そのなかでとくに重要な役割を果たしたのが池谷薫監督の映画「蟻の兵隊」ではなかったかと思う。自ら「敵兵」を撃ち「敵兵」を刺して殺した自己体験を語った元兵士の記録である。この映画運動が、多くの体験者が固く閉じていた口を開くきっかけを与えた。多くの体験者が「この世を去る前に言い残す」と言って語り始めたのである。これが日本国民の平和意識を揺り動かした。[電機連合機関誌『電機ジャーナル』2007年10月号「INSIDE OUTSIDE〈政治〉より]
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C03795.HTML
関連情報―
☆「蟻の兵隊」
http://www.arinoheitai.com/
☆映画「蟻の兵隊」がついに本になった!
http://www.arinoheitai.com/topics/topics.cgi
ついに映画『蟻の兵隊』が本になりました。
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紀伊国屋書店
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4103051310.html
JBOOK
http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/3389203/s/
関連投稿―
平和の尊さかみしめて 戦争テーマの3作品、来月4日から深谷で上映 /埼玉(毎日新聞)
http://www.asyura2.com/07/ishihara11/msg/286.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 10 月 25 日