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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070921-00000063-san-int
9月21日8時2分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070921-00000063-san-int
【ワシントン=山本秀也】米民間警備会社ブラックウォーター(本社ノースカロライナ州)の武装要員によるイラク民間人銃撃が引き起こした同国、米両政府の確執は、「テロとの戦い」を影で支えてきた“戦争の民間委託”という問題を改めて浮かび上がらせた。米外交官の護衛などを請け負う現代の傭兵は4万8000人ともいわれ、補給業務を加えれば駐留米軍(約16万人)を上回る18万人もの“社員”がイラクに展開する。その実態は米軍削減問題とも絡んで論議を呼びそうだ。
■破格の待遇
発端となった16日の銃撃事件は、援助業務にかかわる駐イラク米大使館員の車列が、首都バグダッド市内で武装組織の攻撃を受け、護衛を託されていたブラックウォーター社員の反撃で民間人が死傷したというものだ。
銃撃戦の詳細は不明ながら、同社の要員は、軍用の自動小銃と拳銃で完全武装し、日本などでの「警備員」のイメージとはまるで違う。同社は偵察任務も可能なヘリコプターや装甲車両も備えるなど、治安部隊と大差ない装備だ。要員にも米軍の特殊部隊経験者が多く迎え入れられている。
米軍特殊部隊のあるOBは、「高給に加えて頻繁に与えられる派遣先の国外での休暇など民間の待遇は破格だ」と語る。米兵の年俸に近い3万ドル程度を月給として支給する企業もあるという。
イラクで目下、活動中の民間の武装要員の数については、米国防総省が「2万5000人」としているのに対し、民間警備会社の団体は「4万8000人」としている。
■削減議論の枠外
ブラックウォーター社のように、イラクで警備業務を受託する民間企業は、「プライベート・セキュリティ・カンパニー(コントラクター)」(PSC)と呼ばれ、米、英系を中心に現在40社近くが業務に当たる。
2005年に襲撃を受けた日本人傭兵、斎藤昭彦さんの所属先、ハート社も、キプロスに本社を置く英軍特殊部隊OBらが作ったPSCだった。
こうしたPSCの業務範囲は、政府職員の武装警護から施設警備、補給業務の護衛など、本来は海兵隊が受け持つ公館警備や陸軍部隊の護送任務にまで踏み込んでいる。
このため、「民間警備会社」という訳語では「実態をとらえきれない」として、「民間保安会社」「民営軍事請負会社」などの訳語を使う日本の軍事研究者もいる。
米下院政府改革委員会が2月にまとめたPSCに関する報告書は、イラク再建関連歳費の12・5%に当たる38億ドル(約4300億円)が、「警備サービスへの支払いに充てられた」とし、PSCの活動は「伝統的な軍の役割を肩代わりしている」との認識を示した。
民間委託は、PSCによる警備業務のほか、米エネルギー企業ハリバートン社の関連企業が受託する米軍への補給や郵便配送、米兵の給食など軍の後方業務全般に及ぶ。AP通信によれば、イラクで米軍の軍務を肩代わりする民間人の総数は、18万人にも上っている。にもかかわらず、こうした民間企業は、戦闘部隊を中心に進む米軍の削減議論のらち外にある。
■米政府の苦境
民間企業への軍務委託に詳しい米専門家ピーター・シンガー氏は、外交専門誌フォーリン・アフェアーズ(05年3月)の論文で、民間委託の流れは1990年代半ばに始まったとし、(1)冷戦の終結(2)軍務と民間業務の線引きの変化(3)行政業務を民間に委託する世界的な流れ−などを挙げて、その背景を説明している。
ただ、給食や郵便配送とは違って、警備業務は武器の携帯や使用という強制力の行使を伴う。その法的な根拠は、イラク政府がブラックウォーター社に対し取り消した「業務認可」のみだ。今回の銃器使用によるイラク民間人の死傷のほかに、収容者の虐待が明るみに出たアブグレイブ刑務所でも、PSCの民間要員が関与していた。
米政府は、PSCの認可取り消しがイラクでの活動全般に影響を与えかねないとみて、「民間人への冷血な殺人は黙認できない」(マリキ首相)と態度を硬化させるイラク政府の説得に躍起だ。
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最終更新:9月21日8時2分