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09/10/2007
米映画界で戦争テーマが復活、話題作が続々登場
9/11テロ以降、愛国の嵐と自主規制の波に押され政府批判を控えていたアメリカ映画業界が、
怯えながらも再び地上に姿を現しはじめている。
先週末までイタリアで開催されていた第64回ヴェネチア国際映画祭で、名匠ブライアン・デ・パルマ
監督の新作『リダクティッド(Redacted)』が銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した。これはアメリカ政府
にとって非常に都合の悪い評価である。
『リダクティッド』は実話を元にした戦争映画( http://www.time.com/time/arts/article/0,8599,1658403,00.html )で、
その実話とはズバリ、イラク駐留米軍兵士による市民虐殺事件である。
2006年3月12日、バグダッド南部マハムディヤ(Mahmoudiya)で、5人の泥酔したイラク駐留米軍兵士が、
一般市民の住宅を襲撃し、14歳のイラク人少女をレイプし殺害、さらに少女の両親と妹も射殺した。
犯人グループとされる米軍兵士たちは、ジェシー・スピールマン米陸軍初等兵、ジェイムズ・バーカー初等兵、
ポール・コルテス三等軍曹、ブライアン・ハワード初等兵、スティーブン・グリーン初等兵。このうち、ジェシー・
スピールマン米陸軍初等兵はすでに米国内裁判で懲役110年の有罪判決を受けて服役する見込みだが、
10年で仮出所も可能という条件がついている。また、グリーン初等兵はレイプ直後に少女を射殺し、
遺体に灯油をかけて燃やし証拠隠滅を図った件で死刑宣告される見通しである
( http://www.huffingtonpost.com/huff-wires/20070804/army-rape-slaying/ )。(マハムディヤは戦場ジャーナリスト
の橋田信介さん( http://ja.wikipedia.org/wiki/橋田信介 )が殺害されたといわれる場所でもある)
映画祭で行われたインタビュー( http://www.editorandpublisher.com/eandp/news/article_display.jsp?vnu_content_id=1003634107 )によれば、デ・パルマ監督は米国大手メディアが現在進行中の戦争の
実像をまったく伝えていないと憤慨しているらしい。今回の新作では、そうしたメディアによる
『編集済み(Redacted)』のイメージではなく、ネット上で流通する米軍兵士が投稿した戦場風景や
動画を作品中に盛り込み、イラク戦争のリアリティを存分に伝える作品に仕上がっているという。
イラク戦争をテーマに選んだのはデ・パルマだけではない。9月14日から全米公開される『エラの谷
(In the Valley of Elah - http://wip.warnerbros.com/inthevalleyofelah/ )』は、イラク駐留米軍兵士として
バグダッドから帰還した直後に行方不明になった息子を、退役軍人の父親が捜しに出かけるという
物語で、米軍帰還兵のPTSD問題がテーマになっている。監督は『クラッシュ』のポール・ハギス。
主演はトミー・リー・ジョーンズ、他にシャーリーズ・セロン、スーザン・サランドンが共演する注目度の
高い作品である。
ジョン・キューザック主演の『Grace is Gone( http://movies.yahoo.com/movie/1809426672/info )』は、州兵の妻を
イラク戦争で失った主人公の主夫(キューザック)が、二人の娘に母親の死を告げられず逡巡するロード・
ムービー風ドラマで、戦死する妻をマリサ・トメイが演じている。戦争と死が日常化するアメリカ社会の不安
を描き、小作品ながらすでに評判を呼んでいるようだ。
『ツォツィ』で知られるギャビン・フード監督の最新作『Rendition( http://www.renditionmovie.com/ )』は、CIAの悪名高き
テロ容疑者極秘拉致活動( http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/06/08/AR2007060800985.html?nav=hcmodule )をテーマにした問題作。平凡なアラブ系アメリカ人男性が、ある日突然、空港でCIAに拉致され、
モロッコの秘密刑務所に収容され、テロ容疑者として拷問を受ける物語で、このような活動がCIAによって実際に
世界各地で行われていることが、現在調査報道によって明らかになりつつある。(詳細は書籍『CIA秘密飛行便
―テロ容疑者移送工作の全貌 - http://www.amazon.co.jp/gp/product/4022502665?ie=UTF8&tag=gloomynews-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4022502665 』で報告されている)行方不明になった夫を
捜索する妻にはリース・ウィザースプーン。拉致を指示する人物をメリル・ストリープが不気味に演じている。共演に
ジェイク・ギレンホール、ピーター・サースガード、アラン・アーキン。(2007年10月19日全米公開予定)
“ハリウッドの良心”とも呼ばれる大御所、ロバート・レッドフォードが監督・主演する最新作『Lions for Lambs
( http://lionsforlambs.unitedartists.com/ )』はアフガニスタン侵攻作戦に触発されたと思われる大作。ここでもメリル
・ストリープが重要な役を演じているが、何と言ってもトム・クルーズが演ずるタカ派の“カリスマ大統領候補
ジャスパー・アービング上院議員”に注目したい。「テロとの戦いに勝ちたいか?イエスかノーか?」と迫る
クルーズは、民主党大統領候補ジョン・エドワーズ(前上院議員 - http://johnedwards.com/ )に背格好から
髪型までソックリだ。(2007年11月全米公開予定)
『チャーリー・ウィルソンの戦争』は、ソ連侵攻時代のアフガニスタンでムジャヒディンを支援したテキサス民主党議員
チャーリー・ウィルソンの実話をベースにした作品。原作は『Charlie Wilson's War: The Extraordinary Story of How the
Wildest Man in Congress and a Rogue CIA Agent Changed the History of Our Times( http://www.amazon.co.jp/gp/product/0802143415?ie=UTF8&tag=gloomynews-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=0802143415 )』。
監督は『キャッチ22』で知られるマイク・ニコルズ、主演にトム・ハンクス、共演ジュリア・ロバーツ。
(2007年12月25日全米公開予定)
2007年12月公開予定の『The Return』は、イラクから帰還した3人の米軍兵士が母国で直面する苦悩を描くロード・
ムービー風ドラマ。監督はニール・バーガー、主演にレイチェル・マクアダムス、ティム・ロビンス、マイケル・ペーニャ。
2008年3月全米公開予定のキンバリー・ピアース監督新作『Stop Loss』は、イラクへの再度派遣を拒否し軍から
逃走する米軍兵士の物語。主演はライアン・フィリップ。
英国人監督ポール・グリーングラスは新作『Imperial Life in the Emerald City』を製作中。オリジナルはワシントンポスト
紙記者のベストセラー『Imperial Life in the Emerald City: Inside Iraq's Green Zone( http://www.amazon.co.jp/gp/product/0307278832?ie=UTF8&tag=gloomynews-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=0307278832 )』で、イラク駐留米軍と復興請負企業
ハリバートンがムチャクチャな占領体制( http://www.democracynow.org/article.pl?sid=06/09/29/151212 )−イラクの
アメリカ化を最優先−を敷き、復興計画を頓挫させた件について説明されている。復興資金がいかに無駄使い
されていたかを知ることのできる書籍( http://www.rajivc.com/index.htm )である。
ヴェネチア映画祭で『リダクティッド』を披露したブライアン・デ・パルマ監督は「映画は戦争を止めることができる」と
記者たちに語っている。少々遅すぎた感触もあるが、ハリウッドはようやくマイケル・ムーアの偉業を再確認すべき
時期に来ているのかもしれない。
投稿: 02:32 午後
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2007/09/post_02f6.html#more