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平和を憎む権力者にとっての防諜と治安維持 [ パワーポリティックス非公式情報 ]
http://plaza.rakuten.co.jp/31sakura/diary/200708200000/
軍事情報の共有について規定を定めた「GSOMIA(日米軍事情報包括保護協定)」を日本とアメリカ、両国政府は8月10に締結した。協定締結に先立ち、日本政府は「カウンターインテリジェンス(防諜)推進会議」を開いて「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」を了承している。来年4月には内閣情報調査室に「カウンターインテリジェンスセンター」(仮称)を設置、新たに認定する「秘密情報取扱適格者」(仮称)に限り、機密を扱うことになる。
この件とは直接関係はないが、協定調印の直後にアメリカ政府は日本の国会議員に対して機密情報を開示する意向を示したという。アメリカの場合、機密情報の開示を受けた人物は外部への情報開示が制限されることになるわけで、政府の不適切な行動を知っても国民に知らせることができなくなる可能性が出てきた。
アメリカの歴史を振り返ると、「カウンターインテリジェンス」は自国民、特に平和を望み、戦争に反対する人々の監視を意味している。戦争の障害になる人や組織を偽情報を交えて攻撃してきたことも否定できない。2001年9月11日の旅客機による体当たり攻撃、いわゆる「9/11」の前にアメリカだけでなく、世界各国の情報機関から届いていた「テロ情報」を無視したのとは対照的に、平和運動の動向には神経質かつ敵対的だ。日本の場合、「防諜」を大義名分にした「国賊狩り」が始まる可能性は小さくない。「治安維持法」の精神が日本から消えたとは思えない。
ベトナム戦争に反対する声が高まりつつあった1967年の夏、リンドン・ジョンソン大統領の時代にCIA(中央情報局)のリチャード・ヘルムズ長官は防諜部門の国民監視プロジェクトとして「MHケイアス」をスタートさせている。トーマス・カラメシーンズ副長官の下、ジェームズ・アングルトン対情報工作部長、そしてリチャード・オバーのラインが実行している。
ベトナム戦争の終結が見通されていた1972年になるとヘルムズCIA長官は国民監視の口実を「国際テロリズム」に切り替え、その「黒幕」はソ連だと主張するようになる。そのソ連と戦う「自由の戦士」としてアメリカの情報機関が育てた武装集団の中にアルカイダも含まれていたことは広く知られている。
1960年代から1980年頃にかけてイタリアでは「爆弾テロ」が繰り返され、クーデターも計画された。「テロ」を実行したのは左翼だとされていたが、後に真犯人はイタリアの情報機関を背景にもつ組織だということが判明した。爆破事件で社会に不安を与え、スムーズにファシズム化しようとしたのだと信じられている。いわゆる「緊張戦略」だ。「グラディオ」と呼ばれる「NATOの秘密部隊」がこの戦略の中核組織としても浮かび上がり、1990年にはイタリア政府もグラディオの存在を公的に認めている。(日本のマスコミは無視しているが。)
フランスでは1961年にOAS(秘密軍事組織)がクーデターを計画、その翌年にはシャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を試みているが、このOASにも「NATOの秘密部隊」がつながっていたと言われている。1966年にフランス軍がNATOの軍事組織から離脱、その翌年にSHAPE(欧州連合軍最高司令部)がパリから追い出されていることと結びつけて考える人がいても不思議ではない。
さて、日本に「機密保護」を要求してきたジョージ・W・ブッシュ政権は自国での国民監視システムを強化中で、8月上旬にも「2007年アメリカ保護法」を成立させている。裁判所の令状なしに電話や電子メールを盗聴することを可能にする法律で、アメリカの外にいると思われる人間やアメリカの外交政策に有用だと考えられる情報を持っているかもしれない人間がターゲットになる。要するに、アメリカの情報機関は世界中の誰でも盗聴することを合法化したわけだ。盗聴に強力した通信関連企業に対する免責も定められている。民主党が多数を占めている議会も法案に賛成したことから議員のもとに抗議が殺到、あわてているようだが、すでに手遅れ。「二大政党制」の茶番劇に愛想が尽きた有権者も増えていることだろう。
(アメリカの情報機関による情報支配戦略については、拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』で詳しく解説している。)
Last updated 2007/08/21 02:06:16 AM