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北極圏 熱い資源争奪戦 ロシア 『極地遠征』で大調査【東京新聞】
2007年8月5日 朝刊
ロシアが北極海底に眠る原油や天然ガスなど膨大な資源の開発権を狙い大規模な調査を推進している。三日には、北極点直下の海底にロシアの深海潜水艇が初めて到達、「占有権」をアピールした。これに対し米国、カナダなど周辺国は、ロシアの野心に警戒を強めており、資源争奪戦の激化は必至の情勢だ。 （モスクワ・常盤伸）
「ロシアは偉大な極地大国だ。このことを（北極遠征で）世界中に周知させなければいけない」
北極遠征隊の主要メンバーで、プーチン大統領を支える与党「統一ロシア」の幹部、グルズデフ議員は出発当日の先月二十四日、ムルマンスクでこう力説した。
今回の極地遠征は、資源確保と国威発揚をもくろむプーチン政権挙げての一大イベントだった。隊長を務めたのは「統一ロシア」幹部でプーチン大統領と親しいチリンガロフ下院副議長。定員わずか三人の潜水艇「ミール１」にチリンガロフ、グルズデフ両氏が乗り込み、純粋な科学者は一人だけだった。
クライマックスは北極点直下約四千三百メートルの海底に降下し、チタン製のロシア国旗を立てたときに訪れた。主要テレビはロシアが海底に領土を拡張した「歴史的瞬間」と繰り返し大きく伝え、プーチン大統領はチリンガロフ氏に直接電話で探査成功をたたえた。
「大陸棚」主張
米国地質委員会の調査によると、北極海の海底には地球上で未開発の原油・天然ガスの約四分の一が集中、特に原油の推定埋蔵量は約一千億バレルといわれる。これ以外にも、マンガンやニッケル、金など希少金属も豊富だ。ロシアが海底調査を行ったロモノソフ海嶺（かいれい）には原油や天然ガスの埋蔵量が特に多いという。
ロシアは、北極海沿岸二百カイリ（約三百七十キロ）の排他的経済水域（ＥＥＺ）から北極点に至る北極海中心海域の約半分にあたる約百二十万平方キロという扇形の広大な水域の資源開発権を主張する。一見、荒唐無稽（むけい）な主張の根拠は国連海洋法条約にある。同条約ではＥＥＺ域外でも海底が大陸棚の自然の延長だと科学的に証明できれば、地下資源の開発権が容認されるからだ。
実はロシアは二〇〇一年に、同領域海底が地質学的にシベリアと同質であり大陸棚だとして国連に申請、根拠不十分として却下されている。
その後、経済成長を続け資源ナショナリズムを強めるプーチン政権は、今年五月から北極海での本格的な地形や地殻調査を開始。原油や天然ガスの埋蔵量が多いとされ北極点を横切るロモノソフ海嶺などが大陸棚と主張する科学的証拠を得たと自信を深めており、〇九年に国連に再申請する予定だ。
これに対し北極圏を抱える米国、カナダ、ノルウェー、デンマーク（グリーンランド）の四カ国は北極海底の調査探査で先行した感のあるロシアの動きに神経をとがらせる。
米加など反発
カナダのマッケイ外相は二日、「北極海はカナダのものであり脅威などない」と不快感を表明した。米国のケーシー国務省副報道官も、ロシアの主張には「法的意味はない」と述べた。デンマークとカナダはロモノソフ海嶺が自国大陸棚につながると主張、ロシアに対抗し北極圏の共同調査を急ぐ方針だ。
プーチン政権が北極海の資源囲い込みに熱心な背景にはシベリアでの原油、天然ガスの生産が近い将来頭打ちになるとの観測があるとの指摘もある。しかし北極点周辺での資源開発には高度の技術と莫大（ばくだい）な資金が必要で、在モスクワの石油業界筋のなかには、ロシア主導の開発の現実性を疑問視する向きも少なくない。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007080502038692.html
- ロシア潜水艇、北極点の海底に国旗・「北極海はロシア領」【日本経済新聞】 そのまんま西 2007/8/05 10:30:28
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