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http://tizu.cocolog-nifty.com/heiwa/2007/06/260_4ef3.html から転載。
06/27/2007
第260号 米朝関係と六カ国協議の行方
> 日々通信 いまを生きる 第260号 2007年6月27日<
『朝日新聞』(電子版)は次のように伝えている。
朝鮮半島の平和協定協議は「初期段階後」に ヒル氏言及
アサヒコム 2007年06月26日13時27分
http://www.asahi.com/international/update/0626/TKY200706260238.html
> 北朝鮮核問題の6者協議で米首席代表を務めるヒル国務次官補は25日、国務省で記者会見し、「核施設の無能力化の段階に入れば、朝鮮半島の平和体制協議も始めることが出来る」と述べた。現在の朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への移行を目指す話し合いを非核化の「初期段階」に続く「次の段階」で始める考えを示したものだ。
ヒル国務次官補の訪朝は米朝関係が新しい段階に入ったことを示す。朝鮮はすでに「初期段階」として、寧辺(ヨンビョン)にある核施設の稼働停止・封印を行うことになっており、26日には具体的な手順や監視方法を話し合う国際原子力機関(IAEA)の代表団が北朝鮮入りする。
この「次の段階」で、核施設の無能力化、すべての核計画の申告に取り組む手はずで、ヒル氏はこの段階を年内に終えたい考えである。この段階にはいれば、朝鮮半島の平和体制協議も始めることが出来るという。
6者協議の2月合意では「直接の当事者が、適当な話し合いの場で朝鮮半島における恒久的な平和体制を協議する」としており、協議は南北朝鮮と米国、中国の4者による枠組みとなる見通しだが、ヒル氏によると、訪朝の際にこの問題についても話し合ったという。
また、訪朝時の会談で北朝鮮が高濃縮ウラン(HEU)による核開発計画について「(米朝)双方が満足する形で解決する必要がある」と表明したという。
6カ国協議は急速に発展し、米朝国交回復も実現するだろう。南北間の協力関係も急速に進んでいる。南北間の鉄道が開通し、開城工業団地めぐる実務協議が1年ぶりに開催されるなど、交流が進んでいる。すでにコメ40万トンなど2千万ドルの食糧支援がWFPを通じ実施されることになっている。日本の敗戦によって南北に分断され、朝鮮戦争の悲惨な経験を経た南北間にも統一の道筋がますますはっきりしてきた。
韓国の漱石研究者金正勲さんは先程メルマガ韓国通信を創刊したが、最近号で次のように述べている。
http://blog.mag2.com/m/log/0000235680/?js
>これで北米関係は大きく前進する可能性がある。北米関係の進展は東アジアでの平和、南北関係、日朝関係の回復を意味する。拉致問題の先決を訴えてきた日本の態度に乱れが見られるだろうと予測したいのも、その事実と密接に関係がある。
朝鮮半島の統一は南北人民にとってどれほどの願いであろう。その実現への道のの第一歩は金さんも「韓国通信第5号」(2007年6月15日)で取り上げているが、2000年6月15日の金大中前大統領の平壌訪問、南北首脳会談だった。
http://blogs.yahoo.co.jp/k6528157/archive/2007/6/15
突如実現したこの会談は、南北人民にとっても大変な驚きだったようだ。私もまた驚き、かつ、喜んだ。アジアに新しい世紀がはじまるという思いで「新しい時代のはじまり」という文章を書いた。
http://homepage2.nifty.com/tizu/keireki/@yfg.htm
しかし、アメリカの大統領がクリントンからブッシュにかわって、事態は一変した。<悪の枢軸>と非難して朝鮮敵視政策をとり、これに対抗して朝鮮は核実験をおこなった。これで南北間の友好統一のムードは後退した。
この間、2003年2月に盧武鉉大統領が大統領に就任して、就任演説で南北統一は東北アジア共同体に道を開くと述べたのには感動した。困難な情勢下にあって、盧武鉉大統領は大きな展望に立ち、前大統領の政策を受け継ぎ発展させようとした。
いまBDA問題の解決によって米朝間の関係改善が進み、ヒル国務次官補が平壌に招待され、米朝間の直接協議がおこなわれた。大変な歓迎ぶりだったようだ。米朝協議がすすみ、6カ国協議による核問題の解決が実現の方向に向って、南北関係にも急速な進展がみられることになった。はやくも、韓国は肥料・食糧・重油の支援に動きだしている。北の同胞を飢餓と窮乏から救いたいという熱い思いが韓国を動かしているのだと思う。それは必ずや北をも動かし、アメリカによって分断されていた民族統一の動きを促進するだろう。
今度のBDA問題では米国も大変な努力をした。それが長年培われてきた朝鮮の対米不信の氷を溶かすことになったと思う。元来、朝鮮は一貫して、政権の維持、平和の保障と経済支援を求めていたのだったが、米国とは朝鮮戦争以来、長期にわたって戦争状態にあり、同盟国とたのんだ中国、ソ連も、変貌、崩壊、背信で朝鮮を孤立に追い込んだ。
気候にめぐまれず、資源に乏しい朝鮮は四方を敵として国民の多数が餓死するような苦難の道を歩いた。彼らは自国の独立は軍事力によるほかはないと信じ、国民生活を犠牲にして軍事優先政策をとり、核兵器の開発までしたのだ。
しかし、朝鮮の軍事力は米中日にくらべ、さらには韓国とくらべてもはるかに劣勢で、朝鮮が進んで近隣諸国を攻撃することは考えられない。6カ国協議の米中ロ韓日の経済支援と平和の保障をえられるならば、核兵器の放棄も実行するはずだ。
大事なのはこれらの諸国に対する信頼の回復だ。いま、米朝関係の急速な進展はBDA問題の解決を通じて、米国に対する信頼が回復されはじめたことの結果だと思う。もちろん、根深い両国間の不信の克服は容易ではないが、一歩一歩その方向に進んでいくと思う。
6カ国協議の関係国は、アメリカだけでなく、韓国はもちろん、中国、ロシアも支援の手をさしのべた。もちろん、その背後にはそれぞれの国の利害があり、国益があったにちがいないが、しかし、いまは軍事力の時代から、平和の時代へと転換し、相互に主権を尊重し、互恵の原則によって国家間の問題を解決する時代になってきている。軍事力に依存するアメリカの外交はイラク戦争の泥沼化で破綻した。アメリカもアジアでは平和的に自国の利益を守ろうとすると思う。
朝鮮には貴重な鉱物資源があると同時に質の高い低賃金の労仂者や技術者がいる。核開発をするほどの科学技術力は決して侮れないものがあるはずだ。韓国はいまの閉ざされた状況でも開城経済特区に投資して成果を上げているし、なによりアメリカの資本家その他がすでに何度か視察して、有望な投資先とみているのだ。社会体制を異にする両国間の経済交流が必ずしも順調に行くとは思えない。多くの摩擦があるだろう。しかし、両国間の共通の利益がこの摩擦を乗りこえさせていくと思う。
日本だけがこうした国々の動きから完全に立ち遅れている。朝鮮の核実験に対して、日本も核兵器開発の議論をはじめる必要があるという意味の発言をした麻生外相は、米朝関係の進展についても「ぬか喜びしないがいい」と冷笑的な態度をとり、6カ国協議の前途に懐疑的だ。彼らは拉致問題を理由に、対朝外交を放棄している。それは彼らが重視する拉致問題の解決のためにも何の努力もしないことなのだ。ただ、アメリカにこの問題でよろしくたのむとくりかえすばかりだ。しかし、いま大切なのは核問題の解決であり、日朝国交回復の実現ではないだろうか。その努力のなかで両国間の信頼が回復し、マスコミ関係者、その他多くの人々が交流することによってのみ、拉致問題の真相はあきらかになるのだと思う。拉致問題の背後には暗い国家秘密が隠されていると思う。それはけしからんことだが、独裁的な専制国家にはしばしばあることだ。アメリカでもCIAの内情を暴露するようなことはとてもしないと思う。
いまできることを積み重ねていくことが大切だ。横田夫妻の訪朝の努力などは一日もはやく実現すべきなのではないだろうか。一目孫の顔をみて、また、関係者とも会い、関係深い場所をも訪ねることが出来たら、また、何かがわかるのではないか。だまされることをおそれて何一つさせないのは、夫妻の年齢や健康を考えてあまりに気の毒だ。
偽遺骨問題一つを考えても日朝間の不信は深い。しかし、6カ国協議が成功し、朝鮮が核放棄して米朝国交回復が実現したとき、日本はどうするのか。日本は元来、それを望んでいないのだろう。朝鮮の脅威を言い立てて、日本の軍事力を強化し、憲法改悪を実現したいのであろう。
しかし、アメリカは必ずしも日本の思いのままにはならないのだ。もちろん、いまやほとんど唯一の同盟国といっていい日本に対してすげない態度はとらないかもしれない。しかし、それは外交辞令であって、アメリカは自国の国益にしたがって行動するのだ。
アメリカは中間選挙で共和党が敗北し、ブッシュ政権からラムズフェルド国防長官、ウォルフォウィッツ国防副長官といったネオコンのメンバーが去り、チェイニー副大統領の力も急速に衰えた。イギリスではブレア首相が政権の座を追われ、やがてブッシュ大統領自身が去って行く。イギリスはもちろん、世界の国々はイラクから撤兵し、または撤兵を計画している。そのときに、日本はイラク特措法の2年間延長を強行採決で決定した。いまは孤立無援のブッシュにとって唯一の同盟国なのだろう。しかし、それでも日本はアメリカの国益で見捨てられ、安倍は失脚しなければならない。
かつて1939年、平沼内閣は独ソ不可侵条約締結に驚き、「欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢」と声明を出して総辞職した。いまの情勢はそれほど複雑怪奇ではない。偏見の鱗に眼をおおわれてさえいないで、若干の読解力があれば容易に予測できたはずの展開である。しかし、日本の政治家ばかりでなく、マスコミまでもが事態を読み解くことができないで、六カ国協議の前途に対する悲観的な見通しばかり述べていたのはなぜだろう。何カ月か前に私の掲示板に、米朝接近なんてあるはずがない。お前のような非常識なことを言って、それでも大学教授かと罵られたことがある。当時は、やはりそれは勇気のいる発言だった。しかし、私はたとえ間違っても自己の判断をはっきり述べることが必要だと思っていた。言論とはそのようなものだ。公正中立などと称して、後追い解説はするが、自己の判断や意見をはっきり述べることなく、ああでもあるが、こうでもあると何かわけのわからぬことを言ってごまかす傾向があるのを日ごろ不愉快に思っていた。
予測は間違うのが当たり前だ。しかし、その予測に論者の思想は現れる。六カ国協議の行方もまだわからないが、今日は、日ごろ考えていたことを述べた。主観的な意見だと非難されるかもしれないが、その主観、自己の意見をふくまぬ、無思想な文章が氾濫している現在に抗議したいのである。
教育三法がイラク特措法と会期末の同じ日に成立した。このことについて書きたかったが、急展開をとげる六カ国協議の行方の方が緊急性があると思って、専門でもないことを書き綴った。しかし、私は専門家でない素人がそれぞれの思いを述べるのが民主主義の基本だと思う。
漱石に「素人と黒人」「道楽と職業」という文章がある。職業的な専門家は細部にこだわって大局をとらえ得ないという論旨だったと思う。石も叫ばんという思いである。マスメディアに登場する職業的評論家は間違うことをおそれ、無難なことばかりもっともらしく述べる傾向がある。このような傾向に対する不満が私にこの通信を書き綴らせるのだ。
今年は入梅後も晴れた日がつづいたが、この頃、ようやく梅雨らしくなった。気候のせいか、頭がはっきりせず、通信の発行もおくれた。みなさんも気候不順な折から、身体を大事にしてお過ごしください。
なお、気が向いたら掲示板やニュースへのコメントを見てください。簡単な言葉でも書き込んでくだされば大変嬉しいと思います。
発行者 伊豆利彦
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