★阿修羅♪ > 戦争93 > 279.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
2007/06/12
イラン人を悪役にしたハリウッド映画とネオコンの願望 [ パワーポリティックス非公式情報 ]
今年3月、『300』というタイトルの映画がアメリカで公開された。日本でも大々的な宣伝が行われている。いつ頃、この映画のプランが検討され始めたのかは知らないが、2004年6月にザック・スナイダーが監督として雇われ、2005年10月には制作に入っている。予算は6000万ドルだったという。まだネオコンが勢いの会った頃のことだ。
物語の時代設定は紀元前480年。スパルタのレオニダス王が率いる重装歩兵約300名と約10万名のペルシア軍がテルモピレーで衝突、スパルタの兵士が全滅した戦いをテーマにしている。勇敢なスパルタ人がいかにして野蛮なペルシア人、つまりイラン人と戦ったかを描いているのだが、事実をかなり歪曲しているようだ。
エンターテイメントだから「脚色」は仕方がないと考える人もいるだろうが、制作されたタイミングは政治的なものを感じさせる。イラン攻撃を支持する雰囲気を作るためのプロパガンダではないかと疑わせるのだ。
ジョージ・W・ブッシュ政権を動かしてきたネオコン/キリスト教原理主義者はアフガニスタンやイラクだけでなく、シリアやイランを攻撃したいと望んでいる。「イランの核開発」を攻撃の理由にしている勢力も存在するが、世界有数の核兵器保有国と信じられているイスラエルを放置した状態では説得力がない。
イギリスや日本などを引き連れ、アメリカ政府が「大量破壊兵器」を口実にしてイラクを先制攻撃したのは2003年3月のこと。攻撃前からホワイトハウスはCIA(中央情報局)などによる調査で、そうした兵器がイラクに存在しないことを知っていた。イランの核開発が差し迫った脅威でないこともCIAの調査で明確になりつつあったのだが、その調査チームのメンバーにバレリー・プレイムも含まれていた。プレイムがCIAの人間だということをリークした人物/集団の意図はイラン攻撃の障害を排除することにあったとする推測はここから出てくる。なお、イラクがアフリカから核関連物質を手に入れようとしているとする情報は間違いだと2002年7月の段階でブッシュ政権に報告していたジョセフ・ウィルソン元ガボン駐在大使はプレイムの夫である。
このところ、アメリカの大手メディアには、イラクが査察を拒否したからブッシュ政権は攻撃を決意したかのように主張する人物が登場している。日本でもこの手の発言をする人がいるようだが、これは「歴史の捏造」である。国連による査察を継続するべきだとする西ヨーロッパ諸国や中国の反対を押し切ってアメリカ政府はイラクに侵攻したのだ。
イラク占領の泥沼化もあり、最近ではネオコンの力は衰退、それにともなってイラン攻撃の可能性は低くなったと考えられているが、6月10日にはアメリカとイスラエルが統合軍事演習をイスラエル南部で実施するなど軍事的緊張は続いている。「アルカイダの攻撃」を利用してイランを侵攻しようとする動きがあると警鐘を鳴らす人もいる。イラン内部にはアメリカの特殊部隊が侵入、情報の収集だけでなくプロパガンダや偽情報の流布などを行うことが大統領から許可されていると報じられている。特殊部隊がイランの現体制転覆を行う主力になる可能性もある。
イラン攻撃に否定的な意見が広がる中、アメリカ民主党のジョセフ・リーブマン上院議員やジョン・ボルトン前国連大使などは今でも公然とイラン攻撃を主張し続けている。キリスト教シオニストの宣教師たちも同じだ。そうした人たちの「波長」と映画『300』のそれは同じだと言えるだろう。「9/11」以上のインパクトがある出来事が起これば、イラン攻撃が現実化する可能性はある。その結果に興味のある人は、拙著『アメリカ帝国はイランで墓穴を掘る』(洋泉社)を御覧あれ。
http://plaza.rakuten.co.jp/31sakura/diary/200706120000/