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シンディ・シーハン『引退表明』に思う(2) ―彼女の足跡を確かめ、到達点を共有するためにー(レイバーネット)
http://www.asyura2.com/07/war93/msg/198.html
投稿者 gataro 日時 2007 年 6 月 09 日 19:42:04: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://www.labornetjp.org/news/2007/1181361001989staff01 から転載。

シンディ・シーハン『引退表明』に思う(2)
―彼女の足跡を確かめ、到達点を共有するためにー 

マブイ・シネコープ 代表 木村 修 

【はじめに】

  第2稿の冒頭に、シンディ・シーハンさんの最新のコメントを紹介することを何よりも喜びたい。6月6日付け赤旗紙が報道しているが、1日放送の米PBCラジオのインタビュー番組で『もっと強くなって戻ってこれるでしょう(しばらくの休養)』と答えてくれたという。前回、私はレスリー・ケーガンさんの言葉を紹介したが、引退声明直後から、彼女に感謝し彼女の気持ちを尊重しつつ多くの励ましの言葉が寄せられたことが推察される。『引退声明』を受けて、読売新聞は『座り込み一辺倒の活動が飽きられ、影のうすい存在となっていた』(5  月30日)と同紙の思想水準を示して恥じない悪罵を投げかけたが、すでに事実で反駁されている。

  ともあれ第1稿で私は、この『引退声明』とそれに付け込む右派ジャーナリズムの煽動に惑わされて、この数ケ月の議会論争が大きな政治的変化を作り出したことを見落してはならないことを強調し、今後の議論の前提としたいと発言させていただいた。今回はその論議を進めて、その変化が言うまでもなく民主党の手柄ではなく、シンディさんの大いなる奮闘も含めて、下から民主党、共和党を問わず徹底した討論を挑んだ反戦運動の成果であることを具体的に示したい。それによって、問題を民主党対シンデイ・シーハンという枠ではなく、危機に立つネオコン政権と反戦運動という枠組みで捉えてなければならないという主張の一助としていきたい。

  (註)私は、03年6月シカゴで開催された、アメリカ最大の全国的反戦運動組織UF PC(平和と正義のための全国連合)の結成第1回大会に参加した。ここで登録以来、幸いなことに同連合が発信するAction Aletrs(『行動速報』と言っていいだろう)と、この1月29日の議会要請行動に、撮影を目的に登録してからは、ロビー活動担当のSue Adr y名のいわば『議会活動速報』を毎回送信していただいている。以下前者を【A】とし、後者を【B】として、それが明らかに示している事実自体を紹介する形で説明を進めたい。(建設的で共同感のある討議は、冷静な事実の共有を基礎に進むものであり、それを期待して)

【わたしたちはどこまで進んだのか】

  飛躍を恐れず、結論から述べて行くこととしたい。私はこの6ケ月間、連邦議会を包囲して繰り広げられた運動の成果は、追加予算案の可決をもって相対化されるものではないと強く考えている。なぜならこの政治過程の結論として以下5つ客観的変化をあげることができるからである。

  (1)『イラク戦争の是非』はもちろん、『ブッシュ新政策・増派』についての全国的討議を巻き起こしイラク戦争論争について、『増派の是非』『追加予算の可否』『撤退法案そのものの』の論争という三つのステージを作り出した。
  (2)その結果として『増派への支持統合』を破産させ、『増派反対』が国民的結論であることを公式に明らかにした。(上下院とも、決議採択において反対が過半数をこえた)(1)
  (3)その上、議会論争の焦点を『増派の是非』から『撤退』そのものに進展させた。 (ウズリー下院議員提出の『3ケ月以内の撤退開始』決議が171票を獲得。(2) 5/10下院)
  (4)以上の結果、ブッシュは国民的威信を決定的に失墜した。(5/2NewsWeek調査 支持率28%)
  (5)他方、こうした進展全体によって、1〜2月チェイニー副大統領を中心に台頭した『イラン攻撃』というもっとも破壊的な路線を後景に退けた。(5/18米・イラン大使級会談  5/22読売『イラク研究グループ再評価』)
  (6)また民主党自体を見るならば、その党内形勢が何処まで進んだのか。私は、次の採決結果を示しておきたい。5月16日上院本会議は、民主党提出の『08年3月で戦費を削減する』(どう期限までの撤退を求めるもの)決議を採決したが、29票が投じられた。また問題となった5月24日の『撤退期限抜きの』追加予算案採決には、ペロシ下院議長も含め140人が反対した。つまり両院とも民主党議員の過半数が、このもみ合いの中で『撤退』の立場を貫いたこと、また運動がここまで民主党の党内地力関係を変えたこと、この事実は看過されてはならないと考える。

   (脚註)
12月16日下院本会議採決246;182で可決 同17日上院本会議採決。採決を求めるに必要な 60票には届かなかったものの56票を獲得。いずれも過半数を制した。

217日付け【B】は、この変化をThis was a major step(『巨大な前進』)と評価し、事前に確認していた支持票は125票( we did not expected more than 125 votes!) だったことを率直に語っている。

   この節の最後にここで述べた成果が、ひとり筆者の強調ではないことの証しとして、一般紙の時局評価の一つを紹介しておきたい。いわく『戦争終結を求める国民の圧力がどれほど議会の民主党を動かし、かって政治的タブーであつたブッシュ政権の戦争政策に異を唱えるプランを受け入れさせて来たかを示している』((6)で示した5月16日の上院採決を評して。ロスアンゼルスタイムス)

【反戦運動は文字通り議会を包囲した】

  そして上記の成果が、ただ議会論争よってだけ結実したものではないことは、ここでは説明を要しない。否、全く逆である。議会を焦点に繰り返し繰りかえし、それこそ想像を超えるほどのエネルギーを発揮して繰り広げられた、全国的反戦運動の力がこうした政治的関係を作り上げ、切り開いたのである。以下、どのような取り組みがUFPJを中心に繰り広げられたのかを示したい。

  承知の通り、昨年11月の中間選挙は『イラク戦争についての国民投票に転化し』 (レスリー・ケーガン)上下両院とも、イラク戦争の継続に反対を表明した議員が多数を占めた。ここに『議会は国民の負託にこたえよ』『議会は戦争終結にためその憲法上の権限を行使せよ』『戦費支出をさしとめよ』と要求する局面が形成され、1月新議会が召集される。新年1月3日、民主党記者会見場が開かれたが、この場に『すべての兵士を帰国させよ』の横断幕をもっていち早く駆けつけたのも、シンディさんを先頭とする『金星家族の会』の親たちだったことを改めて紹介しておきたい。この時点では、民主党は新議会の最優先議題に『イラク撤退』を挙げてはいなかったのである。民主党指導部と彼女の論争は、この日から始まっていた。

 『新議会に全国からの圧力を』が呼びかけられる。1月からの全国的反戦集会は(1)UF PJを中心とした1/27 ワシントン大集会、そして(2)開戦四年目を記念した3/17の二度に及んだ。(1)は50万人の大集会となり、ベトナム反戦闘争から40年ぶりに連邦議事堂を包囲する行動になり、(2)はANSWERの呼びかけたペンタゴンデモには風雪の中二万人が、そしてUFPJは全州、全市の一斉行動を呼びかけ、集会・行動は全国1千ケ所を越えた。しかし議会、議員を包囲する行動は、このような集会とデモだけだったのではない。アメリカ市民一人ひとりに始まるといっていい連日連夜の活動が、それこそ数万のデモにも匹敵するエネルギーを発揮していた。次に【A】【B】の資料の一部を紹介し、そこに焦点をあてたい。

《1月29日一斉ロビー活動》(私はこの日の行動にカリフォルニア州の一員として参加した)
50万人デモの翌々日、47州の代表が議会に押しかけた。(1)この日の参加者は千人を越え、約400人の議員の扉をたたいた。参加者には(2)イラク戦費を州毎、主要都市そして議員選挙区ごとの納税者人口に置き換えた資料が配布され(3)、(カリフォルニア州では479億ドル、ロスアンゼルスでは40億ドル、バーバラ・リー選挙区では約6億9千億ドル支出したことになる。そしてその選挙区あたりの支出は、小学校76校の建設費に、住宅なら4059 戸分に当たるという)(3)次に『誰と、いつ今日のやり取りをフォローアップするか』が各州毎に討議された。(4)

 (脚註)
3この資料はNational Priority Project, Inc.が提供。ロスアンゼルスでは約4800億円、サンフランシスコでは 1560億円が浪費されたことを示す。論議が一般論での『逃げ』を許さない極めて具体的次元に進んでいることに私は目をみはった。 4この日のロビー活動は、50万人デモを中心にまとめた、最新作『世界へのメツセージ』の中に収録したので見ていただければありがたい。《A. 3/31日付け Action Alert》撤退期限付きの決議が上下両院とも可決した翌々日。

その冒頭はこの一節で始まっている。Congratulations! Because of the persistence and hard work of the antiwar movement,the Iraqi debate of the congress has shi fted from”if”to “when”(われわれの徹底した活動によって議会のイラクをめぐる論争はIf(もし撤退したらどうなるか)から Whenに変わったのだ!)そして、翌日から復活祭の休暇で選挙区帰る議員に対する行動が呼びかけている。列挙しよう。(1)今日中に両院議員の選挙区事務所に討論会をよびかけよう。(2)選挙区事務所に電話、ファックス、メールを集中しょう。(3)可能ならばよりドラマティックな行動を(議員事務所に入って戦死者の名前を読み上げる、事務所の中で、あるいは前に座り込む、自宅前に半旗を掲げる。)(4)どのような行動であれそれを地方紙に投稿しょう等々。そしてブッシュが議会決議に拒否権を行使した日には、、、。

《A. 5月2日付けAction Alerts》  この日は一日に二度の速報を受け取ることになった。それは呼びかけている。(1)地方紙の編集長にメールを届けるまで今日はコンピューターから離れるな。(2)地方ラジオ局のトーク番組に電話せよ。(3)議員会館電話交換につながるまで電話せよ。(4)近くに集会があるなら必ず参加しょう。(5)集会がない所では一人でもできる行動を(ブィジルをする、携帯電話をかける、横断幕やポスターをビルや目立つ場所にたれ下げる)(6)議員会館内外で抗議を表わす行動を(軍人家族の手紙を読む、ブィジルをする、ビケットをはったり路上劇をする)等々。以上は連日のメールのほんの一端である。その他は割愛しても論旨は十分にご理解いただけると思う。実際私自身、一定の理解はしていたつもりのアメリカ反戦運動のイメージは新年からの数ケ月の過程で、たちまち乗り越えられたことを率直に告白したい。これだけ具体的で継続的で、つつましやかでフランクでそして感心するほど勤勉な運動の姿を私は今年まで知らなかった。

【成果を共有することの中から次の進路を】そして結論はいうまでもない。こうした壮大な下からのエネルギーが積み重なって、山となって冒頭に六点にわたって述べた政治的変化を構成したのである。私たちはこの地平を絶対に揺るがせてはならない。これはアメリカの反戦運動の前進点であり、それに連なる国際反戦運動の到達点であり、『引退』を表明したシンディさんへの注文でも民主党の弁護論でもなく、彼女とともに心血を注いだイラク反戦運動総体の成果の確認である。そして何時の時代、いつの局面でもそうであった様に、道をつけた人たちに続く闘いは、この地点を踏みしめるところから再び始まる。ところで、その一方彼女をあそこまで傷心させた反戦勢力の側の課題はどう考えるべきなのだろうか。私は、その課題は『誰がどういう言葉で攻撃した、、』かということを超えて、その根本はアメリカの反戦運動がここまで大きなエネルギーを発揮しながらも、『出口戦略』とも言うべき展望を示しきれていないところ(日本をも包む課題として) にあるのではないかと考えている。次回(第3稿)でその課題を述べて、シンディ『引退』が投げかけた問いかけへの私なりの結論としたい。引き続き、率直なご意見と至らない点のご指摘をいただければありがたい。 
                    (6月8日 記)


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シンディ・シーハンさんの「引退表明」に思う
マブイ・シネコープ 代表 木村 修 mabui1101@nifty.com
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